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第8話 竜殺しの弟子② 檸檬とはちみつ



 大樹の近く中庭でわたしは声をあげた。


 

「わぁぁ、こんなにすごいね〜♪」


 いろいろなアイテムをのぞきこむ。

 武器や防具に道具、たくさんの戦利品だ。


 

 ちょっとだけ市場のお祭り気分〜♪

 なにこれ、不思議だなぁ。わくわくする。


「なにか気になるのってあるかな? 一緒にならさわったりしても大丈夫だけど……」


 え? ホントに?

 って声をあげそうになって口をつぐんだ。


 いつも武器とかアイテムをさわったりして。

 幼い頃から大怪我ばっかりしてたんだよね。


 ダメ〜! とか言われたら。

 余計にさわりたくなっちゃうといいますか……。



『わーい♪とげとげの黒い肩ぱっとー♪』


 ごろんっ ブシュウウウゥゥ


『うぎゃああああぁぁっ』と泣き叫びながら

 おじいちゃんがひっしに手当てしてくれた。


 子どもの頃、やっちゃったなぁー。

 ごめんなさいっ! 今では大変に反省していますぅぅっ


「ううん! 見てるだけで充分楽しいからいいの」


「えっ……?」


「あっでも、この武器ゲットにいたるまでの冒険譚を聞きたいなー♪」


 気をとりなおしてあかるく返す。


 ユリウスがすこし驚いたあと、そのまま笑顔になった。


 むう。断ったからー、

 やっぱりちょっとびっくりしたんだね。

 まぁ、今までのやらかした前例があったから……。


 でも、人は成長するのですよー?



「あははっいいよ〜! えっと何から話そうかな」


「うんうん♪」


 ハッとして気がつく。


 あれ?

 今ここって武器や防具いろいろなモノがいっぱいだ……。

 まさに宝の山状態。しかも、なんか高そうなモノばかりだし。

 だ、大丈夫なのかなー?


 キョロキョロとあたりを見回す。


 庭は広く、木々が茂っていて

 外部からは見えにくい構造になっている。


 だがしかし、油断できない。



「大丈夫、今ここには2人だけ」


「ホント?」


「うん、誰もいないよ?」



 ふりかえると赤くそまる夕焼けの中。

 いつの間にか背後にいた、ユリウスがわたしを見つめてる。

 

 沈む夕日を背にして、ちょっと顔がみえにくい。


 んん? 


 ユリウスがいつもとちがって……なにかおかしい。

 これってもしかして……?



「あれ……? ユリウス……背伸びた?」



 さっきのタオルで髪を拭いたときの違和感。


 ――幼い頃は、ユリウスがわたしを見上げていた。

 すこし前は、同じくらいの目線でいた。

 今は……わたしが見上げているような……気がした。


「んー? そうかもね」


 ゆっくりとユリウスを見つめる。

 女の子のように華奢で気弱だった幼なじみ。

 なにかがちがうような……?



「……!?」


 ひぇぇっ な、なんで!?

 ユリウスがいきなり成長した? 大きくなってる?

 意識したとたん認識がかわった。


 こわくなって思わず一歩、後退あとずさる。

 びっくりしすぎて体のバランスを崩した。


「!?」


 あっ! と思わず伸ばした手。


 ガシッ


 つかまれてそのまま抱きよせられる。



「おどろいた〜、ルーシア大丈夫?」


「あ……ありがとう」


 ユリウスの胸の中でちいさくうめいた。


 頭をなでられて、ぽんぽんとやさしく背中をたたく。

 おじいちゃんがよくやってくれた、落ちつかせるための行為。

 心音みたいで心地いい。


 2人きり夕焼けの中で無言で抱きあう。



 ユリウス……。

 いつのまにかこんなにも成長しちゃってたんだ。


 ……頭をなでることだって、背中をあやすことだって、

 わたしの役割だった。だったはずなのに。



「ずるい」


「ルーシア?」


「なにか、とてつもなく、ずるい気がします」



 よくわからないけど、いきなり逆転している。


 これは一方的なやつあたりだよー。



「1人で勝手に成長してる……」



 ユリウスがとても驚いた顔をした。


 幼なじみの成長はうれしいはずなのに。

 この気持ちってなに?

 おいていかれるみたいで、なんだかさびしい。



「……大丈夫だよ」


「え……?」


 ユリウスが静かにささやいた。

 ゆっくりとほどかれた両手が頰をやさしく包み込む。


 ちゅっ♪


 おでこにそっとキスされた。



「っ……! っ……!?」


 えっ? えええっ!?

 なにっなんで、こ、これはいったい……。



「おまじない」


「あっ……」


「ジイさんが……僕らによくやっていた、おまじない」



 やさしくほほ笑む。


 おじいちゃんが、泣いたり不安がるわたしたちに、

 大笑いしながらたくさんの祝福キスをくれた。


 ううっ涙がじわじわあふれてくる。


 不安がってるからって、いきなりおまじない?

 ちょっと不意討ちすぎるよーっ


 泣き顔がみられたくなくて、あわててバッと離れようとする。

 すかさずギュっと抱きしめられた。



「こ、子どもじゃない〜っ」


「はははっそうだね〜」


「はーずかしーいっはなして!」


「もうちょっとだけ……ごめんね?」



 ふたたび頭を何度もなでられて、

 やさしく背中をぽんぽんとたたいてくれた。


 ちいさくあやす音がとても心地良かった。



  

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