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世界史講義録 ロシア史への誘い  作者: 鸛
ロシア史基礎編
74/75

ゴルバチョフ⑦ ペレストロイカとインフレ

前回、ソ連の崩壊の要因のひとつとして、経済の破綻について言及しましたが、その詳細を解説します。


まず、ソ連という国はレーニンが建国して以来、対外的脅威に常に晒されてきた国だといえます。


その結果として、国内産業は「重工業」と「軍需産業」に偏っていました。戦後もそれは変わらず、東欧諸国と連携してブロック体制をとり、冷戦やアメリカとの核開発競争を優先したため、重工業と軍需産業に特化した片寄った国家だったと言えます。


従って、ソ連という国はそもそも産業構造から見ても物資が足りない国だといえるのです。


こうした物資を補うために、COMECONという形で東欧諸国と分業体制を築いていましたが、東欧諸国は民主化していき、重工業と軍需産業特化のソ連だけで物資の調達を行うことがますます難しくなっていきます。


(なお、農業もフルシチョフの時代までルイセンコ学説などを信じたため後進的になり、アメリカから小麦を輸入しないといけない状況に陥りました。)


そんな中で、ものが足りないという構造的な問題を解決することなく、いきなり市場経済を導入したらどうなるでしょうか?


これは、高校で習う政経の基本知識で理解できますね。つまり、供給はすくないけど、需要が一定以上あると、ものの価格ってどうなりますか?ということです。


皆様が、自由に供給できるサプライヤーの気持ちになってみてください。需要が一杯あるのに値段安くしますか?値段高くしても需要があるんだから、売り切れるはずです。


このことは、夏休みのホテルの宿泊料金を例にするとわかりやすいですね。夏休みは、旅行者が増えるのでホテルに泊まりたい人が増えます。従って、需要は増加します。しかし、ホテルの部屋は変わりませんし、供給は一定です。


皆さんがホテルの経営者なら、需要が十分あるんだったら、値上げしますよね。だから、夏休みのホテルの宿泊料金は高いのです。


このように考えると、1989年以降からソ連で表面してきた問題が直感的に理解できると思います。


ソ連は、東欧の独立を認めましたし、ペレストロイカによって市場導入を急激に進めましたが、国家として物資の供給能力が乏しく、需要に対して供給が少ない国でした。


従って、「市場の原理に従って、供給者が値段をあげるので、物価が上がりました。」


計画経済だったら、需要なんて関係なく価格は決まりますが、市場経済を導入するということは、市場の法則に従って価格は決まろうとするのです。


また、もうひとつソ連には大きな問題がありました。財政赤字です。ソ連は、アフガニスタン侵攻とアメリカとの軍拡競争などで、とんでもない財政赤字を抱えていました。


こうした問題もあって、実は1989年からインフレが顕在化していきます。エリツィンの時代は、これがもっと深刻なものとなり、ハイパーインフレに発展していきます。


この1989年に押し寄せたインフレの波は、ゴルバチョフが多方面から支持を失うきっかけとなり、急進派のエリツィン等が力をつけるきっかけになったのです。







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