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第4話 裏庭のハーブ園



 夜明け前、星はまだ小さく瞬いていた。

 うっすらと闇のカーテンが色付きはじめ、段々と明るくなっていく。


「ふぁ〜」


 眠い目をこすりながら起き上がる。


「はい、おはよーございます〜」



 ずるずるずるずる……。



 むにゃむにゃとベッドからはいだして洗面台へむかった。


 パシャパシャパシャッ


 あみ目状に編んだもので石鹸を泡立てた。

 顔にのせて洗顔する。タオルおしあて拭きとっていると、はたと、鏡の自分と目があう。


「……。」


 ふむ。しっかりぐっすり寝たせいか、目のクマすらない。


 昨日いろいろなことがあったのに。

 わたしって、かなりずぶとくないですか……。


 鏡の前でがっくりと落胆する。



 悩ましげに鏡を見た後、しばらくしてふと気づく。


『やっぱりドラゴン肉は最高〜☆』


 ドラゴンハンバーグを食べまくった自分を思いだす。


 スッと目をほそめ無表情になる。


 ないものねだりはヤメよう。

 さて、朝の支度をして食堂へといこーっと。



 ◇



 まだうす暗い食堂に明かりをつけた。 

 カゴには昨日の夜に2人で飲んだカップが洗われて置かれていた。


 心の中で感謝をのべ、グラスをとり浄化魔石と炭につけこんだ水を飲む。


「……ん?」


 キラキラキラキラ〜♪


 なんだか床がすごく綺麗になっている。


「あれ……? もしかして手伝ってくれたの?」


 突然床がピカピカしていたり、いろいろな場所がキレイになっていたりする。

 

「わぁぁ、ありがとううれしいなー♪」


 食器棚からカップを出しミルクをそそぐ。

 焼いてあったクッキーをざらざらとお皿にだして声をかけた。


「これはお礼の品です。よかったらどうぞ〜♪」


 いつの間にか戻っている小道具、掃除された部屋や床。


 ――屋敷妖精。『竜のあくび亭』にわたしと一緒に同居する小さきモノたち。彼らがわたしのしらない間にささっとお仕事していたりする。

 そう、だいたいが妖精さんの仕業なのだ。


 住心地の良い環境を提供してくれて、とてもありがたい。


 この宿屋『竜のあくび亭』が大好きな理由の1つである。

 気づいた時に、感謝でミルクやお菓子をだしている。


 おいしくたべてくれたらいいな。


 そっとキッチンから裏庭へ向かう。

 妖精さんの食事風景はなるべく見てはいけないのだ。



 ◇



 裏庭に移動して魔法具シャワーをとりだした。

 ハーブや薬草に霧状の雫をふりそそぐ。


「よーし! いってみよー♪」


 ぱんぱんぱぱん☆


「らんらんるーららら♪」



 手拍子をして歌を歌う。

 歌って育てる薬草は効き目が強くなり元気になる。

 成長も早いし大変お得なのだ。


「らんらんるーららら♪」


 身振り手振りをまじえながら踊りながら水をかけていく。

 いつの間にか遊びに来た庭の妖精たちや小鳥も集まってきて大合唱だ。



「みんなー! ありがとう〜♪」



 チュンッ バサササッ ふわふわ〜っ


 鳥や妖精さんたちがいっせいに飛びたった。


 朝の日課みんなで歌おう合唱会イベントは今日も大盛況の中、幕を閉じた。

 さっそく薬草を摘んで、乾燥カゴに放り込む。


 あいた時間につくる回復薬もいい収入源になっているし。

 いろいろと好評みたいだしうれしい。


 大量生産できないから商会で卸すのはムリだけど……。

 村や教会の寄付品をつくるだけで充分だ。



「ふふふっ」


 頭の上から笑い声がした。


「テオドールさん……!?」


 二階の窓から手をふり笑ってる。

 騎士のテオドールさんがそこにいた。



「あいかわらず、朝から元気だなー?」


「い、いつからそこに!?」


「『よーし!いってみよー♪』のかけ声あたり?」


「うわああぁ」


 かなり最初からだコレ!

 うううっ恥ずかしいよー。


 笑いながら窓からそのまま身をのりだした。



「ひぇ!」


 ドサッ


 裏庭へと着地する。

 びっくりして、目を丸くした。



「だだだ、大丈夫ですか?」


「ん〜、平気平気〜♪」



 心配するわたしをよそにテオドールさんが笑ってる。


 ここって、かなり高さがあるんだけど……?


 騎士さんってかなり身体能力があるのかな?


 ……す、すごいなぁ。

 やっぱり鍛え方がふつうと違うのかも。



「おはよーさん、ルーシアちゃん」


「お、おはようございます……宿に帰ってたんですね」


「ああ、だいぶ遅くだけどなぁ〜」


「……えっと、あのっ夜にリヒトくん起きてた……?」



 先に眠ることをすすめられて甘えちゃったけど……。

 その後、リヒトくんどーなったのかな?


「あー、あいつ? 夜中に食堂で魔導書抱えながら突っ伏して寝てたな! わははっ」


「うううっ……やっぱり!」


 真面目なリヒトくんが寝落ちするなんてよっぽどだ。

 昨日はなにか落ち込んでいたし……。

 きっといろいろとムリしていたのかもしれない。



「安心しなよ? 戸締まりはちゃんとしてたぜ。まぁ〜面倒だったから、そのまま抱えて部屋のベッドに放り込んだがな」


 ウェーイ! とドヤ顔で片手を上げる。

 たぶん勝利宣言的ななにかだ。


「まー、ちょい頑張り過ぎだが……背伸びしたいお年頃ってね〜♪ 許してやりなよルーシアちゃん?」


「……? 良くわかりませんが、わたし先に眠ってしまって……リヒトくんの事ありがとうございました」


 頭をさげつつぺこりとしながらお礼をいった。


「くくくっ」


 笑いをこらえてるテオドールさん。


 おちゃらけた感じだけど……寝落ちしてしまったリヒトくんを抱えて2階の寝室へと運んで寝かしつけてくれた。

 すごーくありがたいなぁ。

 


 ――――ふと深緑の瞳とみつめあう。

 茶色ががった金髪と日に焼けた肌、鍛え上げられた筋肉。

 ……頼りがいある大人がそこにいた気がした。



「ああ、お礼は肉料理でいいぜ?」


「…………。」



 いつものテオドールさんがそこにいた。


  

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