第45話 ちいさな屋敷妖精たち
屋敷妖精たちのおまけ話。
恋愛、コメディはありません。
ほのぼののみ。
読み飛ばしても本編に影響はありません。
よろしくおねがいします。
「うわぁっキレイになってるー?」
虹色の妖精が声をあげた。
床や壁をきょろきょろと見ながらうれしそうに笑顔になる。
ああ、そうだともと屋敷妖精たちはたがいにちいさくうなずいた。
ぽむぽむっ
天井裏や床の隙間からそっと喜ぶ少女をながめながめてる。
「みんなー手伝ってくれたんだねー♪ いつもありがとう〜」
昨日の夜はずいぶんとみんなでがんばった。
ぴょいん
ぽむぽむっ
ころころころころ〜。
屋敷妖精たちはちいさくとんだりハネたりころがった。
この虹色の妖精がもっとちいさかった頃からみんなで見守ってる。妖精たちと、この虹色の妖精ずっと、ずっとみんなでいっしょにこの屋敷にすんでいる。
「これお礼のミルクとお菓子です。よかったら食べてね〜♪」
ざらざらざらっ
ぴょいんっ
テーブルにおかれたお皿にザラザラと音をたててクッキーがばらまかれた。カップにはなみなみとしんせんなミルクだ。
笑ったかおをみせてくれるだけじゃなく、こうやってお菓子をあげてくれたりする。
虹色の妖精はぺこりとしていってしまった。どこにいった? たぶんあの草がいっぱいのところにいった。お水をかけにいった。
ころころころころ〜
ぽむぽむっ
ぴょいんっ
さくさくさくっ さくさくさくっ
屋敷妖精たちはちいさく食べはじめた。
◇
――ある日の昼下がり。
トントントンッ カラン♪
「えっと……なにかご用件でしょうか?」
いっぱいきた。
『竜のあくび亭』にいっぱいヒトがきた。
虹色の妖精がびっくりしてる。
あんなにいっぱいのヒトがここにくるなんて?
ころころころころ〜
「先日こちらの『竜のあくび亭』の後見人さまに雇われた者でございます。どうぞよろしくおねがいいたします」
「えっ!? えええええー!!?」
「さっそくですが、作業をはじめさせていただきますね」
「えっと、あのっその」
わらわらとヒトがあつまってなにやらはじめそう。
虹色の妖精がとてもこまってる。
「……ここ、わたしのおうち……」
ぴょいんっ
屋敷妖精たちはちいさくはねあがった。
「あのー、大丈夫です。これでも毎日ちゃんとお掃除してますし、汚れているところなんてっ」
「ルーシアさま? ええっとてもキレイにしておいでですね。たいへん素晴らしいです」
「はい……! あ、ありがとうございます」
「でも、ここはこれから宿屋としてお客様をお迎えいたしますので万全に対応したい。と後見人様は願っておいでのようです」
「お客様……万全に……ですか?」
「はい、ルーシアさまお1人では大変なところをサポートさせていただくために参上いたしました。ぜひとも、専門とする私たちにおまかせくださいませ」
キラキラキラキラキラ〜♪
執事さんとメイドさんの明るい笑顔にクラリとした。
「あうっ……ぜひぜひ、おねがいしますっ」
ぽむぽむっ
ぴょいんっ
ころころころころ〜
いっぱいのヒトがそうじをはじめた。
「……。」
「ルーシアさま、もし良かったら一緒にどうですか?」
「えっ」
「簡単なやり方やコツなどをお教えいたしますよ? いかがでしょうか?」
「はいっよろしくおねがいします♪」
虹色の妖精があの庭のまっかなあかい実みたい笑った。
「ここは、こうしてですね」
すいすいっキラキラキラ〜♪
「うわぁっきれーい♪」
ぴょいんっ
「これは、手袋をちゃんとして力をいれて」
ゴシゴシッ きゅっきゅっ
「うわぁっすごーい♪」
ぽむぽむっ
「それは、傷まないようにクリームでのばして」
ささっ ぬりぬり
「うわぁっ つやつや〜♪」
ころころころころ〜。
屋敷妖精たちはちいさくとんだりハネたりころがった。
――夕暮れ時、虹色の妖精はいっぱいのヒトを見送る。
「お疲れさまでした。あのっホントにご丁寧になにから何まで……ありがとうございました〜大変勉強になりました♪」
「ふふふっはい、こちらこそですよ。ルーシアさまもお疲れさまでございました。」
「あのっまた、みなさんに会えますか」
「ええ、ご縁があればかならず」
いっぱいのヒト。いっぱいの笑顔。
虹色の妖精がその糸をなびかせて笑った。
◇
――ある日の朝やけのなかで。
「むにゃむにゃ、おはよ〜」
おおきなあくびをしながら虹色の妖精がキッチンにむかう。
「……っ!?」
キラキラキラキラキラキラ〜♪
「うわぁっなにこれぇぇ! 屋敷がすごーくキレイに!?」
虹色の妖精がきょろきょろとあたりをみまわす。
ぴょいん
ぽむぽむっ
ころころころころ〜。
屋敷妖精たちはちいさくとんだりハネたりころがった。
読んでいただきありがとうございました。