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第1話 聖職者の朝食 ―リヒト―



「朝ごはんできたよ~♪」



 キッチンから移動して宿泊部屋に声をかけた。


 お皿やふきんを用意していると、

 2階へつながる階段から、足音がきこえてくる。


 トンッ トンッ トンッ


 髪をゆらして青年が降りてきた。

 ローブをまとい、杖と束ねた本を抱えている。



「おはようございます。ルーシアさん」


「リヒトくん、おはよー♪」



 笑顔であいさつをかわす。



 《リヒトくん》

 この『竜のあくび亭』の宿泊客。

 ちかくの図書館を利用している聖職者だ。


 天窓からの光……。

 リヒトくんはまるで天使みたい。


 やさしくほほ笑む姿が、礼拝堂の彫像にみえた。



「野菜スムージーとサラダでよろしいですか?」


「はい、おねがいします」



 いつもの定番メニューを確認して、リヒトくんがうなずいた。


 ささっとサラダを取り分ける。

 サラダはハーブや色とりどりの野菜中心に。

 特製スムージーはグリーン系をメインに各種野菜を混ぜる。


 《朝露(あさつゆ)(しずく)》と《大樹の葉》にリンゴを加えると甘味がつけてあって飲みやすい。



 リヒトくんが、すこし困ったように笑いペコリとする。


「こういった食事は簡単そうに見えて手間で……いつも助かります」


「いえいえ〜、魔道具で作ってるからそんなに大変じゃないよ」


 ――魔法具の箱に放り込んだら。はい、完成できあがり♪


「どうぞ、お気軽にお召し上がり下さいませ?」


 ととん♪


 スカートで礼をとり、ちょこんと首をかしげた。

 おおげさな仕草にリヒトくんがふきだして笑った。



「あははっルーシアさん。ふふっ、わかりました」



 2人でくすくすと笑いあった。



 ◇



 リヒトくんが、食事に祈りと感謝の言葉を捧げる。

 さっそく野菜スムージーをゆっくりとのみ、サラダを食べはじめた。

 フォークで丁寧にパリッとした葉野菜をくちにする。


「はぁ、おいしい」


 うっとりと吐息をもらすようにつぶやいた。


 朝食は野菜と果物だけのリヒトくん。

 穀物、肉類、乳製品の類は控えてる。


 きゅるきゅるる


 うわぁぁっ

 おいしいそうにお召しあがりな様子を見たらつい。

 今日、朝ごはん食べそこねちゃったんだよね。



「ルーシアさんもいかがですか」


「え?」


「朝食いっしょに食べましょう?」


「う、うん、ありがとう〜♪」



 ちょっと迷ったけど……。

 声をかけてくれたので、ここはありがたくご厚意に甘えよう。

 ささっと料理を皿によそって、テーブルの席につく。



「いっただきま〜す♪」


 手をあわせて感謝の言葉と祈りを捧げた。



「あっこれドウゾさんからオマケでいただいたの」


 きらきらりん♪


 チーズをとりだしてみせる。


 『食材専門卸屋のドウゾさん』

 この宿屋に商品をとどけてくれる商人さんだ。


 いつものお礼にと《極上チーズ》をもらった。


「お花が大好きな牛さんから作ったチーズみたいー?」


「素敵なモノをいただいたのですね。あの方のオススメはすごくおいしいですよね」


「ねー♪」



 2人で顔をあわせて笑顔になる。



「ではでは、お先にいただいちゃいますね」


「はい、ルーシアさん」



 ホワホワホワ〜♪


 焼きたてパンをちぎる。


 わぁあ、おいしそう〜。

 パンの切れ目にチーズをはさんでーっと。

 ゆっくりドロリと溶けている〜。

 あああ、たまらない。


 ではでは、さっそくいってみましょー♪



「あーん、もぐもぐ♪」


 やわらかなパンとチーズでしあわせになった。


「んー、んんんーっ」


 焼きたてパン最高っ 極上チーズもこんなにっ

 な、なにこれ〜っ

 かめばかむほど、もぐもぐっおいしい。


 花がいっぱい楽しそうに咲いてほわほわ。

 ――あああ、ここは幸せな花畑……。



「はあぁ〜♪」


 うっとりと、感動のため息をもらす。

 リヒトくんがくすくすと笑った。



「あはは、それほどですか?」


「うんっだってこれおいしすぎるよぉ」



 涙目でうるうるしながら言葉をかえす。


 それにしても、なんておいしさなのー。

 これは……さらなる高みをめざすしかない。


 ガシュッ ガシュッ ガシュッ


 幸せに包まれながらシチューをかきこむ。

 とろっとろで相性はばつぐんだ。



「ふふふっいつも幸せそうに召しあがってますね」


「もぐもぐもぐ(だって、おいしいからね。しょうがない)」


「あっ、ルーシアさん」


「ん?」



 ガタッ


 立ちあがって、ふわりと(ほほ)にふれた。



「……っ!?」



 サラリとした髪がゆれて、瞳と目があう。

 あまりにもちかすぎる距離。

 一瞬、ドキリとした。


 みつめあったままリヒトくんがそのまま席へつく。



 ななな、なに、なに、なにこれ?

 い、いったいなにがっ。


「すみません、ついてました」


 ピッと、ゆびさきをみせた。


「……っ!?」


 あっ、シチュー? 

 ほっぺたについていたんだー。

 なるほど〜。


 って、いやああぁぁっ

 わたしっどれだけがっついて食べてたのー?


 でも、なんでいきなりほっぺをぬぐって?

 リヒトくんやさしいから? 親切ごていねいにっ?



「あ、ありがとう、リヒトくん?」



 つ、つぎからはぜひ言葉でおねがいしますー。

 とても、かなーり恥ずかしいですからーっ


 まっかになってぷるぷるする。



「いえいえ、ごちそうさまでした」



 ガタッ


 たちあがって食器をテキパキと片付ける。

 まとまった本と杖をささっと担いだ。



 ちいさく笑ったリヒトくんが、扉へむかってふりかえる。



「では、行ってきますね」


「わわっはーい、気をつけてね〜♪」



 ぶんぶんと手をふって見送る。

 リヒトくんは、ささっと行ってしまった。


 バタンッ 

 扉が閉じられた。


「……。」


 うううっ

 なんだか朝からすごくつかれた気がする。



「さぁてと、朝ごはん食べよ〜っと」


 くるりとふりかえる。



「あっ」


 頬にふれられて、みつめあって?

 うわぁぁぁっ なにそれっ恥ずかしいぃぃ。


 ガバッ


 真っ赤になってそのままうずくまった。


 

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