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刻印所持者の魔法  作者: 紅ノ月
1章:三度の喪失
21/26

21話:刻印所持者、女子と同室になった

サブタイトル、すべて変更させていただきました。

「えーと。401号室。山田、杉浦、斎藤」

「わかった!」



 気絶していた人は担いで部屋まで送り、気絶しなかった人は自分の足で部屋に向かった。

 とうとう、次で最後。俺は紙に書かれている文字を読んだ。



「最後に、402号室。神田、愛月……は?」



 今まで、男女別の部屋に分けられていたので何人か余っても男女は別だろうと思っていたのだがそうではないらしい。そういえば、勇志がクラスメイトは全員で28人。そして俺が入って29人……2人あまる。それが俺と紅、か。



「え、えぇ!? わ、私と蓮斗さんど、同室なんですか!?」

「あ、ああ。そうみたいだ。もし嫌なら俺は別の場所で良いんだが」



 俺には洋館があるので、最悪そちらで生活すれば問題ない。むしろ、シャルルの料理が食べられるのなら毎日洋館から通っても良いくらいだ。



「い、いえっ! 大丈夫です!」



 紅は顔を赤らめながら首を振った。あまり男に耐性が無いようで、はうぅ、初めて男の人と同じ部屋で……まだ、手を繋いだこともないのに。などと独り言をぼそぼそと言っている。



「本当に大丈夫か?」

「だっ、大丈夫です!」

「そうか。そうじゃあ、俺たちの部屋に向かおうぜ」



 グリムもメルフィアもいつの間にかいなくなっていたし、黙って部屋に帰っても問題は無いだろう。寮は学校とは別の建物である。建物の中は思ったより綺麗だった。掃除は魔法を使ってしているのだろうか。

 そんなことを考えながら、建物内を歩いた。



「あの、蓮斗さん?」

「ん?」

「この世界の文字、わかるんですね」

「ああ、教えてもらったんだよ」



 ルビアに文字を教えてもらわなかったらきっと、とても苦労していただろう。ルビアには本当に感謝している。

 今度、ルルナの屋敷に帰ったらなにか美味しいものでも作ってやろう。アイスクリームなんかはどうだろうか。それとも、この世界にはもうアイスクリームがあるのだろうか。

 俺が疑問に思っていると突然、紅の顔が目の前にあってしっかりと俺を見つめた後に頭を勢いよく下げた。



「でしたら、私にも文字を教えていただけませんか!?」

「……文字を? まあ、いいけど」

「本当ですか!?ありが――」

「――ただし!」



 話の途中で遮られて申し訳ないが、これだけは言わせてもらう。ただで文字は教えない。

 まあ、お前だってルビアから無条件で文字を教えて貰っていただろ。と言われてしまえばそれでお終いなのだが……。それでも、そこまで大変な条件は出しはしないので安心してくれ。



