23話:刻印所持者、魔法の天才らしい
またまた、あらすじを変更しました。
何度も変更してしまい本当に申し訳ありません。
恐らく、もう変更しないと思います。……たぶん。
「ん……。もう朝か……」
俺は重いまぶたを持ち上げ、起き上がろうとする。だが、それは叶わなかった。俺の上で寝ている紅のせいだった。そして何より驚いたのは、俺の肩部分が血で染まっていたことだった。確かに、そこまで明るくなかったのでよく見えなかったがまさか、ここまでとは思ってもみなかった。
「はあ、このままのわけにもいかないしな……。''洗浄''」
俺の肩に透明な丸い水の塊が現れる。そして、それは俺の肩と肩に付着した服を丸々包み込んだ。
何故、俺が水魔法を使えているのかというと昨日、メルフィアに呼ばれた時の話だった――
『実は、貴方が使った魔法は混合魔法と言って。2種類以上の魔法を使用する魔法です。この魔法は魔法を知った初日に使えるものではありません。少なくとも、普通の人は……』
『普通じゃない……?』
『ええ、そうです。最初、何も知らない状態で魔法を使った時は素質があるな~。ぐらいでしたよ。ですが、それは大間違いでした』
メルフィアは腕を後ろに組み、わざとらしく振り向くと歩き出す。置いていかれるわけにもいかないので、少し汗が滲んだ体を動かして着いていく。
「貴方には才能があります。歴史上、最大の天才です」
「天才? 俺が?」
「ええ、そうですよ。これは、揺るぎのない真実です。この私が言うのですから間違いありませんね」
どこから、そんな自信が溢れてくるのだろうか。
メルフィアは更に奥へ、奥へと潜り込んでいく。向かっている先は、更に深いところのようで次第に木々の葉から零れ落ちる日の光は姿を消した。薄暗い中、俺とメルフィアは歩き続ける。
正直、天才と呼ばれてもそんなに嬉しくなかった。元々、家族やほかの人々からは疎まれ続けていた。そんな、俺が今更天才だと言われても一体何があるというのだろうか。
「一体どこに向かっているんだ?」
人から賞賛を受ける?
「秘密ですよ」
人の醜い部分ばかりを見てきた俺はそんなことへの興味など微塵もありもしない。
それでも――
「あ、目的地に着きましたよ」
――それでも、俺には守りたい人がいる。
ひとつ、歩いた。
地面に生えている草が擦れ合い、独特の鋭い音が辺りに響き渡る。そこには木の隙間からすり抜けてきただろう光が広場のような場所の中心を照らしている。その日差しはそこらじゅうに咲き乱れている花たちに当たり、そのおかげで花たちの魅力はより、引き立てられていた。。
確かに神秘的なそれだけではない、他の場所とは決定的に何かが違った。そう、酸素濃度が濃くなった。そのような感じだった。
「あ~。やっぱりお気づきになりましたか?」
「何がだ?」
「空気が全然違うことに、ですよ。この辺りは、【女神の憩いの場】と呼ばれています。まあ、単純に言って、魔力が満ち溢れているんです。そのおかげで、体内魔力も回復しやすくなっているんですよね」
「それで、俺を連れてきた理由は一体何なんだ?」
メルフィアは1度、俺を見たあとに光が降っている場所まで移動する。
「貴方には興味が湧きました。故に魔法を教えてあげます」
メルフィアはその時、俺のことをしっかりと目に捉えて微笑んだ。
その後、メルフィアの指導のもと魔法の特訓をしていた。それも、1時間足らずで終わってしまったが……。
メルフィアが不満そうにしていたのを見て、少し申し訳なさを感じた。だが、そのおかげもあって習得可能な魔法はすべて習得した。
それが、今俺が水魔法を使えている理由だった。ちなみに、これで魔法の特訓は終わりではない。身体能力上昇の魔法と属性魔法を極限まで使いこなすまでは終わらないだろう。
「……''乾燥''」
一応、詠唱も自分のイメージに合わせて変更することが出来た。ただし、その魔法はイメージをしっかり持たないと効果が半減したり下手をすると発動しないこともある。
「……うにゃ……?」
「やっと起きたか? 寝坊助め」
「……ッッッ!?!?」
紅は今までのが比じゃないくらいの顔の赤さで声になっていないが叫んでいる。あまりの赤さに、体温の上昇でオーバーヒートしてしまうのではないかと思ったほどだ。
そろそろ、離れないと本当にオーバーヒートしてしまいそうなので紅を左にずらしベッドに座らせ、俺は右へとずれてベッドから降りる。
「す、すみません……。まさか、寝落ちをしてしまうとは」
「いや、それに関しては気にしていないから大丈夫だ。それより、そろそろ朝食の時間が始まるぞ? 顔を洗いに行かなくてもいいのか?」
「あっ! それじゃあ、ちょっと顔を洗いに行ってきます! 先に、朝食を食べていても良いですから!」
「おー。わかった」
俺は紅に顔を洗いに行くように促す。実は、紅をこの部屋から少しの間出ていってもらいたかったのだ。その理由とは
「……おい。いるんだろ? 出てこいよ」
「……何故、私がいることに気が付いたのですか? 主様」
いきなり、俺の目の前に現れたのは跪いているシャルルだった。いつ現れたのか、どうやって現れたのかは見ていた俺でも全くわからなかった。
「実際、本当にシャルルがいるのか根拠はない。ただ、お前がいるのが当たり前な気がした」
「主様……!」
俺にはどうして、シャルルが感動しているのか理解できない。そんなに見つけてもらえたのが嬉しかったのか? まあ、それはいいとしてシャルルは俺に呼ばれないと出てこないのだろうか。それはないと思うが俺に呼ばれるまで1度も姿を表さなかった。
「なあ、シャルル。お前、今までずっと俺のそばで姿も表さずにいたのか?」
「はい。それが、私の役目ですから」
……なんて、不憫な奴なのだろうか。このままでは駄目だ。と思った。何故こう思ったのかはわからない。シャルルの主となったからその責任を感じているのだろうか。
いや、違うな。俺が心の底からそうしたいと思っているんだ。
「……実はひとりでいるのは暇なんだ。その暇潰しに話し相手になってくれると嬉しいんだが」
「主様……! はい! 私でよければ何時でもお相手をさせていただきます!」
シャルルは満面の笑みを俺に向ける。
そんな笑顔を見せられた瞬間、静電気のような頭痛が走る。一瞬のことだったので、俺はその頭痛をそこまで気にすることは無かった。
「では、そろそろ私はいつも通りに隠れますね」
「ああ、また後でな」
「はい。それと、主様の血はあの者にとって極上の蜜です。1度極上の味を知ってしまえば、2度と抜け出すことはできません。それをお忘れなく」
「なに? 一体どういう……いや、なんでもない。肝に銘じておく」
何故、シャルルがそんなことを知っているのかを聞こうと思ったが、やめた。きっと、シャルルに聞いても答えてくれないだろう。それに、これは俺自身が見つけなくてはいけない答えだ。
そして、シャルルはいつの間にか姿を消した。シャルルが帰って、数秒後に紅が帰ってきた。
「それじゃあ、蓮斗さん。朝食に向かいましょうか」
「ああ、そうだな」
俺は、俺の謎を解かなくてはいけない。その上、俺は大事なことを忘れているようだ。
殆ど勘なのだが、彼女と関わりがあるのではないかという確信がある。
「こんな、俺を許してくれるだろうか。セラ――」
ブックマークや評価、感想をくれると励みになります。




