表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/10

日常5 ~まったり学園らいふ~

ちょっと長めです。

 始業式からひと月、ある日の昼休み。


 ほたるあかりいさむは、後輩の進路相談に付き合っていた。魔法研究に関わりたいという女の子が景の後輩にいたので、いつもの3人で何かアドバイスをあげられないか、という話になったのだ。


「で、将来はどんな研究に関わりたいの?」

 景が優しく言った。後輩相手だとずいぶん甘くなるんだなー、と螢は少し驚く。


「そうですねー。魔法を使った身体強化の研究に携われたらなー、って思ってます」

 その分野なら、臨光のぞみが世界一なんだけどなーと、螢は心の内で思う。どんな魔法を使っているのかはわからないが、起源の魔導士オリジナル・マジシャンは、自分の一族が行ってきた研究の内容は、自分が生まれる前のものでも記憶している。源一族は、特に身体強化を専門としてきたので、身体強化系の魔法なら、臨光が世界一ということになる。ただ、このことは臨光が、他言しないことを確かめてから螢たちに言ったことで、政府と起源の魔導士(それと景無家本家)しか知らないので、口が裂けてもこの後輩の女の子には言えない。


「ああ、そういうことならやっぱり筋肉が必要だな。どんな研究にも体力は必要だが、その分野なら磨き上げられた筋肉が最重要だ」

「え?」

 突然筋肉について語りだした勲に、後輩さんは困惑する。

「まー、この脳筋はおいといて」

 と言う景の拳が、豪速で勲の腹に突き刺さる。おそらく螢なら10分は悶絶しただろうが、勲はわざとらしくうっと呻いただけで、表情一つ変えずいる。螢はそんな2人を見て、どんな化け物だよ、と恐ろしく思った。


「どの分野か聞いといてなんだけど、やっぱり魔法職なら何を目指すにしても、魔導士認定はもらっておいた方がいいと思うわ」

 景が言う。

「やっぱりですかー」

 と、後輩はため息まじりに言った。

「ええ。一応国に認めてもらえたことにはなるし、ランキング入りは目指さなくても、もらっておくと有利だと思う」

 ま、そうだよなーと螢は思った。日本に限らず、魔導国家連盟に加盟している国ならどこでも魔導士認定試験というものがある。基礎知識と若干の応用が押さえられていれば合格できるのだが、受かると国に正式に認めてもらえたことになるので、魔法職に就職したいのなら、魔導士認定があるのとないのとでは有利さが大きく異なる。ただ、1度受かれば、そのあと1年に1度ある認定継続試験は無料なのだが、受かるまでは毎回3000円を払う必要があり、時間もとられるので結構な手間ではある。


「ちなみに、景先輩は認定もらってるんですか?」

 そんな後輩さんの言葉に、螢は思わず笑ってしまった。途端、景にものすごい形相でにらまれ、冷や汗が止まらなくなった。

 幸い、景は螢を殴ったりはせず、話を続けてくれた。

「私は、まあ、認定もらってるというか、一応近畿のランキング入ってるから」

「そうなんですか!?」

「ええ。この2人も入ってるわ」

 と言って、景は勲と螢を指さす。それまで変人を見る目で螢と勲を見ていた後輩さんは、驚愕の面持ちで2人を見つめた。

「じゃあじゃあ、何位なんですか!?」

と、あんまり後輩さんが興味津々という感じで尋ねてくるので、景は仕方なく

「私が873位で、この短髪筋肉マニアが865位。そこのイケメンの無駄遣いが832位よ」

と律儀に答えた。

「え、この人がランキング一番高いんですか?」

と後輩さんが残念そうに言った言葉が、螢の心をぐさぐさ刺した。

「ついでに言うと、私の学年にはもう二人ランキング入りしてる人がいて、その二人は951位と428位ね」

螢と勲は、臨光(951位)と日昏ひぐれ(428位)のことだな、と分かったが、後輩さんには新鮮な驚きだったようで、

「428位!?すごいですね、その人!」

と叫んだ。随分テンション高くなったなー、と螢は驚く。ただ、普段一緒にいるので気にしなくなっているが、428位というのは確かにすごいので、この反応が普通だろう。


 ランキングというのは、認定試験で才能を見込まれた人間が受けることのできる特別試験であり、県ごとや地域ごと、最高で魔導国家連盟ランキングがある。それぞれ、ランキング1000位以内に入ればランキング認定や多少の優遇を受けることができる。ちなみに、近畿ランキングで500位以内と言えば普通、軍人や国家研究者など、魔法を本職にしている人間がなれるものであり、学生がなれるものではない。


 後輩さんは、高いテンションのまま景に尋ねた。

「その人今どこにいるんですか?」

 景は、苦笑いして言った。

「今頃、いちゃいちゃしてんじゃない?」




同刻、屋上。

「くしゅんっ!」

臨光が小さくくしゃみをした。隣に座っていた日昏が、臨光の顔を覗き込む。

「大丈夫か、主人。風邪でもひいたか」

「うーん、そんなことないと思うんだけどなー。噂でもされてるのかな」

と、臨光は首をかしげるのだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