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トリチウム処分問題

怒りを通り越して唖然となってしまった、福島のトリチウム処分問題。

私の思うところと、私なりの解決法を多少のデータを添えて論じてみました。

トリチウム処分問題


福島第1原発で貯まり続けているトリチウム(3重水素。実質的には酸素と化合したHTOの形の『トリチウム水』)を含む水の処分問題ですが、『薄めて海に放出』って、何考えとんじゃぁっ!、と叫びたくなります。

しかもその理由が『一番費用がかからないから』って・・・怒りを通り越して絶句してしまいます。

『安全や迷惑より金が大事』

と堂々と言っているわけですから!。

近大で今年(2018年7月3日)効率の良い除去法が開発されたと言うのに。

(電気新聞の記事、https://www.denkishimbun.com/sp/29684)


問題は、『タンクがいっぱいになって困る』と言う話ですから、

『薄めて海に放出』=貯まってる汚染水をタンクを空けたい分だけすべて海に捨てる=薄めようが薄めまいが海に放出する総量は同じ、と言う事です。

わざわざ公聴会を開く、と言う事は『本来やっちゃいけない事をこれからやりますので見逃して下さい』と言う事です。

放射性物質の放出は、濃度の規制もありますが単位時間内に出す事が許される量の規制もあり、2つを合わせて総量が規制されているわけです。

その総量規制をこれから破りますよ、と言う話なわけです。


それを福島の海でやろうとしているわけです。

『なぜ福島の海でなければいけないのか?。』

そもそもそこが疑問です。

本当に『海全体に広がっちゃえば安全』と言うのなら、福島の海ではなく、どこの国も漁場にしていない海に捨てに行けば一番困らないと思うのですが?。

公海だと国際問題になると言うなら、そんな事(海に捨てる)をするなっ!。と言いたいです。

どうしても捨てると言うなら、福島の海でなく東京湾とか皇居のお堀にでも捨てるべきでしょう。

福島原発の恩恵を一番受けていたのは、私の住む東京をはじめとする首都圏なのですから。

その責任を果すべきだと思います。


『トリチウムは生物濃縮されない』と言う説もありますが、『生物濃縮された』と言う研究結果もあります。(『2001年には、英国ブリストル海峡での二枚貝やカレイの体内に、高濃度のトリチウムがあるとの論文[34]が発表されている。』、wiki『三重水素』より引用)


さて、『取り除くのが難しい』と言われるトリチウムですが、ウランを濃縮するのに比べたら恐ろしく簡単です。

なにせ、トリチウムは水素と比べたら重さが3倍もあるのです。

水の2個の水素のうち1個がトリチウムになったトリチウム水(HTO)でさえ、分子量が水の18に対して20です。水素分子なら、HTとH2では2倍分子量が違います。

蒸留するだけでも濃縮が可能です。


1torr=1mmHg=約133.322 Pa


水の平衡蒸気圧(torr)

T(℃)      25   60  80  100

P(H2O)    23.756 149.38 355.1 760

P(HTO)    21.7  141.5 341.3 738.8

P(H2O)/P(HTO) 1.095 1.056 1.040 1.029


25度Cから、100度Cの間で蒸留するなら、多段蒸留塔の蒸留段1段に付き約10%から2.9%ぐらいずつ濃縮出来る計算になります。

1.95*・・・*1.056*・・・*1.040*・・・*1.029=と言う計算になります(『*』は『かける』の意味)。

・・・の所には途中の温度での分離係数(P(H2O)/P(HTO))が入って行きます。

何段入れられるかは蒸留塔の設計をきちんとやらないとわからないので割愛。


ウランの濃縮に使う同位体の質量の差を利用して分離する方法で水素分子にした汚染水を分離する場合だと、

ガス拡散法なら、分離係数は1段に付き1.414(理論分離係数は2つの同位体間の質量の差の平方根)

今主流の遠心分離法ならそれより遥かに効率が良く、電気代はガス拡散法の1/10だそうです。

(『遠心分離機の分離係数は、理論的には質量差の2乗と周速の4乗に比例し、回転胴の長さに比例するといわれている。』出典、高度情報科学技術研究機構のホームページ

http://www.rist.or.jp/atomica/data/dat_detail.php?Title_No=04-05-01-04)


そして今、問題になっているのは『容量』。トリチウムの絶対量ではないのです。

『低濃度な汚染水から純粋なトリチウムを取り出そう』としたらそれは大変でしょう。

でも、今求められているのは、『容量を減らす』事だけなのです。

つまり、汚染水からトリチウムをほとんど含まない水を取り出せさえすればいいのです。

毎日増えていく容量の分だけ。

蒸留でも、もっと効率の良い分離法でも使って、最低でも総量規制に触れない絶対量までトリチウムを取り除いた水を分離して、それを東京湾にでも捨てれば良いと思うのです。

トリチウム濃度が高くなった水は、保管しておけば12年くらいで濃度が半分になりますから(トリチウムの半減期は12年くらい)また容量を減らすにしても同じ装置で大丈夫です。



個人的には、電解して普通の水素(&重水素)との混合物にして水素吸蔵合金でも使えばかなり効率が良いのではないかと見ているのですが・・・(普通の水素とかなり蒸気圧が違うので。とはいえ超低温で蒸留するのは大変なので。)

具体的には、多孔質の水素吸蔵合金を詰めた充填塔(蒸留塔の一種)を使って、汚染水を電解した水素を吸着蒸留する形式ですね。



液体水素の平衡蒸気圧(torr)

T(K)    20   25

P(H2)    677.4 2374.7

P(HT)    288.8 1332.6

P(T2)        750.3 

P(H2)/P(HT) 2.346 1.782


なお、物性に関する資料に関しては


トリチウム分離に係る工業技術

平成26年1月15日

日本原子力研究開発機構

山西敏彦

山本徳洋

http://www.meti.go.jp/earthquake/nuclear/pdf/140115/140115_01d.pdf

より引用させていただきました。


PS

高純度のトリチウムのお値段は、300万円/グラム、だそうです。

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