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世界史講義録 ロシア史への誘い  作者: 鸛
ロシア史基礎編
35/75

スターリン③ ウクライナの大飢饉 ホロドモール

ソ連結成時に、ウクライナがソ連に加わったことを話さなかったのは、この話とセットで覚えた方が印象に残ると思ったからです。ホロドモールは、入試に出ませんが、ソ連には、ロシアだけでなくウクライナやザカフカース地方等が加わったことを覚えておきましょう。

1922年、レーニンがソ連を建国したことをお話ししました。ソ連には、従来のロシアに加えて、ウクライナやザカフカース等の地域も新たに加わります。


なお、ウクライナは、16世紀ごろからヨーロッパにおける穀倉地帯として発展した地域でした。


しかし、この農業大国で1932年から、大規模な飢饉が発生しましました。


その理由は、「農業集団化」が行われ、穀物徴発が復活したからです。


特に、五ヵ年計画達成を目指していたソ連は、穀物を輸出することで外貨を得るために、ウクライナの穀物徴発を積極的に行いました。


その時のソ連の手口は、まさに恐ろしいものであったのです。


そこで、以下に詳細を語ります。


まず、ソ連が穀物徴発を始めると、農民達には食料が残りませんでした。


※むしろ、五ヵ年計画で掲げられた目標徴発量は、農民たちが食べる量や来年農業を営むのに必要な穂の量を含めて、根こそぎ奪っていく計画になっていたのです。


そんな中で、様々な条例が制定されました。


まず、農産物は全て人民に属するものとされます。従ってパンの取引や調達不達成、落ち穂拾い等を行うと「人民の財産を収奪した」という罪状に課せられるようになります。※落ち穂拾いは、ひどい場合銃殺が宣告されました。


また、次第にウクライナの国境は封鎖され、農民の自由な出入りができなくなります。


すなわち、農民たちは、食料を得ることができない環境に閉じ込められて農業集団化を強いられるのです。


この時、労働者や党員のメンバーから構成されるオルグ団という集団が、空中パトロールで畑を監視しを行います。


従って、当時のウクライナはまさに監獄そのものでした。


では、この監獄で何が起きたのでしょうか?


食料がなくても穀物が徴発され、農民は武力で包囲されて逃げられないのです。


その結果が前述した「途方もない大飢饉」です。


この飢饉で何百万人死んだか、いまだに結論が出ません。


飢饉中の農民達は食べ物が全くなかったからこそ、病死した馬や人間の死体を解体して食べました。時には、赤ん坊を誘拐して食べました。そうしなければ、生き残れないほど穀物は絞り尽くされたのです。


当然、通りには餓死者が転がり、山積みにされます。ウクライナの通りは死臭で満ちていたとも言われています。


また、この頃、飢饉や飢えという言葉を使うことも禁じられました。スターリンは、対外的に五ヵ年計画が上手くいっていると大々的に宣伝しているため、飢えや飢饉など起きていないことにしたのです。


困り果てた農民達が村やソビエトに陳情に行っても「隠しているパンでも食べていろ」と言われるだけでした。


スターリン自身も、「ウクライナ人は自分のことしか考えていない。これでは、五ヵ年計画の達成の支障となる」として切って捨てました。


このウクライナで起きていた飢饉のことは、1980年代になるまで語ってはいけない歴史となっていました。


そして、近年、この飢饉は「ホロドモール」と呼ばれるようになります。


スターリンがウクライナ人を大虐殺しようとし、計画的に引き起こした飢饉と考えられているのです。


※このホロドモール問題こそ、ロシアとウクライナの今日における対立のきっかけを生む出来事となっています。ウクライナ問題に興味がある人は、調べてみてください。





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