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第55話 3ギルド会議





「では、さっそくだがはじめようか」


 ――冒険者ギルドの応接間にて。


 冒険者ギルド長パウロさん

 魔術師ギルド長オズワルドさん

 職業ギルド長ブライアンさん


 そして『竜のあくび亭』の主人ルーシア。

 宿屋の求人募集の件について話し合いがおこなわれた。



「私のよりすぐりの……魔術師候補生はどうした?……かなり優秀な者を選んだのだが、何がいけない?」


 魔術師ギルドマスター《オズワルドさん》がとまどいつつも質問した。

 自らが選んだ求職者を面接で落とされ不思議そうにしている。

 理解できないといった感じだ。



「ああ、それならなお前に似て、マナーがよくなかったぞ。偉そうにしてたし、挨拶をまともにできん奴はダメだ」


「……っ!」



 オズワルドさんが目を見開く。

 頭をかいて、ブライアンさんが説明した。



「いやぁ〜まぁ……あと、付け加えるなら魔術師の候補生は貴族が多いからなぁ。身分があるとなちょっと……いろいろと面倒くさい」


「……確かに、そうだが……」



 眉をしかめるオズワルドさんに、パウロさんが意見する。


「私としては、やはり体力かな〜?……宿泊業だし、主に力仕事だろう?」


「……そうだな……」


「シアちゃんよりなさそうなのはね〜。いろいろと対応できんだろうし」


 元冒険者パウロさんは頭をふる。

 宿泊業務の最低限の体力は必要らしい。


 うーん?

 まぁ、なるべくならあったほうが助かるかも。


「……っ」


 オズワルドさんがグッと言葉を詰まらせた。

 ――それぞれが納得のいく理由だった。



「うちの冒険者たちはどうだ? 力もあり器用なやつもいた。性格も素性も問題無いヤツらだ。理由を聞かせてくれ」


 冒険者ギルド長の《パウロさん》が質問した。


「多くの希望者、かなりの数だ……私は正直、不満で納得がいかない」


 目線をそらしつつ不満をこぼす。



 やや間があって、ブライアンさんがため息をつく。

 かなり言いづらそうに口を開いた。


「実を言うとなぁ……お前のところが……1番問題があった」


「同意見だ」


 すぐにオズワルドさんが、ブライアンさんの意見に応えた。


「「……っ!?」」


 パウロさんといっしょにびっくりした。

 心底困り顔でブライアンさんが首を振る。

 オズワルドさんもうなずいている。


「な、何故だ……?」


「ほとんどがなぁ〜『竜殺しの勇者』大ファンだとよ?」


 困ったよう唸る。


「かなり熱狂的なファンが多くてだなぁ……心配というか、わるくはねぇんだが、……勇者志願者ばっかりだろ? 募集は宿屋のスタッフだ」


「た、確かにそうだがっ」


「……あまりにも熱狂的すぎるモノは……一応、遠慮しといた」


 えええっ そうなの?

 大ファンでもわたしはまったく問題ないのだけれど……。

 ブライアンさんなにかしら困っているしムズかしいのかな?



「……全く同意見だな、ゼノ殿の冒険譚の話や屋敷に残る武器や防具、しまいには孫娘に興味を持つそぶりの輩がいる始末……血を手に入れても、聖剣の権利など手に入らないと言うのに……愚かなことだ」


「……っ!?」


 バッと口元をおさえてパウロさんが絶句した。

 わなわなと両手で顔をおおう。


 ちょっとオズワルドさんっ

 言い方、言い方が〜……。



 直接的な発言にブライアンさんは眉をしかめ、

 すぐにパウロさんの肩に手をおいた。



「パウロ、大ファンで憧れてたお前ならわかるだろう? 俺も大好きだったからな……今回はめぐりあわせ、たまたま運がなかっただけだ」


 ポンポンポンッ


 ふるえるパウロさんを大きな手でやさしく叩いてなぐさめている。

 オズワルドさんは目をふせて静かに瞑想していた。



「んで、俺のところ何でダメだった? 職業ギルドからの……直接人材派遣だぞ? ちゃーんと仕事と割り切ってるヤツらだ」


 職業ギルド長の《ブライアン》さんが、ニヤリと笑い投げかける。



「一般募集で宿泊業に関連する人材を全て用意した多種多様のモノたちだ。

 ……全員、遠慮はむしろ逆に興味あり過ぎだぜ!?」


 その手の職業のプロを全員。ワクワクしているようだ。


 たしかに〜、お仕事のプロの方たちだよね?

 なにがよくないのかな?



 ――魔術師であるオズワルドさんが目をふせ落ちついた声で語りだした。


「『竜のあくび亭』が特殊な宿屋として屋敷妖精など、さまざまな妖精たちがいる。まず、それらのモノに好かれる……きらわれないことが条件となる。……妖精は気まぐれで難しい。善意や悪意ではなく純粋な心を持っている」



 ブライアンさんは腕を組んだまま真剣に耳を傾けている。


「妖精とあわない者、幻覚にかかりやすい者は遠慮した。あとは屋敷の価値にこだわる者も、だ。金銭的な関係だが……用心にこした事はないと思った」


「……。」


 ええっ妖精にあわない人?

 そんな人もいるんだ。でも幻覚って。


 屋敷の妖精さんたちはそんなことしないと思うんだけど……。

 一応、用心のためにもなのかな?

 お仕事に来てくれる方に迷惑はかけられないし。



 すこし気を取り直したパウロさんが、やや軽めの口調で説明する。


「私は最低限の護身術なり……またはそういった技術がなければ直感をもつ者。それ以外は、申し訳ないが見送ったなぁ」


 最低限の護身術? もしくは感のいい人?

 べつにそんなモノなくても大丈夫だと思うんだけど……。

 『竜のあくび亭』あぶなくないよ〜。


「ほう……それで?」


「……あるていど気を放たれても、全く反応しない者などかな?……シアちゃんよりにぶいのは、あぶないよ」


「どわっーはっはっは!!」


 バンバンバンバンッ


 ブライアンさんが大笑いした。

 手を額にあててテーブルをバンバン叩いてる。


「ガハハッ妖精? 直感? たしかになっ!」


 ひーっひーっ腹を抱えて心底可笑しそうに笑ってる。

 

 パウロさんは目線をおとして紅茶を飲み、

 オズワルドさんは静かに目を伏せてなにかを呟いていた。


 静かな部屋にこだまする大きな笑い声。

 不思議にもなぜか、泣き声にきこえた。


 

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