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球技大会! 1

「……それでは、球技大会、開催です!!!」

「うおおおおおおおぉぉぉぉぉぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」


 空気を読んで、開会の辞をそこそこ短めにしてくださった校長の後の、生徒会長の言葉で、球技大会が始まった。


 球技大会は、秋にある体育祭と文化祭(まとめて紅葉祭りと呼ばれたりする)と同じように、外部の人間も来ることができ、なおかつ学年が変わって初めての、大きなイベントである。そのため、規模は大きく、生徒の意気込みもたっぷりだ。さらには、競技中は選手の魔法行使が認められており、かなり派手な大会になる。なので、どの生徒も意気揚々としている。はずである。


 はずであるのだが。


「はあああぁぁぁぁぁぁ……」

 ほたるの気分は、マリアナ海溝より深く沈んでいた。

 普通なら、女子からの人気を少しでも上げようと、必死になってもいいはずである。そんなことは螢も分かっている。分かっているのだが、モチベーションが上がらないのだ。

 周知の事実だが、顔がそこそこいい螢は、顔はそこそこいいが、体力がなく、顔はそこそこいいが、目立たない。何か競技に出ようものなら、敵に狙われまくるか、無視されまくる。去年それを、身をもって知った螢は、太陽の光のさんさんと差し込んでいる朝っぱらから、暗澹たる心持ちなのであった。


 そんな螢を見て、日昏ひぐれはふんっ、と鼻で笑った。

「試合をする前から落ち込んでいてどうする。味方も萎えるぞ」

 そんなこと言われても、と螢はため息をついた。

「ていうか、日昏は本気ださないんじゃなかったの?」

「ああ、もちろん本気は出さない。出さずに優勝する」

 日昏は、当然とばかりに言い切った。

「あのねえ、一応僕もメンバーにいるんだし、あんまり期待しないほうがいいと思うよ」

 螢は自身無さげに言った。螢のクラスのバスケのチームには、日昏の他に螢も含まれているのだ。


「そうは言うが、お前は本当はできる奴だぞ」

と、日昏が言う。それが、なぐさめるような言い方ではなく、本気でそう思っているようだったので、螢は不思議に思った。

「どういうこと?」

「そのままの意味だ。まあ、もう少し付け加えれば、体力皆無のお前にもできることはあるということだ」

「皆無って、ひどいなあ……。できるって、例えばどんなことができると思う?」

「そのぐらい自分で考えろ、まぬけ」

 日昏は吐き捨てるように言った。


 そのタイミングで、体育館で最初に行われるバスケ予選のために、螢のバスケチームのメンバーが集まってきた。生徒会運営の生徒が、メンバーが全員そろったことを確認する。


「それでは、バスケ予選一試合目を始めます。選手は入場してください」

 運営のアナウンスが流れ、日昏はコートに向かって歩き出した。

「お前はあいつをマークしてくれ。お前は真ん中から相手ゴールの間にいると嬉しい。それからお前は……」

 と、チームのまとめ役である日昏がてきぱきと指示を出していく。


 螢はそれを、ほけーっと聞いていたのだが。

「螢は、指揮官だ」

「……は?」

 螢は日昏の言葉を理解するのに少々時間を要した。その間に、チームメイトは先に進んでいく。どうやら、知らされていなかったのは螢だけのようだった。


「え~~~~~……」

螢は、その場にしゃがみ込みたいという願望を抑えるのに必死になっていた。

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