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第51話 受付カウンター




 ギルドの1番端のカウンター席に案内される。

 まだ入りたての新人っぽい方が担当してくれるみたいだ。


「……。」


 でも、ちょっとお疲れ気味? 

 いやだいぶお疲れさまな感じだ……。疲労度がすごそう。


 うーん、こんなに人がいっぱいいて多すぎだし……。

 対応しきれてないのかもしれない。


「だいぶお待たせしました。シア様でよろしいでしょうか?」


「は、はい」



 あっそうだった。ギルドカード。


身分証明書ギルドカード

 国でギルドを利用する時に必要なカードだ。


 わたわたとさしだした身分証明書ギルドカードを確認される。



「シアさま、申し訳ございません。ギルドからの依頼品との事ですが、現在それに該当がいとうするクエストが見つかっておりません」


「ええ!? そうなんですか?」



 が、がんばってつくったのに……。



 ギルドクエストが……消えてた。はははっ……。


 いつでもいいよ〜って依頼クエストだったけど。

 いくらなんでもおそすぎた?


 もう必要なくなったか、納品されちゃったのかもしれないなぁ。


「……っ」


 あああっ依頼主さんごめんなさい。

 間に合いませんでしたぁぁぁ。


 とても申し訳ない気持ちでしょんぼりしていると、

 受付係の青年が声をかけた。



「よろしければ、品物によってはギルドの方で買物のサービスも行っております。いかがいたしましょうか?」


「ええっホントですか!?……せっかくなので買取っていただけると、うれしいです♪」


 日持ちするかも分からないし。

 今回は買い取ってもらえるなら助かる〜♪


 宿屋の維持費になるしー、薬草はどんどん採れるし。

 貴重素材はまた補充してもらって次回また作ろうー。


「では、こちらに品物を見せていただけるでしょうか?」


「は、はは、はい!」


 わたわたしながら、カゴから回復薬をとりだす。


 赤と黒のトレイへと。

 ちいさな小瓶をふるえる手でそっと丁寧ていねいにおいた。



 受付係の青年が布で瓶をとると確認している。



「中身を確認をいたしますので、少々お待ち下さい」


 席をたって後ろの作業台バックヤードへとむかう。

 

 受付カウンターの後ろはオープンになってて立ち机が並び、数人の方々が検証や鑑定を行う作業場がある。


 運ばれた回復薬を受付係の青年が、先輩らしき人に声をかけて鑑定してもらうみたいだ。


 ん?


 なにか話し合いをしてるみたい。


 あー、買取の値段で困ってるのかな?


 ……専門ではないけど、一応は回復薬の製造と販売の許可証はあるし(ギルドカードにそのまま登録されている)、品質と数のクオリティがたもてないから、お店販売とかはしてないけど。


 個人的に作った物なので価格付がムズかしいのかもしれない。


『これー、回復薬つくったからよろしく〜♪』


 いきなり自作物持って来て買って! の状態だもんねぇ……しかたないよね。


 前は持って来てたらすぐ対応してもらったけど。

 うううっいつもの職員さん居ないし……。


「……。」


 でも、受付やスタッフの方々が人が多くなったおかげで、

 対応もずいぶんと効率的になっている。便利で早くてすごいなぁー。



 いつのまにか回復薬の周りに1人、2人、人が集まり出してわいわいしてる。魔術師らしきオジ様も現れ頭を抱えたりで議論で白熱してる。


 回復薬2本何だけど値段つけ大変そうだなぁ……。

 お仕事多忙の中、手をとめてしまってホントにすみません。


 心の中でぺこぺこおわびした。



 集まっていた方々がうなずいて解散する。

 難航していた値段付作業が無事完了したようだ。


 あっ受付係の方かえってきた。


 って、んんん?


 なにかすごく顔色がよくないよっ



 ◇



「大変お待たせしました。シアさん」


「は、はいー」


「……先程の商品ですが、いくつか確認事項かくにんじこうがあります……。――よろしければ入手先を教えて頂けないでしょうか?」


 案内係の青年がふし目がちにつらそうに話す。

 顔色もよくないし大丈夫なのかなー?


「えっと自宅鍋で作りました」


「……っ」


 鳩が豆鉄砲を回避しそこねて喰らったような顔になった。


 目を見開いて驚いている。

 わたしもびっくりして流れ弾の豆をくらった。


「ご自宅の鍋で……なるほど」


 えええっ なにその反応。

 なにかおかしかったかなー?


