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第9話 竜殺しの弟子③ おまじない



 夕暮れからちいさく星が光るまだ明るめの夜空の下。

 『竜のあくび亭』――地下倉庫の前につく。



『《ソレデハ イッテ ミマショウ トビラ オープン》』


 カードキーを扉の鍵の部分にペタっとつける。


 ――――瞬時に浮かびあがる魔法陣。

 術式が線を描きながら展開されまわりはじめた。


 ブゥゥゥン……ガコ、ガコガココッ


 石のレンガがパズルのように動きだし

 グルグルまわりながら解除されていく。



「ねぇ、その呪文ってさ毎回言わないとなのかな?」


 前々から気になってたんだよねー?

 なにか言葉よりもカードキーだけに反応しているような?


「んー? どうかなー? ジイさんが毎回言っていたから一応ね」


「そっかー。そのまま開きそうだけど……

 あ、でも言わないと……しっくりこないね」


「うんうん」


 ユリウスが笑ってうなずいた。




 扉のむこうは完全に真っ暗で暗い。



「さぁ、行こう」


 2人で足を踏み入れる


 ぱあああぁぁぁぁ


 足元に魔法陣が浮かびあがる。

 廊下の向こうへといっせいに明かりが灯った。



「あいかわらず、すごいなぁ〜」


「だね〜」


「何層の倉庫に入れるの?」


「今回は第3層と5層かな?」



 宿屋の倉庫は地下になっていて、いろいろと収納できてとても便利。


 おじいちゃんの保管していたモノは国や施設や各団体、

 博物館に寄附したり譲っちゃったけど、まだまだ手付かずの物がある。

 わたしは詳しくないから放置しちゃったまんまだ。



 ひさびさの倉庫、移動しながらユリウスを横目でみる。


 幼なじみのユリウスは冒険者になった。

 そして『竜のあくび亭』の長期宿泊客になった。

 倉庫代として宿屋の部屋をおさえている。


 ホントは地下倉庫の利用だけでいいのに。


 きっとおじいちゃんの時にこの宿屋が

 万年閑古鳥に愛されすぎて大合唱してたから、

 心配してくれてるんだと思う。



 2人でわいわい話しながら武器や防具を放り込んだ。


 

 ◇



 ユリウスを月明かりの中で見送る。



「明後日には、また来るから」


「うん、わかったー」



 どうやら宿屋の近くに迎えの馬車が来ているみたい。


 城下街のお屋敷へ。ユリウスはお家に帰る。


 それなりの貴族で高い身分とか聞いたことあるけど……。


 幼い頃、遠縁の親戚に引き取られるまで3年間。

 限定的にいっしょに暮らした家族。

 今は元家族って言えばいいのかな?

 

 幼なじみであってる?


 どう言ったらいいかわからないけれど……、

 今でもこうして気にかけてくれてうれしい。



「じゃあ、気をつけてね。ユリウス」


「うん、ルーシアも」



 ふいにのびてきた手。そっと頰を包みこむ。

 ――ユリウスがそのまま顔を近づけた。



「わっダメ」


「えー」


「おまじないは、さっきしてもらったから」



 しどろもどろと目をそむけて言った。

 

 なんでわりと自然にやろうとするかな?

 一応恥ずかしいんだけど。

 ……それに気のせいかもしれないけど手慣れてませんか?



「ふーん、じゃあルーシアおねがい」


「えっ」


「ルーシアも俺におまじない?」



 ユリウスがにっこりほほ笑む。


 わたしからユリウスに?


 うーん?

 まぁそれなら……ぜんぜん大丈夫かな?



「しょうがないなぁ」


 ちょっと前屈みになったユリウスが目を閉じた。

 おでこにそっと顔をよせる。


 ちゅっ


 おじいちゃん、神さま。ユリウスを見守ってください。

 いっぱい良いことがありますように。


 祝福と幸運の願いを込めてキスをした。



 ユリウスが、ゆっくりと瞳を開ける。

 目をほそめてうれしそうに笑った。



「ルーシア、今日はありがとう」


「こちらこそだよ〜いつもありがとうね」


「ホントにむりだけはしないでね」


「あっそれ〜わたしの台詞せりふだよーっ

 迷宮ダンジョンの方がとってもあぶないのにー」


「はははっそうだね」



 2人であははっと笑った。



「じゃあ、いってきます」


「いってらっしゃい、気をつけてねー♪」



 月明かりの中、笑顔で見送りながら手をふった。




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