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刻印所持者の魔法  作者: 紅ノ月
1章:三度の喪失
20/26

20話:刻印所持者、難ある魔法使いと出会う

 早速、魔法を使えることに興奮した彼らは早く使いたそうにうずうずしているのがよくわかる。まるで、新しいおもちゃを手に入れた幼い子どものようだった。

俺たちは教室から出て、外へ向かった。グラウンドのような場所も用意されていてそこへ移動した。グリムの近くに女性がいたので、誰なのかと疑問を持っていた。



「俺は魔法が使えん。だから、代わりの魔法使いを用意した。少々性格が歪んでいるから気をつけろよ」



 そう言った後、近くにいた女性が前にでた。目は綺麗な琥珀色で、髪はエメラルド色をしていた。目も、髪も日本にいた頃には全く見なかった色である。海外には琥珀色の人もいるかもしれないが、エメラルド色の髪の毛は流石にいないのではないだろうか。



「ど~も~! 今まで温室育ちだったボンボンたちに魔法を教えることになったメルフィアで~す」



 完全に喧嘩を売っている言い方だった。俺は別に気にしていなかったが、俺に絡んできた不良っぽい男は頭にきたらしい。



「あぁん!? てめぇ、俺が世間知らずの弱虫だって言いてぇのか!?」

「おい! 伸二(しんじ)やめろって!」

「うるせえ! 俺は弱虫じゃねぇ!」

「あ〜あ、私に手を出したら後悔しますよ?」



 勇志が伸二を止めようとするが、伸二は全く聞く耳を持たない。伸二は殴り掛かろうとメルフィアに近づく。右腕を振りかざして殴ろうとした瞬間、俺は背中に悪寒が走り嫌な予感がして今すぐにその場を離れようと左へと全力で走り出す。無我夢中だったので、よくわからないがいつもより走るスピードが早くなっていた。もしかしたら身体能力上昇の魔法を使っていたのかもしれない。数秒後、背中にとてつもない強風が吹き俺はその風によりバランスを崩し2、3回ほど地面を転がってしまった。



「ぐっ!」

「あら? まさか、私の魔法から逃げられるなんて……それに今、魔法を使ったようですね」



 後ろを振り向くと、水浸しになって倒れている勇志たちを見つけた。皆、横になりながら咳き込んでいた。

 一体何が起きたのか。恐らく、これはメルフィアの仕業で間違いないだろう。ということはこの水は魔法なのだろう。そしてこの水は、綺麗に円を描くように地面が濡れている。今いる俺の位置からメルフィアまで10mはある。つまり、最低でも自分から10m以内の敵に攻撃ができるのだ。



「……ま……魔法を……?」



 自分の出せる全力を出したせいで、息切れを起こし言葉が途切れ途切れになってしまった。

 それとメルフィアが言った言葉に少し引っかかるところがあった。そう、俺が魔法を使ったと言ったのだ。やはり、走った時の速さは身体能力上昇の魔法を無意識に使っていたからかもしれない。



「ええ。それにしても何も知らない状態で魔法を使えるようになるなんて、あなた素質がありますね」



 自力で魔法を使うことは難しいようで、俺が今やったことは結構すごいことなのかもしれない。そんなことを考えながら俺は立ち上がった。するとさっきまではいなかったメルフィアが俺のすぐそこにいた。俺が立ち上がる時に下を向いていたのでその時に来たのだろうか。



「うわっ!?」

「大丈夫ですか~? 手を貸しますよ?」



 そう言ってメルフィアは手を差し伸べた。俺は大人しく、メルフィアの手をとって起き上がろうとしたその時いきなり押し倒されてしまった。



「お前な……」

「あはっ。どうですか? ドキドキしますか?」



 メルフィアはニヤニヤしながら俺の上に乗っかっている。男の俺はどうしても反応してしまったようで、メルフィアが口角を上げて嬉しそうにしている。



「あれ~? どうしたんですか? 顔真っ赤ですよ? もしかして私に興奮したんですか?」

「うるせえよ……。さっさと退けろ」



 今すぐにでもこの場から離れてしまいたかった。メルフィアの目は俺のすべてを暴かれてしまうのではないかと思ったからだ。だから目を逸らして横を向いた。だが、メルフィアはまだ俺を解放しようとはしない。それどころか顔を俺の顔に近づけた。メルフィアの髪の毛が俺の顔に掛かって結構くすぐったいのと同時に甘い香りがした。懐かしいことを思い出しそうで思わずその思いを振り払った。



「――――」

「――――」



 数秒経ち、ようやくメルフィアが俺の上から退けてくれた。メルフィアが立ち上がったので俺も起きた。起き上がった先には水浸しになりながら座っている勇志たちと退屈そうに欠伸をしているグリムがいた。



「……まずは、こいつらをどうにかしないとな」



 倒れたままにしておくにはいかないので、せめて建物の中には運んでおいた方がいいだろう。一応、メルフィアに魔法で濡れている服などを乾かせたりしないかと聞いてみたのだが、嫌ですよ。と返された。できなくはないのだろうがメルフィアが拒否をしている。きっと、自業自得なのだからと考えているのだろう。

 そういえば、ここは適当に数人のグループを作られそのグループで寮生活をするのだそうだ。もう既に寮が準備されているだろうから、それぞれの部屋に移動すればいいのだろう。



