第20話 すべてが集う日② 宿泊客たちの朝食
5人とも席に着く。
料理が多いのでいつもの場所にテーブルをあわせた。
私の隣は聖職者リヒトくん、斜めに騎士テオドールさん、向かい側に冒険者ユリウス、席をあけて離れた窓がわに商人ヴォルフだ。
私とユリウスは、すぐに対応するために通路側だ。
テーブルを囲んで皆さんが集まった。
長期宿泊客なのに、顔をあわせるコトがなかったから。
とてもうれしい。
うぐぐっ寝坊さえしていなければっ。
「あのっ皆さんすみません。わたし寝過ごしてしまって……しかも朝食までご用意いただいて……! 何とお詫びしたらいいか……ホントに申し訳ないです……!」
朝の支度に収穫、調理、配膳。
そしてなぜ、宿屋の主人が朝食に同席しているのか。
心の突っ込みがやまないよ〜。
「大丈夫ですよ、気になさらないでください」
「まー、ルーシアちゃん、しゃーないしゃーない。そちらのヴォルフさん? に付きあわされたらしいし、疲れてたんだろ?」
リヒトくんとテオドールさんがすぐにフォローしてくれた。
「いえ、ですが……」
それとコレとは別ですよ。
まったく自己管理出来てないし、宿屋の主人なのに朝寝坊。
しかも不運? な事に、皆さんが朝イチいっせいに宿に帰宅なんて〜。
どよどよどよよ〜っと落ち込む。
「――そうだ、私のせいだ」
「ヴォルフ?」
「勝手なふるまいで皆のものに迷惑をかけた。申し訳ない……ルーシアも無理をさせて、すまなかったな」
ヴォルフが素直に謝ったので、ちょっとびっくりする。
一応反省はしているの?
思わず前を向いたら、ユリウスがやさしく声をかけた。
「まぁ、この宿屋。今だに従業員がゼロだからね……。開店からずっと休み無しだし、しょうがないよ」
「うーん、だけどっ」
「俺がいる日くらいは休んでほしいな。これからは手伝うからね。倒れられるほうが心配。今回は今までの疲労とか全員そろってちょっと無理が来たかもね?」
「ううう」
ああ、いろいろと迷惑かけたり心配させていたんだなぁ。
もっとしっかりしないとだ。
これ以上落ち込んでても仕方ないし。
せっかく気遣いでフォローもいただいている。
ここはありがたく受け取ろう。
「皆さん、ありがとうございます。次からちゃんと気をつけます」
えへへと笑って、ペコリと頭を下げた。
皆さま方が、ちょっとまだ何か言いたげそうな感じだったけれど、
それぞれが仕方なさそうに笑った。
気持ちを切りかえて、遅めの朝ごはんを食べることになった。
◇
「いただきま〜す♪」
んくんくんく〜っ
ふぅ〜、朝の1杯は水からだよね。
そのままグラスにそれぞれの飲み物をすこしだけ注いで〜っと、とりあえず一口づつ飲んでおこう……。くぅぅ〜! レモネードもナッツミルクおいしいなぁ……。
「ん、この珈琲すごくおいしいです。何か特別な感じ何なのですか?」
「いや、作り方は簡単だ。知りたければ私かルーシアが教えるぞ?」
聖職者リヒトに、商人ヴォルフがこたえてる。
作り方や香辛料について話し、興味津々でうなずく。
わたしも話をききながら珈琲を口にする。
朝の眠気覚ましにはちょうど良いな。
あっナッツミルクでカフェオレも良いかも? 今度試してみよー。
「肉〜っマジこのハムうまいなぁ! 仕事中にもくいてぇぇ〜!」
「ですね〜。俺も冒険用にお願いしようかな?……非常食ツラくて」
「ホント、それな」
騎士テオドールさんと冒険者ユリウス。
2人でハムを噛みしめながら、非常食について語り合っている。火で炙るとか、水でもどすコツとか、日持ちとか、魔法が施されたモノとか、どこの店が良いとか、などなど泣きまねをしながらたがいに話してる。非常食の話は尽きない。
話をしながらテオドールさんがレモネードを飲んで大喜びした。
果実水が大好きなユリウスもうれしそう。
4人で楽しそうに会話してる。
1つ宿の下、初対面同士なのにわいわい楽しそうに雑談してる。
わぁー、何だか楽しいなぁ♪
とりあえずホッとして、パリパリサラダに舌打ちしつつ野菜スープを口にする
「んんんー!!?」
透明なスープが口の中で広がって、野菜がほろほろなのに絶妙な食感があってとてもおいしい。
ああ〜! 幸せだねぇ……。
顔をあげうっとりとする。
「うん、うん。いつものルーシアだ」
ユリウスが笑顔でうなずいてる。
「毎日こんな感じなんですよ? 幸せそうで、食事がいつもよりおいしく感じます」
「うんうん、だよね〜」
リヒトくんとユリウスが笑ってうなずいてる。
「毎回こうなのか……?」
「ッスね〜、こりゃ完全に食い気だな」
若干引いてるヴォルフと、呆れながら笑うテオドールさんが額に手をあてながらヤレヤレと頭をふった。
ほわほわ朝食を食べて幸せに包まれていると、
突然『竜のあくび亭』の扉をたたく音がした。
トンッ トンッ トンッ
カラン♪
ん?
ギィィィィィイ。
光があふれだし扉が開かれた。
「ルーシア、先日はすまなかった! 詫びのお菓子をたくさん持って来たぞ!」
朝食の最中、
薔薇の花束を抱えた王子様が絵本ではなく扉から飛びだした。