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第54話 男爵家の大熊 ―ブライアン―


 バターン! 


 扉が吹きとびそうないきおいで開いた。



「お待たせだぁぁっこの野郎どもがぁっ!」


 うわぁっ なぜかすごーくおこってるー。



 部屋におおきくえながら大熊のような男があられた。

 職業ギルドマスターのブライアンさんが襲撃……到着した。



「まあまあ、落ちついてね? ブライアンくん」


「……あいかわらずだな?」



 冒険者ギルド長パウロさんが困ったように笑いながら宥めて、

 魔術師ギルド長のオズワルドさんが眉を顰めて言い放つ。


 ドガンッ!

 テーブルがたたきわるいきおいで激しくゆれた。



 うなり声をあげながらパウロさんとオズワルドさんをにらむ。


「よくもぬけぬけと……! オズワルドおまえぇぇっ! どんだけ伝書鳩飛ばしたやがったがっ職業ギルドが鳩に襲われてると騒ぎになっただろうがぁぁぁ!」



 えええっ オズワルドさん……?

 魔法伝書鳩いっぱいって、迷惑すぎるっ



「おやおや〜? オズワルドくん、いきなりシアちゃん来たからびっくり驚いて混乱しちゃったんだねぇ〜」


 オズワルドさんが雷に撃たれたようにかたまった。

 にやにやと笑いをたたえたパウロさんが、うれしそうにフォロー? する。



 ドガンッ!

 テーブルがたたきわるいきおいで激しくゆれた。


「おまえもだっパウロ! 特別部隊までださせやがってぇぇぇ! たたかえない職業ギルドにまで緊急連絡、何事かと……きもが冷えたわぁぁぁ!」



 うわぁっ パウロさん……?

 特別部隊? それって大変なことなのでは。



「ほう? 緊急連絡か……貴様、失態のせいでかなり気が動転していたな?」


 フンッとオズワルドさんが笑う。

 パウロさんは下をむいてぷるぷるしてた。



 あー、ブライアンさんが目が血走ってかなーりおこってる。

 コレは、おこられてもしょうがないよ……。

 

 というか、この人たちギルドマスターでしょ?

 しっかりしてくださいー!



「あ、あのっブライアンさんおひさしぶりです」


「おおおーっシアちゃん〜大きくなったな♪」



 キラキラキラキラ〜♪


 大熊ブライアンさんが目をきらきらさせる。

 ガハハっと大笑いし、頭をぐしゃぐしゃなでられた。


 まって! ちょっとまてぇぇー!!

 

 前回あった時から身長は……変わってないと思うんですが……どこが大きくなった?

 

 ヤダヤダ、ききたくないっ



「おやおや、ブライアンの中ではいつまでたってもシアちゃんは小さな子どもだねぇ」


「……まったくだ。いつまでも子どもではなかろうに……」



 2人でやれやれと肩をすくめてる。

 さっきの件はまるで反省してないことはわかった。


「とりあえず、皆いったん席につこう。茶をおねがいしてくるよ」



 ◇



 まずはいったん落ちつこうと席についた。

 すぐさま用意され運ばれた紅茶。


 それぞれが茶をたしなむ。

 

 ――茶器の音だけがする室内。

 先ほどまでのさわぎがまるでウソのような静けさだ。



「あのー、それでスタッフの件はどうなっているんでしょうか……?」


 ゆっくりと茶を飲む御三方にたずねた。



「あー、そのことなんだがなぁ……」

 職業ギルド長のブライアンさんが頭をかいた。


「いまのところ皆、よくない結果でねぇ」

 冒険者ギルド長のパウロさんが肩を落とす。


「要求事項をかなり緩和かんわさせているハズなのだが……ふむ。」

 魔術師ギルド長のオズワルドさんがあごに手をあてる。



 それぞれが困ったようにうなっている。

 

 ――そこまで『従業員の募集』は大変なのか……。

 この状況からして、やはりムズかしいようだ。



「もう1度確認のためにおさらいをしようか」


「ああ、そうだな」


「はい〜、よろしくおねがいします」



 ギルド長たちの言葉にすぐさまうなずいた。



「まず給金はここの約3〜5倍、もちろん移動時間を含めている。場所もここからはすこし遠いが、すぐ近くに送り馬車の通りぞいだ」


「だなぁ〜! すでに花まるだな」


 パウロさんが募集の基本情報を話す。

 ブライアンさんがうなずき声をあげる。


「時間も自由に希望できて、休日も好きなだけ選べる。各種保険、手当もありまぁ、住みこみだけはできぬが……」


「ああ」


「なにがダメなんだ? 何か足りないモノはあるか?」


「充分、申し分ないと思うぞ」



 ええっ今ってそんな募集なんだー。

 

 な、なんだかすごそう……。


「すでに好条件に好条件を重ねがけしてるようだな。……条件をあげ、結果ぜんぶもりになっている」


 うーん? 内容はわるくないのー?

 それでも人が集まらないのかな?



「あのー、ぜんぜん応募はなかったんですか?」



 おそるおそるきいてみた。

 


 ま、まさか『竜のあくび亭』が変なうわさとか?

 よくないイメージでさけられてるとかじゃないよね?


 いやぁっそれだったら

 すごーくかなしいんですけどぉぉーっ


 ――はじめに採用された方々からは、全員ごめんなさいをされた。


 断られた内容は『宝くじ当たった!』とか『プロポーズされました♡』や『長年、夢だったシゴトから声がかかって♪』等など、めでたい話だったらしいけどー。


 今はなんで募集しても上手くいかないのかなー?


「……。」


「……。」


「……。」


 御三方が黙り込む。

 えっなにかまずい質問しちゃった?



「いや、求人の応募はそれなりにはきてる」


「えええっそうだったんですか?」


「ああ、そのあたりは問題ない」



 よかった〜興味ある方々はいたんだ。

 『竜のあくび亭』自体は、さけられてはいないと。

 

 とりあえずホッと胸をなでおろす。



「希望者の書類選考も人柄、家柄、実績、どれもわるくないと思うのだが……」


 オズワルドさんがしずかにつぶやく。



「冒険者ギルド、魔術師ギルド、職業ギルドからの派遣、一般募集からすべてよくない結果だったのか?」


「ふむう、俺たち誰かの書類選考や面談、審査をくぐり抜けても、俺たち誰かにはひっかかったってことだよなぁ。なるほどな」


 ヒゲをなでまわしながら納得するブライアンさん。

 タンッとヒザをたたいた。


「では、この条件でもいたらない。それぞれの意見をきこうか?」


 パウロさんの提案に皆がうなずく。


 話し合った結果、それぞれの理由を確認することになった。



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