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第2話 寝不足の騎士 ―テオドール―

サブタイトルは

『いきなりドラゴンハンバーグ♪』

よろしくおねがいいたします。



「なぁ〜に、やってんだかねぇ……」


 ビクッ


 とつぜん背後から声をかけられびっくりした。



「テオドールさん!?」


 振り返ると、もう1人の常連客が玄関の扉をみつめている。

 わたしはあわてて立ちあがった。


 い、いつのまに食堂に!?


 《テオドールさん》

 『竜のあくび亭』の宿泊客。

  騎士さんで、ちかくの見張り砦でおシゴトをしている。


 真紅しんく夜着よぎにしては、

 ド派手な衣装をまとい腹をかきながら、くあっとアクビする。



「ふぁ〜おはよーさん、ルーシアちゃん?」



 ねぼけた目であいさつされた。

 そういえば、テオドールさん昨日だいぶ遅くにかえってきたはず。

 ……まだ眠いのかな?



「お、おはようございますって、寝まきのままですか!?」


「ん〜、今日休みだからさぁ……飯食ったらもう1回寝たいしよぉー」



 テオドールさんはお仕事の時間が不規則。

 朝から深夜までシフト制。

 なのでいつも大変そうだし眠そうだ。



「今は、俺とルーシアちゃんだけだからいーじゃん?」


「ま、まぁいいですけど……」



 ジトっとした目をむける。


 その布地たっぷりの高そうな夜着のくせに。

 見えるトコ見えて、割れた腹筋とか目のやり場に……とても困るーっ。



「腹ぁへった〜! 昨日そのまま寝ちまって飯喰いそこねてさぁ……! なぁ、にく、 にくあるか!? がっつりたのむわ〜」


 

 朝から飢えたケモノのごとく叫びだす。

 とてもお腹が空いているらしい。


 定番メニューのハムだけでは足りないってことだよね?

 がっつり系? 冷凍保存で在庫があるのは……。


「ん〜『ドラゴンハンバーグ』はいかがですか?」


「あーっそれそれ! ちょうど食べたかったヤツー♪はい決定〜ソースはがっつり濃い目で、たっぷり頼むわっ」


「はーい♪ では、すこしお待ちくださーい」


「ういーっす」


 ささっとキッチンへとむかう。

 冷気を放つ魔石入りの箱。

 魔道具冷凍庫まどうぐれいとうこをあけた。


 バコッ ガサゴソッ


 えーっとたしかこのへんに、あっあったあった。

 何個かドラゴンハンバーグをぽぽいっととりだす。


 下ごしらえの時間はかかるけど。

 すぐ料理できるようにハンバーグにして保存して良かったなぁ。


 ドラゴンのお肉はステーキにしていただくのが主流。

 ニオイがすごーく、食べにくい。

 だがしかし、薬草でていねいに下処理しハンバーグにすると食べやすい。


 においもキツくないし。うん。

 あと、ドラゴン肉が大好きだからねー。



「先にシチューをおだししますね」


「ん〜! よろしくー」



 テオドールさんは手には机に飾られた白い花。

 顔にちかづけて香りと花びらを楽しんでいるみたいだ。


 軽いノリの変な言葉づかいなだけど……。

 見た目は美丈夫でカッコイイ騎士様だ。

 なので、むだに絵になってる。


「シチューのお肉はひかえめでいいかな?」


 根野菜はおおめにっと。

 すくいあげてお皿にトロリともりつけた。



「はーい、お待たせしました。熱いから気をつけてください」


「んーっサンキュー♪」



 アチアチのシチューと焼きたてパン。

 とりわけたサラダをならべていく。



「野菜もよろしくです」


「ういーす! 肉と一緒ならいくらでもドンとこい!」


「あははっ」



 大の野菜むりーだったテオドールさん。

 だがしかし、なぜか用意した料理はかならず残さず食べる。

 そしていつのまにか野菜が食べられるようになっていた。


 今では、休日に野菜農園へリヒトくんと3人で遊びに行く。

 洗いたての野菜を、そのままかぶりつくまで進化した。



 ◇



 きらん♪

 魔道具《冷凍解凍機》がなった。



「おおっとそろそろきたかっ?」


「うんうん、もうちょい待っててくださいね」


「ういーっす」


 あたためたドラゴンハンバーグを焼き目をつけるためにフライパンへと放り込む。


 ンンジュゥゥー♪ パチパチパチッ


 カリカリに焼き目をつけて、ささっと皿にうつす。

 湯気がすごーい。

 濃い目のデミグラスソースをたっぷりかけてチーズをそえた。



「お待たせしましたー♪」


「ウェーイ!」



 両手をあげて叫びガッツポーズをする。

 朝から大勝利のようだ。



「やっべぇうまそう♪ いただきまーす!」


 だいたんな動きで肉をきりわけ、いっきに放りこむ。

 

