第29話 裏庭のハーブ園 sideテオドール③
「……んぁ?」
ぱちりっ
俺は目が覚めた。
うーっもう朝か? まだ寝たりねー。
昨日は疲れた。まだねみぃー。
パーティーに深夜の恋バナ。
幸いに今日は昼勤、もうちょい寝るぞ。
抱き枕にキスしながら顔を埋めた。
きゅうううぅぅ〜んっ
そーいや昨日パーティーの令嬢方……。
美しいお姉様方や可愛い娘多かったな。
いろいろ食いそこねた。
まさかあの方が、突然会場に来るとは……!
二度寝の為に頑張って目を閉じる。
って、いっこうに眠気がこねぇぇぇ!
ガバッ
「しゃーねぇ、一旦起きるかぁ」
名残り惜しげにベッドから立ち上がる。
ガサガサッ
ん?
ガコッ
2階宿泊部屋の窓を開けると、
裏庭で魔法具シャワーを手にしてルーシア嬢が作業をしている。
「よーし!いってみよー♪」
ぱんぱんぱぱん☆
「らんらんるーららら♪」
手拍子をして踊りながら歌ってる。
植物に霧状の雫が降りそそぐ。
キラキラキラキラ〜♪
「……。」
精霊や妖精たちと歌い踊る。小鳥も集まり大合唱。
見た目だけは天使が確かにそこにいた。
キラキラキラキラ〜♪
光の粒子と歌声で、体の疲労度が回復した。
(ホント、精霊とか妖精の力すげぇなー……職場にも遊びに来てくんねーかな?)
『竜のあくび亭』ならではの宿屋の特典。
しみじみため息がでた。
「みんなー!ありがとう〜♪」
チュンッバサササッ ふわふわ〜っ
鳥や妖精たちがいっせいに飛び立った。
(ん? おわったのか?)
ルーシア嬢がお礼の挨拶をして、せっせと薬草摘みあげる。
「ふふふっ」
一生懸命に作業する姿を見て、思わず笑った。
「テオドールさん…!?」
驚くルーシア嬢に、2階の窓から手をふる。
「い、いつからそこに!?」
ガシッと窓枠を掴み身を乗りだす。
「よっと」
「ひぇ!」
ドサッ
裏庭へ着地する。
ルーシア嬢がびっくりして、目を丸くしてる。可愛いな。
「あわわっ」
にやっと笑いかけた。
「『よーし!いってみよー♪』の掛け声あたりかな?」
「うわああぁ」
(ほーん? ぷるぷる震えてやがるぜ。
日課のくせに、やっぱり見られたら恥ずかしいんだなーアレ)
「おはよーさん?ルーシアちゃん」
「帰ってたんですね」
「ああ、だいぶ遅くだけどな」
「……えっと、あの!リヒトくん起きてた……?」
(おっとぉ、リヒトを心配してる?)
「あー、あいつ? 食堂で魔導書抱えて突っ伏して寝てたな! わははっ」
「うううっやっぱり!!」
(先に寝かしつけられたのに心配してるあたり、俺のいなかった間に変なコトはされてねーみたいだな?)
リヒトが無体をはたらくワケねーとは思うが、一応確認っと。
こころの中でホッとため息をつく。
「安心しなよ? 戸締まりはちゃんとしてたぜ。まぁ、面倒くさいんで、そのまま抱えて部屋のベッドに放り込んだがな」
ウェーイ! っとドヤ顔で片手を上げる。
(勝利宣言! あの方の為にルーシア嬢の身の安全は大事だからなぁ
……ただし恋愛は自由! 俺は勝手にリヒトの応援組だかんなっ)
「まー、ちょい頑張り過ぎだが背伸びしたいお年頃ってね〜♪許してやりなよルーシアちゃん?」
「……? よくわかりませんが……リヒトくんの事、ありがとうございました」
(おー、おー、可愛い可愛い〜♪ 保護者気取りで頭をさげてお礼をしてる)
「くくくっ」
笑いをこらえてると、ルーシア嬢が不思議そうに目をむけた。
星空の瞳と見つめあう。――金色の髪と華奢な体付き、色白な肌と……思わず抱きしめたくなるような、天使や妖精の類の少女がそこにいた。
うーん、わるかねぇケド。それはちと違うんだよなぁ。
「お礼はがっつり肉料理でいいぜ♪」
天使が呆れた顔でジトっとした目をむける。
いつものルーシア嬢がそこにいた。
俺は笑って、その態度に満足した。




