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第40話 真夜中の狼たち sideオオカミ①

ヴォルフガングの部下のおまけ話。

ほぼコメディです。

よろしくおねがいします。



 バシュッ バシュンッ


 月夜の晩に切り裂く音がひびく。


「へーい! いちょ上がり〜」



 ダガダッダガダッダガダッ


 馬の蹄の音と切り裂く音。

 乱舞する仲間たち。襲いかかる怪物を闇へとほふる。


「しつけーなぁ、今日に限ってよー」


「んだな〜! こんな時にってヤツだな」


「たしかに、――敵の殲滅せんめつを確認」


「了解、ヴォルフさまー! いかがなさいますー?」

「いったん休憩なさいますか?」


 ダガダッダガダッダガダッ


 馬を走らせ前を向いたまま主様が言い放つ。


「迂回してでも今夜はゆくぞっ」


「へーい」


(今日のヴォルフ様は本気だナ)


「あ、前方に新手でーす」


「そのまま突っ切る! 来いっ!」


 高らかに馬上で叫び命じた。


 ―――月明りの中、馬に乗った黒装束の集団。


 我等『疾風の黒銀狼』が駆け抜けた。




 ザバッ


 川で身を清める。

 黒装束を脱ぎ捨てて汚れを洗い落とす。


「さ、寒みぃ〜!」


「うぎゃあああっ勘弁しろください」


「ひぇぇっ!!」


 あまりの寒さと水の冷たさに我等らは悲鳴をあげた。


 ザバッザババ


「絶対に風邪引くだろ、コレ」


「あの場所へ往訪(おうほう)するには念のためだってさー」


「うー、頑張るぞぞぞ〜い」



 あとから駆けつけた仲間が声をあげる。


「はーい馬、預けてきましたよー」


「お疲れ様でーす」


 近くの農場へ我等の馬をちゃんと預けたみてーだな?

 しかし、まぁこんな深夜にコレだけの数の馬。

 受けいれてくれるなんて、ホントありがてぇーことだ。

 

 まぁ、これも交渉と金のなせる技ってやつだが。



 バチバチッバチバチッ


「ひー! 焚き火暖ったけー!」


 汚れた黒装束がゴウゴウ燃える。


「あれ? ヴォルフさまはー?」


「あっちダヨー」


「…………岩上で瞑想している?」


「星空の下、ヤベェー」


 我等が主、ヴォルフ様だ。

 三日月と星空をバックにまるで絵画だ。



「あらぶった気持ちを落ちつけてるんじゃないの? ほら、『竜のあくび亭』すぐそこだし」


「あー、楽しみにしてたもんねぇ」


「こんな時間だけど大丈夫かな……?」


「報告では、今日は誰もいないはずだよ。だから無理してでも来たんだろうね」


「……はぁ、なるほどねぇ」


 誰もいないから逢いに行くわけですか〜。

 主様、なかなかやりますねぇ。


「お! ヴォルフさま来たぞー」


 瞑想をおえたヴォルフ様がやってきた。

 マントをひるがえす。


「待たせたな、ゆくぞっ」



 ◇



 ホーッホーッ フクロウが鳴いた。



 闇夜に『竜のあくび亭』の前に黒装束の集団が集う。


(いや、こんなん絶対怪しすぎるだろ)



「ヴォルフ様? 本当に、我等全員この中に入ってもよろしいのですか?」


「『竜のあくび亭』の後見人が、私の部下全員をここに入れる様、指示と条件があってな」


「なんと……」


(後見人の頭は大丈夫か? 正気か?)


 我等はたがいに視線をかわす。



「……危険ではないのですか?」


「ここには、様々な加護や術式があるらしい。悪意あるモノ、二心持つモノが入ると――――私はお前達を信じている」


「……ヴォルフガング様……」


(まて! 裏切り者がいたらヤバいって? この宿屋、命懸けで泊まる場所だったのか!)


「もし、誰かが命を落とすコトが在るのならば、すべて私の責任である。……皆で供に……いくぞ」


(う、嘘だろ。我等のみならず、主様も? 主様と我等ともに全員《いきなり冥府送めいふおくり》ってことかよ!?)


『竜のあくび亭』に我等は戦慄した。



 第一門ネムスポルタの前にて。



『《ヒラケ ゴマ オープン ザ ゲート》』


 異世界人の言葉が放たれた。


 ブゥゥゥン……ガコ、ガコガココッ


 石のレンガがパズルのように動きだし、グルグルと廻りながら解除されていく。


 魔法陣が浮かび上がったカードキー。

 宿屋の第一門、扉のロックが解除された。



「うへぇ、すげえぇぇ、意味わからねぇ」


(なんなんだよっ……! この宿屋っ!)


「今のはいったい?」


「《異世界人》の呪文、または合言葉だ……私も詳しくは知らないが、『竜殺しの勇者』がよく使っていた言葉らしい」


「い、《異世界人の呪文》……!?」



「……へぇー」


 めったに聞かない言語。そして発音。



『竜のあくび亭』の不可思議な仕掛けに、我等も驚き警戒心を強めた。



 第一門を無事に突破する。


(―――敷地内に無事潜入。……全員なんとかまだ命はあるようだな)


 移動しながらあたりを見廻す。

 闇夜の中でどんな仕掛けが発動するかわからない。なんせここはあの《異世界人》がつくった屋敷だ。



 そして第二門セウィドポルタへと辿り着く。



『《タダイマ カエッテ キタヨ》』



 ガチャリッ


 ロックが解除された。

 我等全員がかたずをのんで緊張の中、息をのむ。


「開いたぞ、では中に入ろう」


 カラン♪


 ギィィィイイ


 屋敷の第二の扉が開いた。


「――――全員入れ、恐れるな。大丈夫だ」


 主様が一歩前へと踏みだし先導する。

 我等を勇気づけるように『竜のあくび亭』へとうながす。


(いやぁ〜今まで色々な場所へ足を踏み入れたが、《全員即冥府送りの仕掛け》なんて……さすがに怖いッスよ〜)


 我等は皆、覚悟を決めて足を踏み入れた。




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