 気を取りなおし、なぜかふるえる手で黒色の魔法板のボードで光のメモしている。すぐに消せたりできとっても便利な魔法具アイテムだ。


「あ! シチューを作っている鍋とかじゃないですよ? ちゃんとした魔法薬専用鍋でです」


 たとへ個人用でつくる回復薬でも。

 そのへんの道具はちゃんと分けているよー。


 回復薬がシチューやカレーの匂いがしたらちょっとこまると思う。

 いや、おいしそうだけど。


 受付係の青年がうなずきながら『家庭用とは別』とちゃんとメモしてくれた。――細かいところまでシゴトが丁寧だ。まじめな方かもしれない。



「では、材料の入手等は……?」


「薬草は、自宅の裏庭とハーブ園ですね〜。ドラゴンの角とかの特殊な材料は幼なじみや知りあいからもらったりしてます。まぁ、ご近所さんからのお裾分すそわけが主な感じですね〜」


「自宅のハーブ園……ご近所さまからのお裾分け……」


 あれれー?


 だんだんと青くなっていく受付係のスタッフさん。

 体調がだいぶすぐれなさそう。


 ふるふるふるえてメモしてるし……大丈夫なのかな?

 こまったなぁ、どうしようか……んん……?


 あっ! うしろのバックヤード作業台にいる方々が

 心配そうにチラチラこっちを見ているような……?


 鑑定っぽい作業とか書類書いてるけど、何かとても不自然な動きだ……。


「……っ」


 えっ目があったらすかさずそららされた!?


 って、やっぱりーっ!


 不安顔で心配そうに、こっちを見ているよー。

 受付係の先輩方? はこの案内係さんが体調不良で無理してるって気がついているんだ。


 他のスタッフさんを呼んだ方がいいのかなー?


 よしっ! と声をかけようとした瞬間。



 ドタドタドタンッバターン!!



 奥の部屋から初老に差し掛かる中高年紳士がとびだした。

 髪が乱れてぜぇぜぇと肩で息をしている。



「シアっシアちゃん、ごめんね!」


「えっ!? パウロさん、こんにちは?」


「ギルドマスター……!?」



 すぐさまかけ寄ってきて椅子にすわるわたしに、

 ガバッ!っと跪いて手をとった。


 ひぇぇぇっものすごく混乱してるー!?



「ごめんっホントにごめんね!」


「ちょちょっと待ってください。パウロさん、と、とりあえず……落ちついてっ」


「あああ! 完全に私の落ち度だ。ギルドの依頼なんだけどね、ギルドの依頼じゃないの。わかりにくくて誤解させてごめんね!」


 突然現れた紳士な叔父さまパウロさんと一緒にあわあわする。

 物凄く頭を垂れながら謝罪している。

 

 何が何だかわからない。真っ赤になってパウロさん宥める。


 見てるっまわりが見てますから〜っ

 うううっ、どうしたら〜!!



「……ギルド長とりあえず奥へ」


 周りがうわぁって目で見る中、上司っぽい方が声をかけた。


 助け舟が来た。大きめの舟だ。

 よかった助かったぁぁ。



「ああ、シアちゃん?……はぁはぁ、じゃあオジさんとね?……ちょっと奥の部屋へ……行こうか?」



 ゴホンッ!



 上司さん? が大きく咳払いをした。


 助け舟の船長さんは何かにたえるような顔をしている。

 なんだかとてもつらそう。


 風がとおる涼しい広場。

 受付の場所だけどひたいに大量の汗をかいてる。


「シアちゃん、こっちだからね」



 ゆっくりと手をとられ、奥の部屋へと誘導される。

 パウロさんはまだ若干胸を抑え、ぜぇぜぇ肩で息している。


 だ、大丈夫なのかな? 心配だよぉぉー。



 ドタドタドタッ ドタドタドタッ


「……っ!?」


 え? いったいなにーっ?


 奥の部屋へとむかう中、ふりかえると背後でドカドカあわただしい靴音が鳴り響く。たくさんの警備隊が駆けつけて先ほどの案内係の方々とワーワーとさわぎはじめた。


 ひぇぇっ叫び声がすごい。


 なにか事件があったみたいだけど大丈夫なの?

 パウロさぁんっ!?


 冒険者ギルド長パウロさんはそれに目もくれずにふりかえることもなく。

 ―――奥の扉へとわたしを導いた。




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