表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

45/105

第43話 夜明け前、食堂にて




「誰だよ、お前は?」


 我等をにらみ上げたまま、騎士テオドールが冒険者ユリウスに問いかける。



「ここの宿泊客ですけど?」


「なんだとっ」


「……ルーシアはドコ? 何がどうなっているのかな?」


『竜殺し勇者』の弟子ユリウス。

 ただならぬ雰囲気に我等はおびえた。


(うわっふつうの表情だけど……かなりヤバイぞ!)


(恐いよ、怖いよ怖いよ〜!)



「彼女なら、私のベッドで寝ている」


「ひぇっ」「ヤメて」「のぉぉ」


 我等全員が、頭を抱え絶望した!



(ぎゃー! 主様ヤメてぇぇぇ! その発言を何度も繰り返さないでくだしぁぁぁあああー! 我等は生きて帰りたいんッスぅぅ!!)


「っと、何度も説明している最中だが?」


「はぁ、なるほど……でも何故?」


 ヤレヤレと答えるヴォルフ様。

 ユリウスが、不思議そうに首をかしげる。



(ヤバい! この竜殺しの弟子っ優しい表情なのに目がまったく笑ってねぇ! 返答しだいでは即バトル展開か!? 主様、ホント頼みますよっ!!!)



「フンッ、朝まで無理やり付き合わせたからなっ?……多少強引だったのだが……まぁ、仕方あるまい、私も今回ばかりはとめられなかったのでな。」


 にやりと不敵な笑いで、片眉をあげて言い放つ。

 大胆に腕を組みながら一同を見下ろした。



「朝まで……無理やり……強引に……?」


 竜殺しの弟子が、ゆっくり確認する様に呟く。



 ズ……ズズズ……ズズ…ズズズズッ



 我等は魔王が誕生する瞬間を見た。


「ひぃぃっ」


 聖職者リヒトと騎士テオドールの確認はもうできない。主様の説明で《上限開放スキル》臨界点はすでに突破。

 ヤバいとかのレベルはとっくに過ぎている。



「今、コトがすんだばかりだ。ルーシアをそのままベッドで休ませてい……」


「「「ヴォルフさまあああっ! 主様(ぬしさま)ぁ〜!? ヴォルフさまー!? ヴォルフガングさまぁぁ!!! あるじぃぃ!!」」」



 ガシッガシガガッガシッ



 我等全員で叫びながら背後から主様をとりおさえた。

 ほぼ絶叫、悲鳴のような叫び声だ。



「何だ、どうした? 皆一斉に。口を出すなっ」


 掴まれたまま不満気に顔をしかめる。



(オーバーキル!オーバーキル!オーバーキル!オーバーキル!オーバーキル!オーバーキル‼)


「お願いですから、お願いですからぁ! 我等に説明させて下さいませ!」


 我等全員で涙を流して、必死に懇願する!

 あまりの必死さに主様がたじろいだ。


 ご三方にむきあい頭を下げる。



「リヒト様、テオドール様、ユリウス様、大変申し訳ございません! 主様に代わって謝罪させて下さい! 本当に誤解なんですっ!」



「……僕たちを知っているの?」


 聖職者リヒトがうかがうように、問いかける。

 3人は名前を呼ばれて少し驚いたようだ。


「ええ、我等が主ヴォルフガング様はあなた様方と同じく『竜のあくび亭』の宿泊客でして……」


「宿泊客っ!? こいつが?」



「このお方、説明が下手……いえ、すこし……多少分かりづらいといいますか、真実しか言って無いのに、誤解を招く……違う意味で伝わり解釈されてしまうのです」



「ん? ちゃんと説明してるだろう?」



 お前たちはいったい何を言ってるだ?

 っと、いわんばかりの仕草で首をかしげた。



「「「ヴォルフ様は黙ってて下さい!」」」



 我等全員で、《魂の咆哮》をあげて叫んだ。


「なっ……何故だっ!?」


「この方々は、ヴォルフ様がルーシア様に酷い事をされたのではないかと、心配しておいでなのです!」


「何だと……! ルーシアに私が? 酷い事を!? 何故だ! 意味がわからぬ。感謝すれど無体なコトなどする筈がないっ!」


「……。」


「……。」


「……っとまぁ、こんな感じでして……」


「もしや何か、誤解させてしまったのか? すまない、ちゃんと説明したつもりなのが……」



「えっとよぉ? とりあえず……ルーシア嬢は無事ってこと、なんだな?」


「うむ。朝まで付き合わせたので、疲れて寝ているだけだ……仕事もあるのに、まったく配慮が足らなかった。迷惑をかけたようだ申し訳ない、謝罪する」


「「「すみません。ホント、すみません」」」



 ペコペコペコペコペコペコッ



 必死に我等全員で、何度も頭を下げた。


「あのー? じゃあルーシア、寝室に運んでいいのかな?」



 竜殺しの弟子が問いかけた。

 ヒト族に戻ったようだ。我等は安心した。



「ああ、ありがたい。この屋敷の勝手がわからぬ故、私の部屋に案内しよう。来てくれ」


 主様の普通の返答と部屋の案内で、3人は一応毒気が抜かれた?ようだ。


 御二方様が2階へと上っていった。



「……えっと、お疲れ様です」


「アンタらも大変だな……」


「い、いえいえ〜!……ホントにすみません」


 我等は必死に頭を下げ続ける。



 聖職者と騎士に悲しげに同情された。




 

 お読みいただきありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
 読んでいただきありがとうございました。 script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