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第42話 夜明けの狼たち sideオオカミ③




 ――深夜の『竜のあくび亭』の食堂にて。



 どんちゃん♪ どんちゃん♪


 黒銀狼団のメンバーたちの笑い声。


 我等は旅の疲れと『いきなり食べ放題』タイム。

 そしてひさびさの飲めや歌えのどんちゃん騒ぎでおおいに楽しんだ。



「zzzzzz……すぴぴっ」


「んごー、んごー、ん?」


 スッ ぱぁぁぁあああっ



(……光が、……なんだこれ?)


 ドンッ


 キラキラキラキラ〜♪



「うおっ! まぶしっ」


 ガバッガバッガババッ


 突然、室内が明るくなって我等全員とびおきた。



「うわっなになになにー!?」


「おい、いったい何なんだ…………食堂が光っている?」


「2階の方からだね〜、ふぁぁっ」



 天井からふりそそぐ光。

 壁を飛び越えて主様の部屋あたりから発せられてる。



「たぶん、あのゲームクリアしたんじゃない?」


「あー、マジ? やっとかぁ」


(あの謎の古代のなんとかかんとか遊戯ゲーム、ようやくか〜!)


「やったねー♪ルーシア様、スゲぇや!」


「ふぁぁあ〜、今何時〜? ヴォルフさま降りて来るまで、まだ休んでていい〜?」


「キッチンの後片付けと掃除もすんでるし、2人くらい起きとけばいいだろ〜?」


「んだな〜♪」



 トンットンットンッ


 主様が靴音をたてて、階段を降りてくる。



「皆のモノ、ついに私はやったぞっ!」


 バッ


 両手を掲げて勝利のポーズだ。


 わあああぁぁぁっ


 パチパチパチパチパチッ


「ヴォルフガング様、おめでとうございます!!」


「……ついにやりましたね!」


「ああ、長年の夢が…………ようやく叶った」



「そういえばルーシア様は?」


「今は私の部屋で眠っている。だいぶムリをさせてしまった……」


「なるほど〜了解です」



(朝まで主様のゲームに付き合わされて、すごく大変だっただろうなぁ〜まぁ、ホントお疲れさま〜ッスねぇ)



「……もう夜明けか……なんとも清々しい気分だ」


 ヴォルフ様のやりきった顔に我等は感動した。

 思わず涙ぐみそうになる。



「ヴォルフさま……! ホントに良かった」


「あははっ我等もうれしいです!」


「皆のおかげだ、ありがとう」



 よくわからないゲームをクリアした主様。

 皆で感動して涙ぐみながら我等全員で取りかこみ祝った。


(うんうん、マジ泣けるっすー)


 いつのまにか夜明け前から光へと世界が明るくなる。

 ―――食堂は朝の光の中で歓喜につつまれた。



 ◇




 トンッ トンッ トンッ


 カラン♪


 感動の渦の中で、突如きこえたキレイな音。


 そこで決して鳴ってはイケない――。

 鐘の音が食堂にひびいた。


 ギィィィィィィィィイイ



「「「げっ!!!」」」



「ルーシアさん、ただいまー♪」


「おはよーさん♪ さっそく飯だメシ〜!」


「「「……。」」」


「……。」


「……。」



 バタンッ



「……あなたたちは誰ですか?」


「っんだ?……テメェら?」



『竜のあくび亭』の食堂へ

 

《聖職者リヒト》と《騎士テオドール》あらわれた!



 ◇



 ちゅん、ぴちゅちゅぴっ。



 朝の静けさ小鳥がなくおだやかな空気の中。


『竜のあくび亭』宿泊客ととつぜんの遭遇エンカウント―――。

 我等は対峙して戦慄した。



 ――ザザッ

 主様を守るように我等は円陣を組む。



(ヤバいよ、ヤバいよ〜っ!)


(まって、まってぇぇどゆことー!?)


(朝帰りとか想定の範囲外だぞっ)


(誤解されねーか? 色々とヤバい!)



