表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

22/105

第20話 すべてが集う日② 宿泊客たちの朝食


 5人とも席に着く。

 料理が多いのでいつもの場所にテーブルをあわせた。


 私の隣は聖職者リヒトくん、斜めに騎士テオドールさん、向かい側に冒険者ユリウス、席をあけて離れた窓がわに商人ヴォルフだ。


 私とユリウスは、すぐに対応するために通路側だ。


 テーブルを囲んで皆さんが集まった。

 長期宿泊客なのに、顔をあわせるコトがなかったから。

 とてもうれしい。


 うぐぐっ寝坊さえしていなければっ。



「あのっ皆さんすみません。わたし寝過ごしてしまって……しかも朝食までご用意いただいて……! 何とお詫びしたらいいか……ホントに申し訳ないです……!」

  

 朝の支度に収穫、調理、配膳。

 そしてなぜ、宿屋の主人が朝食に同席しているのか。

 心の突っ込みがやまないよ〜。


「大丈夫ですよ、気になさらないでください」


「まー、ルーシアちゃん、しゃーないしゃーない。そちらのヴォルフさん? に付きあわされたらしいし、疲れてたんだろ?」


 リヒトくんとテオドールさんがすぐにフォローしてくれた。


「いえ、ですが……」


 それとコレとは別ですよ。

 まったく自己管理出来てないし、宿屋の主人なのに朝寝坊。

 しかも不運? な事に、皆さんが朝イチいっせいに宿に帰宅なんて〜。


 どよどよどよよ〜っと落ち込む。



「――そうだ、私のせいだ」


「ヴォルフ?」


「勝手なふるまいで皆のものに迷惑をかけた。申し訳ない……ルーシアも無理をさせて、すまなかったな」


 ヴォルフが素直に謝ったので、ちょっとびっくりする。

 一応反省はしているの?



 思わず前を向いたら、ユリウスがやさしく声をかけた。


「まぁ、この宿屋。今だに従業員がゼロだからね……。開店からずっと休み無しだし、しょうがないよ」


「うーん、だけどっ」


「俺がいる日くらいは休んでほしいな。これからは手伝うからね。倒れられるほうが心配。今回は今までの疲労とか全員そろってちょっと無理が来たかもね?」


「ううう」


 ああ、いろいろと迷惑かけたり心配させていたんだなぁ。

 もっとしっかりしないとだ。


 これ以上落ち込んでても仕方ないし。

 せっかく気遣いでフォローもいただいている。

 ここはありがたく受け取ろう。


「皆さん、ありがとうございます。次からちゃんと気をつけます」


 えへへと笑って、ペコリと頭を下げた。


 皆さま方が、ちょっとまだ何か言いたげそうな感じだったけれど、

 それぞれが仕方なさそうに笑った。


 気持ちを切りかえて、遅めの朝ごはんを食べることになった。



 ◇



「いただきま〜す♪」


 んくんくんく〜っ


 ふぅ〜、朝の1杯は水からだよね。

 そのままグラスにそれぞれの飲み物をすこしだけ注いで〜っと、とりあえず一口づつ飲んでおこう……。くぅぅ〜! レモネードもナッツミルクおいしいなぁ……。


「ん、この珈琲すごくおいしいです。何か特別な感じ何なのですか?」


「いや、作り方は簡単だ。知りたければ私かルーシアが教えるぞ?」


 聖職者リヒトに、商人ヴォルフがこたえてる。

 作り方や香辛料について話し、興味津々でうなずく。


 わたしも話をききながら珈琲を口にする。

 朝の眠気覚ましにはちょうど良いな。

 あっナッツミルクでカフェオレも良いかも? 今度試してみよー。



「肉〜っマジこのハムうまいなぁ! 仕事中にもくいてぇぇ〜!」


「ですね〜。俺も冒険用にお願いしようかな?……非常食ツラくて」


「ホント、それな」


 騎士テオドールさんと冒険者ユリウス。


 2人でハムを噛みしめながら、非常食について語り合っている。火で炙るとか、水でもどすコツとか、日持ちとか、魔法が施されたモノとか、どこの店が良いとか、などなど泣きまねをしながらたがいに話してる。非常食の話は尽きない。


 話をしながらテオドールさんがレモネードを飲んで大喜びした。

 果実水が大好きなユリウスもうれしそう。


 4人で楽しそうに会話してる。

 1つ宿の下、初対面同士なのにわいわい楽しそうに雑談してる。


 わぁー、何だか楽しいなぁ♪


 とりあえずホッとして、パリパリサラダに舌打ちしつつ野菜スープを口にする


「んんんー!!?」


 透明なスープが口の中で広がって、野菜がほろほろなのに絶妙な食感があってとてもおいしい。


 ああ〜! 幸せだねぇ……。

 顔をあげうっとりとする。


「うん、うん。いつものルーシアだ」


 ユリウスが笑顔でうなずいてる。


「毎日こんな感じなんですよ? 幸せそうで、食事がいつもよりおいしく感じます」


「うんうん、だよね〜」


 リヒトくんとユリウスが笑ってうなずいてる。


「毎回こうなのか……?」


「ッスね〜、こりゃ完全に食い気だな」


 若干引いてるヴォルフと、呆れながら笑うテオドールさんが額に手をあてながらヤレヤレと頭をふった。



 ほわほわ朝食を食べて幸せに包まれていると、

 突然『竜のあくび亭』の扉をたたく音がした。


 トンッ トンッ トンッ


 カラン♪


 ん?


 ギィィィィィイ。


 光があふれだし扉が開かれた。



「ルーシア、先日はすまなかった! 詫びのお菓子をたくさん持って来たぞ!」


 朝食の最中さなか

 薔薇の花束を抱えた王子様が絵本ではなく扉から飛びだした。


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
 読んでいただきありがとうございました。 script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