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刻印所持者の魔法  作者: 紅ノ月
1章:三度の喪失
9/26

9話:刻印所持者、ルルナの悩み相談を受ける

12月24日修正しました。

- 刻印所持者の魔法 9話 リメイク -

 第7月3日。俺は昨晩のことがなかなか頭から離れなくて色々と苦労している。流石にこのままではまずいと思い、朝食を食べたあと体を動かすことにした。まず軽くできるジョギングから始めることにした。



「はぁ……はぁ……ふぅ」



 体が羽みたいに軽く感じて途中から夢中になってつい、マラソンになっていた。一度熱中すると中々やめられなくなる癖はなんとかした方がいいな、と乱れた息を整えているとルルナが俺に近づいてきた。



「お疲れ様です。お水をどうぞ」



 木の日陰に座って休んでいた俺に話しかけてきたルルナ。手には皮袋を持っていて俺に差し出す。相変わらず綺麗な笑顔だった。俺はルルナから皮袋を受け取り蓋を開けて水を飲む。水はキンキンに冷えていて疲労した身体に染み渡る。



「……あの、こんな相談をレントさんにするのはおかしいと思うんですが良いですか?」



 俺は正直驚いた。俺からみたルルナの性格からしてあまり人に相談するとは思わなかった。それに1番仲の良さそうなメイドのルビアならともかく知り合って数日しかたっていない俺に相談するとは思わなかった。だから俺は「ああ」と素っ気ない返事をした。

 ルルナの不安そうな表情を見ると見るや否に誰にでもできる軽い相談ではないことを理解した。



「私……実はレントさん達が怖いです」



 一瞬疑問に思ったが、すぐに召喚された当日の那月さんと瑠里香のことを思い出した。立場は違えどどちらも思いは一緒ではないかと思う。ルルナ達からすれば俺達はどんな存在か分からないのだから。



「レントさんたちがその気になれば我々など簡単に殲滅できるのではないかと……不安です。あ、でもレントさん達がそんなことをするなんて微塵も思っていませんからね!」

「……矛盾しているのに気づいてる?」

「え?」



 俺達が怖くて不安だと相談をしているのに俺達のことは信頼している。本当にルルナが優しい女性だということがあらためてわかった。俺はそんなやさしい彼女にちょっとした助言をすることにした。



「ルルナが思っているほど俺達は強くない。むしろ弱い。多分ルルナの方がずっと強いと思うよ?」

「私が……強い……?」

「ああ、きっとルルナの心は強い俺達よりもな……」



 だが、と俺は言葉を続けたらルルナが緩まっていた顔が緊張したようにこわばった。

 さっき俺のことを怖いと言っていたのに真面目に俺の話を聞くんだな。そう考えると本当に素直で純粋、俺を疑うことを知らないのだろか。いや、もしかしたら内心全く俺のことは信用していないのかもしれない。俺を利用するための嘘かもしれない。だが、いまはルルナのことをあまり知らないのだから彼女の言葉を信じていいかもしれない。



「……あまり人を頼らないのは考えものだけどね」

「うぐっ……」

「やっぱり心当たりでもあるの?」

「うぅ……はい……」



 俺は項垂れながら肯定するルルナをみて思わず笑みがこぼれる。別にルルナを叱ろうとはしていないので軽く注意だけしておく。「肝に銘じておきます」と苦笑しながら彼女は言った。本当に大丈夫だろうか、という心配がまだ俺の心の中にはある。きっとこれからもルルナはあまり他人には自分の思いをさらけ出さないであろう。だからせめて俺は助けになれると意思表示だけはしておこう。



「俺には話せないこともたくさんあると思うけどまあ、愚痴には付き合ってあげられるからいつでもおいでよ」

「レントさん……はい!」



 ルルナは満面の笑顔を俺に向ける。やはりルルナは明るくなくてはな。そう思いながらまた運動を再開しようとする。だが、行く手を阻むようにルルナが頭を俺の肩に乗せる。



「……すこし、肩を借りてもいいですか? 駄目でしたら断っていただいて結構ですよ」



 断ってもいい。ルルナは確かにそう言った。だが、ルルナにこうやって頼られたのは初めてだったので少し嬉しく思いながら快くルルナの頼みを承諾した。

 まだ、昼前なのでそんなに太陽の日差しは強くない。それに穏やかなで肌を撫でるような風が心地よい。俺も少しルルナの頭に寄りかかり目を閉じた。









 俺は突然背筋に氷水をかけられたような寒気が俺を襲う。思わず体がビクッ、と飛び上がる。おかげでその衝撃でルルナが目を覚ましてしまった。



「ぅん……? レントさん……?」

「ごめん。起こしちゃった、まだ寝てていいよ?」

「いえ……私こそそのまま寝てしまってすみません。肩痛くないですか?」

「いや、大丈夫。それに俺も寝ちゃったし」

「そうなんですか?」



 ルルナは寝起きの目を擦りながら顔をかしげる。その姿は小動物のようでなにか保護欲が掻き立てられる可愛さがあった。抱きつきたい気持ちがあったのだがそこはなんとか押し止める事が出来た。それにさっきから謎の寒気が止まらなくてそれどころではなかった。



「さて、屋敷に戻る?」

「そうですね」



 俺とルルナは屋敷に向かって歩き出した。ふと視線を屋敷に向けると窓からはニヤニヤとした笑みを浮かべて俺たちを見ている青髪のメイドがいた。

 ――よし、あとで捕まえに行こう。

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