第61話 ゲーム集会の朝
1章ラスト⑥のお話。
読み飛ばしても本編に影響はありません。
よろしくおねがいします。
朝起きて、朝のしたくをする。
――今日は安息日。
リヒトくんの自主学習のお休みの日だ。
大樹のちかくで陽の光の中、聖職者リヒトくんがたたずむ。
キラキラとかがやいた天使がいた。
す、すごいあいかわらずの光属性みたい。
「おはよー♪リヒトくん」
「ルーシアさん、おはようございます」
「もしかして、まってた?」
「いえいえ、ちょうど僕も今来たところですよ」
笑いあいながら朝のあいさつをかわす。
大樹の木の下で、精霊や妖精さんたちにもあいさつする。
「みんなも、おはよー♪」
「ふふふっなんだかくすぐったいですね」
「ねー♪」
ふわふわと光にかこまれながら『裏庭のハーブ園』へたどり着いた。
《歌ってお水をかけると元気になる》
かんたんに説明してリヒトくんがうなずく。
「じゃあ、さっそくはじめたいと思いまーす♪」
「はい、よろしくおねがいします」
ぱしゃぱしゃぱしゃぱしゃぱしゃっ
「らんらんるーららら♪」
いっしょに歌いながら薬草に水をかける。
わぁっなにこれ楽しいなー♪
リヒトくんの歌声はじめてきいたけどすごい。
聖職者さんたちが神々へと祈り歌う賛美歌みたい。
精霊や妖精さんたちがあつまって光放つ。
大樹からは鳥たちがあつまりさえずりがきこえた。
裏庭にいろいろなイキモノも集まる。
「らんらんるーららら♪」
「るーるーらーるるー♪」
え?
これって……。
リヒトくんが歌に合わせて、ちがう歌い方で重ねててきた。
驚きつつ、歌いながら
ふり返るとリヒトくんが笑った。
いたずらがうまくいったような笑顔でほほ笑む。
まったくちがう歌なのに互いに重なって
すごく素敵で、なんて楽しい。
2人で歌って踊りながら、水をかけるホースをたがいにわたしあう。
キラキラキラキラキラキラ〜♪
精霊や妖精さんたちがとびまわりながら、ハーブ園が、大樹が、光ながらかがやいてる。
キラキラと光る中、笑顔になった。
「うわぁ♪ たーのしー♪」
「はいっ僕もすごく楽しいです」
「すごーいっ歌とってもじょうずだね〜」
「ふふっ、朝いつもきいてましたから」
「えええっ」
「ひそかに歌ってたりしたんですよ?」
そうだったんだ。
でも、なんだかはずかしいなー。
「今こうして一緒に歌うコトができてよかったです」
「うんっ私も……いっしょに歌うって楽しいね♪」
「はい」
朝の陽の光のなか笑いながら歌声をあげた。
ハーブ園で薬草を摘んだ後、リヒトくんと2人で食堂へとむかった。
キッチンから朝の支度をする音がきこえる。
冒険者ユリウスと騎士テオドールさんが朝ごはんをつくっていた。
「おはよーハーブ持ってきたよー♪」
とさっ テーブルにカゴを置いた。
「よっふたりともおはよーさん♪」
キッチンでテオドールさんがあいさつをする。
口もとに三角巾をあてながら野菜を切っていた。
わぁぁー。
あの大の野菜キライ、ニガテなテオドールさんが……。
野菜を下ごしらえしいるなんて……。
すごーく不思議な光景だ。
「ふふふっ」
リヒトくんがくすくすと楽しそうに笑った。
たぶんおなじコト考えてそう。
「テオさん、コレもお願いしますね。あっおはよう〜♪」
ひょいとでてきた冒険者ユリウス。
テオドールさんに追加の根野菜をわたしてる。
「ちょうど焼きたてのパンもできたとこだよ」
「はーい、じゃあ用意するねー」
「なにかお手伝いすることはありますか?」
「テーブルに花をおねがいできる?」
「はい、わかりました」
「ありがとう〜♪」
わいわい話ながらリヒトくんが摘んだ白い花をテーブルへと運ぶ。
わたしもいっしょにテーブルを拭いた。
ん?
