日常6 ~まったり学園らいふ~
螢たちが景の後輩の相談に乗っている間。
日昏と臨光は屋上で昼飯を済ませたあと、のんびりしていた。
臨光がふっ、と思い出したように言った。
「そう言えば、日昏は球技大会はどの競技に出るの?」
「一応、バスケに出ようと思っている」
「あ、出るんだ」
臨光は、ちょっと間の抜けた声を出した。
「一応だと言っただろ。本気でやったりはしない」
「いや、そこは本気だしてほしいんだけどね。他人と関わるのあんまり好きじゃないのに、以外だなーって」
「馬鹿にしてるのか?」
日昏が無表情で呟く。
「してないしてない」
臨光はぷるぷると首を振った。
「別に、人と関わるのが嫌いなわけじゃない。警戒しているだけだ」
「私のため?」
「当然」
と、日昏は弁明した。
日昏が他人を警戒するのは、起源の魔導士として常にその身を狙われている臨光のためである。なので、当然といえば当然なのだが、日昏のきっぱりした言葉に臨光はめちゃくちゃ照れていた。
「そういう主人はどうなんだ。出る予定はあるのか」
臨光の様子に気付かない日昏が、尋ねた。臨光は少し答えに困る。
「出たいけど、今年は運営に徹することになるかなー。もちろん、日昏の試合はちゃんと見とくからね」
「いや、別に見なくていいんだが」
日昏は謙遜する。実際、日昏は本当に本気を出すつもりはなかったので、臨光に見てもらうつもりはなかった。のだが。
「まあ、主人が見るんだったら、本気を出そうかな」
気が変わったようだった。
「ま、あと一週間あるし、怪我しないように練習とか頑張ってね」
「大丈夫だろう。そんなに激しいものではないし」
日昏が呟く。が、毎年怪我人は少数ながら出ているので、一概に大丈夫とは言えない。
そんなことを考えながら、臨光は空を見上げた。今日も空は青いなー。
だが、そんな空のはるか上から、何かが飛んでくるのが見えた。どうやら、校庭の方から飛んできたようだった。
それが、矢の形をしていることを確認して、臨光は叫んだ。
「日昏、上上上っ!」
だが、日昏は臨光に言われるよりも早く、風切り音で矢を確認し、立ち上がっていた。
日昏が、首に巻いていたマフラーを外し、手に巻いた。実はこのマフラーには、金属繊維が使われており、非常に頑丈に作られている。
矢は、最高点に達したあと、臨光たちの方に落ちてきた。矢はどんどん速度を増し、恐ろしい殺傷能力を持って日昏に衝突しようとする。明らかに、魔法で軌道を操作されていた。
だが、矢が目前まで迫った瞬間、日昏は一気にマフラーを広げた。
矢は、マフラーに突き刺さり、そのまま貫通して日昏に刺さるかと思われたが、ぎりぎり、日昏の顔の直前で止まった。
日昏は、しばらく黙って耳をすました。だが、第二の矢がくる様子はなかった。
日昏は、マフラーに刺さった矢を抜き、じっくりと眺める。よくよく見ると、少し帯電していた。
「学校内にも、臨光を狙う奴がいる…?」
立ち上がった臨光も、矢を覗き込む。不思議そうに見る臨光に、日昏は警告した。
「学校でも、あまり油断できなくなった。少しは警戒しとけよ、主人」
臨光は、悲しい顔をして、小さくうなずいた。
一週間後、球技大会の日がやってきた。