 スッ かちゃかちゃ ばぐっ


 ぐわっと目が見ひらく。



「〜〜〜!?」


「わわっ」


 ばぐばぐっ もぐもぐっ ばぐっばぐっ


 む、無言でどんどん食べてる。

 うわぁっ豪快ごうかいに果実水あおってるよ。


 ぐびぐびぐびっ タンッ


 くうぅ〜! っと、うなった。



「ナニコレ、ヤバいぞっドラゴンハンバーグうめえぇぇ!」


「あははっよかった〜♪」


 どうやら大変ご満足いただけたらしい。

 おいしそうに召し上がっている様子、うれしいなー♪



「なにかいつもより美味いんだが、どーなんだっ!?」


「あー、これドウゾさんが持ってきたチーズおかげかも〜? すごーくおいしよね♪」


「かなり美味すぎてマジびびったわ」


「うんうん、パンといただいてもおいしかったよー♪」


「ドラゴンハンバーグもめちゃうまいが、この組み合わせはそうとう……ヤバいなっ! おかわりはあるのか?」



 テオドールさんが、すごーく目をかがやかせてる。


 うーん……在庫はあるけれど、

 リヒトくんや他の方の分の取り置きだし。


「んー、今は在庫はないけど……ドウゾさんが必要なら特別に注文に対応するって」


「な、何だってー⁉」


「えっと『極上チーズ』は《レアミルク》で製造して《限定販売》で《入荷も少量》だから必要なら《早期注文》をお願いって言ってたけど……。注文する?」


 ドウゾさんの説明をそのまま。

 お花が大好きな牛さんからつくられたクリームチーズ。

 とってもおいしいし、貴重だ。


「マジかよ〜! だったら午後出かける時ついでに注文してくるわ!」



 ちゃりーん、毎度あり〜♪


 っと、なぜかふいに。

 ドウゾさんの人懐っこい笑顔とやさしい声がひびいた気がした。


 そうなのだ。

 商人ドウゾさんがオマケで持って来る食材、とてもおいしくて……。

 テオドールさんや他の方もこうやって食べたら即日注文へ行くのだ。


 そして何故か注文品は、この食堂へストックされていく。

 金額を払おうにも拒否される。いつでも食べたい時につくるお話で。

 


 ――実質ドウゾさん経由の特殊な食材は無料状態タダなのだ。



 用心深そうな、あのリヒトくんですらドウゾさんからの上納品。

 『月の苺』と『エルフ特選! 野菜配合小麦粉』におちた。

 定期購入契約を結び、入荷の際はこの食堂に運びこまれる。



「ん? でも何かひっかかる様な……?」


「おいしいから、問題ないっショ☆」


「なのかな? あっ、ここに届けてもらうのですか?」


「とーぜん! なにか作ってくれよなっ」



 親指をたててニカっと笑う。


『極上チーズ』を使って料理?

 うーん? くるりと思考をめぐらし……。



簡単シンプルにトマト料理はいかがですか」


「…………!」


「チーズをのせて焼いたり、あっトマトなら、生でそのままいただくのも良さそうですよねー♪」


 野菜はなるべくそのまま味わえる料理が好きー。

 とってもおいしいからイイよね♪



「……ルーシアちゃん」


「ん、どうかしましたか?」



 小さな声でなにかをごにょごにょ言っている。

 

 よくきこえないよ?

 ちかづいて体をかたむけた。


 ぐわっ


 なっこれはいったい……!?

 テオドールさんに肩を抱きよせられている?


「ひゃあっ」


 ちゅっ♪


 やさしく手をとられ、指先にかるくキスされた。


「……っ!?」


「ありがとな? 楽しみにしてるぜ」


 耳もとで美声の低音ボイスがふかーくささやく。

 いっきに真っ赤になった。


「なっ……! なっ……!?」


「はははっルーシアちゃんは可愛いな♪」


 わぁぁっなに、この人っ

 なななっなんてことをするのですかーっ

 は、はずかしいぃぃよー!

 


「テオドールさぁぁん へ、変なことしないでくださいっ」


「ごめんごめん、うれしくてついな?」



 ついやったんだ、とかじゃないですよ。

 くううっ〜、余裕たっぷりにふふん♪ と笑ってるー。

 


 笑うテオドールさんをみてわかった。

 トマトがやっぱり大好きになってるんだ。

 

 野菜むりーがながかったせいと、1番にがてだったトマト。

 大好きなのにぜったいに認めないんだよね。


 トマトをオススメしたから仕返ししたのかな?

 ひ、ひどいひどすぎるよっ


 ううう、こうなったらテオドールさんの食事。

 しばらく野菜多めにするー。



「あ、すまん。食事のとちゅうだったんじゃないか?」


 テオドールさんが気づいて声をあげた。


「朝食、いっしょに食べようぜ?」


「うー? うーん……うん!」


 そーだった。

 はんぶん食べかけだった朝ごはん〜たべよー。

 ちょっと冷めていてもおいしいなー♪

 

 ドラゴンハンバーグもすかさず追加しよーっと。



『やっぱりドラゴン肉は最高〜☆』


「わははっルーシアちゃんがっつきすぎぃ」



 その後、テオドールさんはもう一眠りした。

 昼過ぎには商会へとすっ飛んでいった。


   

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