この香りは……?
珈琲の芳ばしい匂いがした。
「おはよう。できたぞ、さっさと席につけ」
「……っ!?」
ヴォルフガングがキッチンの奥から顔をだした。
香辛料入り珈琲を、トレイにのせている。
「あれ? ヴォルフなんでここに?」
「お前な……あいかわらずだな」
ヴォルフが半目になり呆れた顔をした。
「私は宿泊客だぞっ今日は皆でゲームをする約束だっただろうが」
「あっ、そうだった。ごめんなさーい」
てへぺろっとすると、ヴォルフがうめいた。
朝からとつぜんいたからびっくりしたんだよー。
「あれ、ゲームって午後から遊ぶ予定だったよね?」
「はやめにきた。準備とか説明とか色々あるだろう」
「あー、そだねー」
「……まったくこれだからシロウトは」
ヴォルフがふんっとする。
手をふりながらヤレヤレした。
リヒトくん、テオドールさん、ユリウス、ヴォルフが席についてできたての珈琲をのむ。
「ずずずっおいしいー♪」
「うまいなーこれ外でものみてー」
「ああ、わかります〜」
「ん、おいしいです」
「フッならばとくと味わうがいい」
ほろ苦さにやさしい味。頭がすっきりとした。
トンッ トンッ トンッ
食堂の扉をたたく音がする。
「?」
あれ、こんな朝早くに誰だろう?
もしかして、レオンハルト?
ヴォルフみたいに楽しみで早朝に来たのかな?
「おはようございます『竜のあくび亭』へお届けモノです」
身なりのよい配達員さんが一礼した。
わわわっ
あれ? レオンハルトじゃない。
驚きつつ花束と荷物を受けとった。
「わぁぁ〜」
花のようなメッセージカード。
可愛く咲いてとてもきれい。
参加ができないとつげる内容だけど、
やさしさがあふれるカードにほんわかした。
とてもうれしい。
「レオンからお菓子の差し入れが届きましたよー」
ケーキの数は宿泊客全員分。
――もちろんレオンハルトの分も含めてだ。
「あ〜、レオン様めっちゃ参加したがってたぜー、都合つけるの……やっぱりむずかしかったか」
ため息をつくようにテオドールさんがつぶやいた。
「そうなんですか……とても残念です」
「《ゲーム集会》また次の機会はあるんだろう? なぁヴォルフさんよぉ?」
「そうだな。機会はいくらでもある―――が、お前たちが挑む《神々の古代遊戯》恐れをなし逃げださなければ―――という話にはなるがな」
「おう、言うじゃねーかよ」
「そうですか、よかった」
ホッと胸をなでおろしほほ笑むリヒトくんと、
威嚇するテオドールさん。
騎士だから恐れるとか逃げだすの言葉はちょっとよくないのかもしれない。
でもまたゲーム集会あるならよかった。
次回はレオンも参加できるといいなー。
テオドールさんがちょっとぷんぷんしながら珈琲をあおる。
「うぐぐっそれにしても美味いな」
「おかわりはあるぞ」
もらった花束を花びんにうつしてふりかえる。
「ギルティアさーん、朝食できましたよ〜?」
2階の吟遊詩人の部屋へと声をかけてみた。
へんじはない。
うーん?
今日も反応はないかぁ。
「ギルティアさん今日もいらっしゃらないですね」
「うんーそだねー」
リヒトくんとうなずきあう。
前回は名を呼ばれたからきたよ〜っと言っていたけれど。
今はいそがしいのかな?
「あとでお茶会やゲーム会もあります、良かったらぜひご参加してください〜」
声はかけたから気がむいたら参加すると思う。
たぶん。お茶会も参加したがってたからね。
笑ってリヒトくんが声をかける。
「では、ルーシアさんそろそろ」
「うん。ごはん食べよー♪」
朝の光の中みんなでごはんをいっしょに食べた。
読んでいただきありがとうございました。