「でも服が濡れたままじゃあな……あ、メルフィア」

「なんですか?」

「魔法が使えるのは、さっき紙に現れたやつだけか?」

「いいえ。それはあくまで稀少魔法があるか無いか確かめるためのものです。基本魔法は努力すれば誰でも使えるようになるものですよ」

「そうか。それじゃあメルフィア、服を乾燥させられることのできる魔法を今教えてくれないか?」



 メルフィアが服を乾燥させてくれないと、寮に運びたくても運べないのだ。もし、水浸しのまま運んで文句を言われるのも面倒だ。だが、メルフィアは絶対に乾燥してくれないだろうから自分でやるしかないだろう。と、いうことでメルフィアに魔法を教えてもらおうとしたのだ。



「んー、いいですよ。でも、タダっていうのもあれですし……そうだ! 1度だけなんでも言うことを聞いてもらうなんてどうですか?」

「そうだな……他にも魔法を教えてくれるなら構わない」

「よし! 決まりですね! それじゃあ、早速教えますね。あ、ちなみに魔法が使えなくてもいうことは聞いてもらいますからね」

「ああ、もとよりそのつもりだ」



 もし、その魔法を使うことが出来れば生活を送る上でかなり便利になる。更に、ほかの魔法も便利なものがあるかもしれない。まあ、使うことが出来ればの話なのだが……。



「まずはやってみないとわからないからな」

「魔法の根本的なことはイメージから成り立っているんですよ。ですから、使用者のイメージで魔法も姿形を変えます。貴方たちを召還したのもそれが理由です」



 それもそうか、と俺は納得した。この世界に来てたったの5日なのだが、日本やアメリカなどの先進国と比べても科学が全くと言っていいほど発展していない。その科学で劣っている部分を魔法で補っているのだろう。そのおかげで今まで人類が生き延びてきたのではないかと俺は考える。

 そんな、科学が発展した日本からきた俺たちならその科学の知識と不思議な力の魔法を合わせることで強力な力を生み出せるのではないだろうか。

 だが、この世界の誰かが日本に行って知識をこちらで広めることはしなかったのだろうか。それとも、そもそも日本に、地球に行く手段が無いのか。色々な仮説が思いつくが、雲をつかむようで手応えのある根拠が得られない。世界規模で話をしているから当たり前なのかもしれないが。



「きっと、魔法を強力なものにしてくれる筈なんですよ」

「なるほど。よし、物は試し用だ。早速やってみるか」

「そうですね。と、言っても魔法は結構柔軟なものでして魔法を使うのに必要な魔力と使用者のイメージさえあれば発動できるんですよ」

「へえ。じゃあ、意識を集中させて掛け声さえあれば十分なのか?」



 そうなってしまえば、誰でも魔法を使えるようになってしまうので流石にないと思う。



「いえ、自分専用に改良するのはとても困難なことで何十年かかってやっとできるレベルです」



 発動はできても、改造するのはまた別の話か……。



「わかった。じゃあ、早く魔法を教えてくれ。そろそろ運ばないと風邪を引いてしまうからな」

「わかりました。それじゃあ、私の後に続いてください」


「水よ、聖なる天に還りたまえ」



 簡単な言葉だったが、発したら床に魔法陣が現れて勇志たちの服や地面から光の玉みたいのが空へと昇っていく。非科学的なことが目の前で起こり、それが自分自身で起こしたというのに少々感動を覚えた。



「……み、見事なものですね。それでは、あの貧弱な弱虫たちを運んであげてください」

「ああ、わかってる。あ、メルフィア。誰がどの寮なのか決まってるんだろ? 教えてくれないか?」

「いえ、私は知りません。こんなゴミみたいな人たちのことなんて知りませんよ~」



 ちょいちょい吐いている毒舌を無視しながら俺はそうか、と言ってグリムのもとへ向かう。



「おい。俺たちの部屋割りをおし――」



 グリムは最後まで言葉を言わせる前にさっきと同じく、蹴りを入れてきた。グリムが攻撃してくることは予想していたのと、しっかりとイメージを持って体を動かしたおかげでずっと速く動けた。グリムの蹴りだって、見えるようにもなった。



「ほお、これを避けるのか……面白い。ふっ、これが部屋割りだ」



 グリムはポケットから一枚の紙を取り出し、俺に向かって投げた。紙は空気抵抗を受けながらひらひらと地面に落ちていく。俺はそれを拾い、書いてある内容を読み取る。部屋の番号とその部屋の人の名前が書かれている。一部屋ごとに3人いて、それぞれ男女で分かれている。



「もしよかったら、僕も手伝いましょうか? 一応、クラスメイトの名前はわかるんで」

「あ、あのっ! 力になれるかわかりませんがお手伝いしましょう……か?」



 勇志と、もう1人。シミひとつない白い肌に光り輝く金色の髪の持ち主である女の子が自発的に手伝いを進んでやってきた。正直、この申し出は嬉しい。今、気絶してる彼らの名前と顔が全くわからないのだ。



「ありがとう。助かる」

「いえ。あ、僕の名前は近衛(このえ)勇志(ゆうし)です。これからよろしくお願いします」

「わ、私は愛月(あいづき)(くれない)、です。」

「俺は神田蓮斗だ。2人ともよろしく頼むな」




投稿ペースが遅くて本当に申し訳ありません……。

だ、誰か、早く書き上げるコツを教えてください……。

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