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第21話 すべてが集う日③ 王子様の来訪



「「「!?」」」


 5人で朝食をとっていた中に、

 絵本から飛びたしたかのような王子様が訪れた。


 なっ……!

 いきなりレオンハルトっ!?

 全員が絵本の王子様を見たままかたまってる。



「どういう状況だ? テオドール説明しろ!」



 レオンハルトが咆えるように叫んだ。


 パンとハムを頬張ったまま固まっていた騎士テオドールさん。

 ドカッと瞬時に立ち上がった。


 無理やりハムやらパンをもぐもぐ飲み込みレオンハルトに一礼する。


「あー? えっと『竜のあくび亭』の宿泊客、皆で朝食をとっていたっところです?」


「……ならば、問題無いな」


「はい、まったく問題ありませんっ」



 最後に小さく「んぐっ」っと呻いた。

 あわてて食べるのはとても良くない。

 だ、大丈夫なのかな……?



 ハッとして2人を見る。


「テオドールさんとレオンハルト様って、知り合いだったんですか!?」


 様付けで呼ばれ、

 レオンハルトが絵本の王子様らしからぬ顔で眉をしかめにらまれる。

 いやっ、さすがに人前ですから……。



 テオドールさんがあちゃ〜とした顔をしながら、

 他の人にも向けて説明する。



「この御方は、職場の……上司ッス」


「わぁ〜、そうだったんですね」



 レオンハルトとテオドールさんが知り合いだったなんて!

 世間は以外とせまいんだなぁ。


 ん?

 

 上司と部下ってことは……2人は同じ職場?

 身分とかそんなのでテオドールさんが部下になっちゃってるのかな?


 ……んんん?

 かなーり気になるけど、そのあたりは仕事関係だから

 質問は控えないとかな?


「あのー、すみません」


 突然の来客や上司やら驚く中。

 やりとりを見ていたユリウスがやや遠慮がちに声をかけた。



「とりあえず立ち話もなんですし、どうぞお席へ。よろしければ、朝食もご一緒にいかがでしょうか?」


「いいだろう」



 離れた位置にいる商人ヴォルフの前へと席についた。



 ◇


 とりあえず受け取った花束を花びんに〜。

 

 ささっと作業にとりかかると、

 冒険者ユリウスがお皿の準備やケーキを冷凍庫に入れている。


 今日はキッチンはまかせてと言われたけど、

 あいかわらずすごく手際がいい。ホント助かります。



「朝から突然の訪問、すまなかった……どうやら驚かせてしまったようだな。この時間は宿泊客は不在だと思っていたのだが……皆の者に迷惑をかけたようだ」


「いや〜、いつもだったら居ないんっスけどねぇ〜? 今日はたまたまというか皆集合で、初対面なワケでして……ッス」



 テオドールさんって職場の上司との会話大丈夫なんだろうか……?

 ちょっと不安になる。


「さぁ、ルーシアも席について」


「えっ?」


 ユリウスが笑顔で声をかける。


 わたしもそのまま同席?

 朝食をいっしょにってことだよね。


「大丈夫だよ? ほらっ皆さんと朝食をいただこう♪」


「えええっ」


 うーん、キッチンで作業したいのだけれど。

 あっと気がつくとそれぞれが同席するようにうなずいてる。


 こ、これは……ふたたび雰囲気的に断れない感じに……。

 おとなしく席につこう。


 皆がおのおの食事を再開した。

 


 ◇



 運ばれた食事に祈りを捧げ、

 レオンハルトがもくもくと食べはじめた。


 その様子をみてホッとする。

 

 良かったちゃんと食べてる〜。

 では、わたしもさっそく。

 ちぎったパンをもぐもぐしながらスープを飲む。おいしいなぁ♪



「あのー、もし良かったら簡単に自己紹介をしませんか?」


 食事の中、ユリウスが提案した。



「おおおっユリウス、ナイス! ソレだよソレ〜! 俺もちょいと混乱しててよー? 状況を整理把握したいっ」


 テオドールさんが手を叩いて賛同する。



「僕も、初対面の方が多いので……お願いします」


 リヒトくんも控えめにうなずく。

 テオドールさん以外は初対面だし……。

 まわりは皆年上の方々ばかりで緊張しているのかもしれない。


「フンッ良いだろう」


「許す」


 ヴォルフとレオンハルトがナイフとフォークを片手に同意する。


 ユリウスが提案し、皆さま方がうなずいた。



「では、俺からですね。ユリウスです。冒険者やってます。月に1〜3週間くらいはダンジョンに出かけてます。どうぞよろしくお願いします」


 にっこり笑顔でペコリと会釈する。



「冒険者で月に数週間……ダンジョンですか?」


「うん、そうだよー」


「なるほど、な。たしかに遭遇しないワケだ」



 商人ヴォルフが納得したように片手をふった。


 いやいや、初宿泊者が言っていい台詞じゃないからねーっ。

 あきれた目でみつつ、心で突っ込みをいれとく。


「ああ、それと。ルーシアとは家族みたいなもので、ここ『竜のあくび亭』で一時酒場のお手伝いしていました。何か困ったことがあれば気軽に言って下さい」



 やだっユリウス家族って……!

 その言葉にじぃ〜んと感動する。うううっ泣きそう。



 では、次は僕からとリヒトくんが席をたつ。

 

「リヒト、聖職者で学生です。図書館で勉強してます。どうぞお見知りおきを。よろしくおねがいします」


 天使の笑顔で丁寧にペコリとおじぎをした。



「王立図書館って、ここから随分遠くないですか?」


 ユリウスが不思議そうに首をかしげると、リヒトくんが控えめに言葉を補足する。


「いえ、この近くの博物館に隣接してるちいさな図書館で……学生の身分ですし」


「あー、王立図書館は入館料がなぁ〜」


 テオドールさんが声をあげた。


「そうなんです! ここだと近いし宿泊でも安くすむんです……賃貸だと、食事関係もすこし面倒で……この宿だと軽食だとすぐにとれますし」


 リヒトくん、しっかりしてるなぁ。

 感心してうんうん、うなずく。


 あと、リヒトくんは後見人の指示で宿の学割も適用している。

 私はまだ帳簿とかよくわからないので詳しくないけど。



 次は俺だな! っとテオドールさんが笑う。


「騎士テオドールだ。ちかくの砦……まぁ警備施設で働いてる〜。夜勤があったりで帰るのが面倒だから宿泊中。よろしくなー♪」


 笑ってちょっとした騎士の礼をとる。



「夜勤大変ですね。無理しないよう気をつけてくださいね」


「ユリウスも冒険者なら野宿とか多いだろー? おたがい無理せずにやってこうぜ?」


「はい、ありがとうございます」


 テオドールさんとユリウスが笑ってうなずきあってる。

 非常食と夜勤の雑談でだいぶうちとけたみたいだ。



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