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世界史講義録 ロシア史への誘い  作者: 鸛
ロシア史基礎編
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ブレジネフ⑤ アフガニスタン侵攻について 後編(※イスラム国の起源)

前回の続きです。1979年12月、ソ連はアフガニスタンに侵攻を開始します。直ちに、首途カブールを占拠したソ連でしたが、ムジャヒディーン達の抵抗は終わりません。


ムジャヒディーンたちは、これがジハード「イスラム教における聖戦」であるとしてアラブ諸国をはじめ30カ国から志願兵が参戦します。


イスラム教では、富をもつものと貧しいものの存在を認めていますし、全員の平等を目指すマルクス=レーニン主義など相容れない思想でした。それを掲げる政府もソ連もイスラム教の敵だったのです。


更に、ムジャヒディーンたちはアメリカから秘密裏に武器を入手していました。


アメリカは、ソ連のアフガニスタン侵攻を内政干渉であると批判していました。※この時に、デタントの風潮はいっきに吹っ飛び、アメリカ国内では、ソ連脅威論が高まります。軍縮の時にお話ししたSALT-2が実現しなかったのも、アフガニスタン侵攻によって米ソ対立が深まったからです。


こうして、アフガニスタンへの共産主義勢力拡大を怖れたアメリカは、米国中央情報局(CIA)などが中心となって極秘に武器の供給を行ったのです。


この時、武器の供給がパキスタンを経由して行われ、数十億ドルに達したそうです。また、武器の供給だけでなく、ムジャヒディーンたちは軍事キャンプでアメリカ指導のもと戦闘訓練を受けます。


※ちなみに、このムジャヒディーンのなかには、アメリカ同時多発テロを行うことになるウサーマ・ビンラディンもいました。映像資料としてもウサーマ・ビンラディンがアメリカから軍事訓練を受けている映像が残っています。


こうして、ソ連が待ち受けていたのは、アメリカの最新兵器を持ち合わせ、アメリカから戦闘訓練を受けたムジャヒディーン達でした。


ソ連兵とムジャヒディーンの戦いは、泥沼化します。


以前、ソ連がナチスドイツを倒したときに冬の戦争に特化した特殊部隊がドイツを撃退した話をしたと思いますが、今回の戦争で地形的に有利だったのは、アフガニスタンだったのです。


アフガニスタン北部には、山岳地域が多く存在します。山岳では、ソ連お得意の戦闘機の多くを使うことができませんでした。


更に山岳気候のなかで、多くのソ連兵が酸欠になります。一方、山岳気候をものともしない強靭なアフガン兵士が、ゲリラ戦を展開するのです。


ソ連兵が追撃をすると、地雷が巧妙に仕掛けられていて、立ち往生した部隊にたいして、一気に強襲をかけてくるという繰り返しでした。


そこで、戦闘ヘリ等をソ連が大量に導入しますが、山岳地帯で気密度が低く、戦闘ヘリの高度が3000mほしいところ、1800mで飛ぶしかなかったのです。


そんななかで、アメリカから供給された対空兵器であるスティンガーミサイルに苦戦して、この作戦も効果をあげられませんでした。


結果として、ソ連の威信は大きく低下します。


ソ連という国は、力で各国を従えている国であり、イスラムゲリラに負けるわけにはいかなかったのです。


しかし、この戦争は泥沼化し、ムジャヒディーンを倒しきれなかったのです。


また、アフガニスタン侵攻は、国際的な批判を集めました。ソ連の国際的なポジションも低下しました。


更に、度重なる軍事費の増大はソ連経済を逼迫しました。


結果として、ソ連崩壊には色々な理由があげられますが、このアフガニスタン侵攻こそが、ソ連を崩壊に導いた破滅の戦争だったのです。


最後に、アフガニスタン侵攻では、ムジャヒディーンを増大させてイスラム原理主義者という新しい民族主義を台頭させるきっかけとなりました。


実は、歴史を遡ると「ムジャヒディーン」→「アルカイダ」→「イラクのアルカイダ」→「イスラム国」という風に変遷していっており、イスラム国を生んだのはアメリカだったのです。






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