 ど、どーいうことだ!!

 入手した情報ではどちらも昼過ぎあたりに『竜のあくび亭』へともどる予定だったはず。

 想定していない事態アクシデントが起こっちまったのかっ!


 これはマズイ、非常にマズイぞっ


 黒装束の集団、戦力差はコチラが上だが……。

 戦況は圧倒的に我等が不利。


 ――即白旗まいった即降参まいったレベル。

 土下座ホントにごめんしてでも誤解をすぐに解きたい気分だ。



 スッ


「待て、皆下がれ」


 腕を組みながらヴォルフ様が前へと歩みよる。


「――――私が説明しよう」


 主様が、片手をふって我等を後ろへさげさせる。



 バンッ



 騎士テオドールが壁をたたいた。


「……おい、てめぇら……ルーシア嬢はドコだ? いったい何をした!」


「彼女なら私のベッドで寝ている」



 ドンッ!



「「「……!?」」」


(ぎゃあああっー! なに言ってるんですかこの人!

 主様ヤメてぇぇぇ!

 その発言は今、非常にかなり危険マズいッス!)



「っんだとぉ?」


「…………どういう意味でしょうか?」



 ゴワァァァッ


 聖職者リヒトと騎士テオドールの戦力が上がった、気がした。

 いや、上がっただろこれ、絶対。

 

 主様の説明が《挑発スキル》並にヤバい!!



「彼女なら今、私のベッドで寝ているっと言ってるんだが……? わからないか?」


 ドドンッ!!


「「「……!?」」」


(ぎゃあああっー! 主様ホントにヤメてぇぇぇ!

 マジでヤバいッスからぁぁ! なんすかその説明はぁぁっ

 いや、たしかに真実なんですけどねーーっ!!?

 だがっいらん誤解をまねくっすよぉぉぉ!!)



「……まったく意味がわからないですねっ!」


「おいっ……この賊ども上等じゃねーか」


 ギュリギュリィィッン


 聖職者リヒトと騎士テオドールの戦力がさらに上がった。

 いやもうこれ絶対上がっただろっーー!!

 

 主様の説明が《混乱スキル》並にヤバい。



「あ、あああのー、ヴォルフさま……?」


「わわっわたしたちが説明を……」



 我等全員で目配せしながらうなずきあう。


 たしかに冷静に説明と真実だが、結果的に事態がたいへん思わしくない。

 なんとかしてこの主様の暴走をとめたいっ



(このままでは非常にマズい!

 我等は皆で、主様をいろいろとフォローせねばっ!)



「…………皆のモノっ口を出すなっ!!」


「ひぃっ、ぬ、主様……?」


「黙れっ! 私は今この者たちに説明しているっ!!」



 ドンッ! ドドドンッ!!


 主のヴォルフ様が、おおきく叫んだ。

 あまりの威圧に我等はいろいろな意味でふるえた。



(か、かかか勘弁しろください!?

 命が非常に危険でピンチな解説とかヤメて! 主さま!)


 聖職者リヒトと騎士テオドールのお二人方。

 そして商人ヴォルフ様のにらみ合い。

 いったいどうしたら――?



 トンッ トンッ トンッ


 緊迫した状況の中、突如扉をたたく音がした。


「「「!?」」」


 ―――――カラン♪


 そこで決して鳴ってはイケない――――。

 鐘の音……ゴングが食堂にひびいた。



 ギィィィィィイイ


「いっ!」「うわっ!」「ヤベェ」



 黒装束の我等集団は再び戦慄した。



 扉からあどけない顔をして、青年がのぞく。

 あかるい声で食堂へと声をかける。


「ルーシアー? おはよ〜、早いけど来ちゃった♪」


「……。」


「……。」


「……。」



 バタンッ



「うーん。すみません、これはどういう状況なのかな?」



 食堂に『竜殺ドラゴンしの勇者スレイヤー』弟子。

 《冒険者ユリウス》があらわれた!




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