「――お前と、お前のクラスメイトの魔法を教えろ」



 やはり、情報は大切だ。一応、どんな魔法があるのかだけでも確認しておいて損は無いだろう。

 紅はクラスの中でも結構打ち解けていたので、問題はないと思うのだが……。やはり、情報を漏らす訳にはいかないだろうからな……。



「それだけで良いんですか? それでしたらお安い御用です!」

「あ、ああ。それじゃあ、今わかっているもので構わないから教えてくれ」



 なんと、紅はあっさりと情報をくれるそうだ。悪用する気は無いが一応、情報は持っておいた方がいいだろう。

 俺と紅は廊下を歩きながら話をしている。話してみてわかったが、紅は明るく、気前もいい。クラスの中でも人気の部類に入るのではないだろうか。



「えーっと、勇志君が勇者の魔法で、聞いた話だと氷の魔法とか雷とかですね。あっ、あと私が吸血の魔法」

「他のはわかったが、お前の吸血って何なんだよ」

「私にもわかりませんよ! 血なんて吸ったことないんですから!」



 テンプレだと、力が増幅するとかだよな。それだと、俺の魔法と少し似ているな。魔法を使うか、血を使うか……ってところか? まあ、いつかわかる日が来るだろう。



「まあまあ、お? ここが俺たちの部屋だぞ」

「じゃあ、開けますね~。失礼しま~す」



 恐る恐る、ドアを開けて入る紅。ドアを開けた先の部屋は、とてもシンプルで余計なものは置いておらず生活に必要なもののみが置かれている。



「…………」

「…………」



 そう。そこまではよかった。なのだが、問題はその先のベッドにあった。



「「なんで、ダブルベッド!?」」



 そのベッドは、ふたり用の大型ベッド。確かに、シングルを2つよりは安く済むのかもしれない。そもそも、この世界には男女の考慮があまりされていないのかもしれない。だが、部屋の割り振りは男女別だった。色々、考えたのだがまずは目の前の問題を解決しなければいけない。



「……俺、床でねるわ」

「ダメだよ! しっかりしたところで寝ないと疲れも取れないよ! だから、い、一緒に……」

「恥ずかしくなるくらいなら言うなよ」



 紅は次第に下を向き、顔を真っ赤にした。その様子に苦笑を浮かべる俺。このことは夜の俺に任せよう。



「紅、夜まで時間があるけどなにか用事でもあるか?」

「そうですね……。友達の様子でも見に行こうかと思います」

「わかった。俺も少し、席を外すから」

「わかりました」



 俺がこれから向かうのメルフィアのところだ。さっき、メルフィアに押し倒された時に耳元で呟かれた言葉を思い出す。



『皆が、寮に戻ったらこの街から南にある森に来てください』

『は? 何を言って――』

『――お願いしますね』



 わざわざ、俺を押し倒してまで伝えたい内容が森まで来いとのことだった。何をするのか謎だが、取り敢えず行けばわかるだろう。

 今の時間はおそらく昼前。メルフィアはもう森で待機しているのだろうか。メルフィアが森にした理由は多分、この熱い日差しを直で受けないようにするためだろう。



「それじゃあ、また後で」

「はい」



 俺は寮を出て街へ向かった。少し、試したいこともあるので街で寄り道をすることになる。まあ、でももしその試したいことが成功すれば早く目的地に着くだろう。

 俺は身体能力を上昇させ、走って街に向かった。



「っと。やっぱり、身体能力上昇って便利だな」



 ここま、便利なのは逆に怪しい。むしろなにかデメリットがあっても可笑しくないのだが、今のところはそれが見受けられない。

 明日になって、全身筋肉痛とかだったら嫌だな。

 つい、想像をしてしまい嫌だという気持ちが顔に現れてしまった。俺には時間があまり無いので、気持ちを切り替えて街を歩く。



「お。これは、なかなか良い路地裏だ」



 そう、俺が探していたのは人気のない路地裏だった。俺はその路地裏に向かって走り出す。その路地裏の奥は行き止まりだが俺は気にせず走り続ける。そして、壁を蹴りその勢いで上まで登る。登った後は、建物の上を走り建物から建物へと移っていく。下の道を通っていくと人がいたり、直線で行けなくてどうしても時間がかかるので、建物の上を通らせてもらった。



「初めてやったけど、身体能力上昇があったからこそだな」



 俺は独り言を漏らし近くの木の枝に飛び移り、地面に降りた。そして、俺はそのまま全速力で森に向かって走った。









「……流石、夏の日差し」



 上には日差しを遮るものは無く、強制的に日差しを浴びることになっている。その上、俺は走っている。余計に俺の体は熱を持つ羽目になっている。

 そういえば紅のクラスメイトに、氷の魔法を持つ奴がいたな。俺も氷の魔法を使えたら俺の付近だけ、温度を低くして快適に移動できるんだけどな。



「よし、ここか」

「あ、ようやく来ましたか~?」



 街から森まで、そこまでの距離はない。その上に、身体能力上昇を使ったのですぐに着いた。メルフィアを探そうとした矢先にメルフィアが現れた。



「で? 俺に何のようだ?」

「ちょっと、レントさんの魔法についてお話があります」



 俺とメルフィアは日差しが当たらないように、日陰に移動して話を続ける。



「実は――」




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