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刻印所持者の魔法  作者: 紅ノ月
1章:三度の喪失
2/26

2話:刻印所持者、ステータスを作る

12月24日修正しました。

- 刻印所持者の魔法 2話 リメイク -

「え? そんな! 巻き込んだだけでも迷惑をかけているのに更に手伝ってもらうなんて!」

「いいや。これは俺がやりたくてやるんだ。それに半年間何もする事がないんだよ」



 まだ納得していない様子だったが俺が「やりたい」と言った事でやめさせるにもやめさせられない、と言った感じだろうか。

 押しに弱そうなのできっと俺が引かなければルルナから引くだろう。これで、俺は関与もできてより強い印象を与えることもできるだろう。

 もっと、単純で馬鹿な印象を与えることで油断も誘えて生き延びる確率も高くなるはずだ。



 転生する前の俺だったら絶対に考えない事ばかりで実のところ俺自身も驚いている。普通に過ごしたい平凡でいたい。特別になりたくない。と考えて来たのだが、この世界に来てからどうも不思議な感覚だ。



「はぁ。……本当は許可したくないのですがその権利も私にはありません。という事で――カンダ様。未熟な私なのですが手伝ってくれますか?」

「喜んでやるよ。それと俺のことは蓮斗と呼んでくれ」

「わかりました。それではレントさんと呼ばせていただきます」



 俺はそっと微笑みルルナさんの顔を見る。どうも嬉しそうな表情に反面、申し訳なささが滲み出ている。

 ルルナは俺を利用しようという思いは伝わってこない。大方、ルルナは俺を利用するとは考えていないと思う。だが、決定的な証拠が欠けているために断言はできない。



「そろそろ新しいコーヒー持ってきますね」

「あぁ。よろしく……お願いします」

「ふふ、敬語は抜きでいいですよ」

「そう? それは助かるよ。俺は敬語が苦手でね……」



 ルルナさんが部屋を出たのを見計らって俺は那月さんと鷲崎さんの様子をうかがった。俺が思うに一番怪しいのはこのふたりとあの別室に行った勇者だ。

 丁度いい。この機会を利用してできるだけの情報をかき集めるとしよう。



「えーっと那月さんと鷲崎さんだったよね?」

「は、はい」

「やっぱり不安?」

「……はい」

「ま、そうだよね」

「あの、どうして神田さんはルルナさんを手伝おうと思ったんですか?」



 ここまでは別に普通か。いきなり異世界に飛ばされて不安な少女2人、って感じだな。なんとか、奥に入り込むことができれば何かしらの情報を得ることはできるはずだ。




「この世界の人たちを守りたいと思ったんだよ。あと、この世界に興味があったからかな?」

「そうですね。きっと魔法なんかもあるんじゃないですか?」

「魔法か。それは楽しそうだね」

「それとそれと! 勇者一行の冒険なんかも楽しそうじゃない!?」



 那月、という少女と話していたら今度は鷲崎というもう1人の少女が割り込んできてそんな話をし始めた。



「ねえねえ、蓮ちゃんも勇者と一緒に冒険を一緒にしない?」

「ちょ、ちょっとこっちに来なさい!」

「おわ?」



 鷲崎さんは那月さんに引っ張られて部屋の隅に移動した。こそこそと何を話しているのかわからないがもしかしたらなにか情報が聞けるかもしれない。

 そう思ったのだが、いかんせんこんな遠くの小さな声を拾えるわけでもない。かといって近づいて警戒されるのもあまり良くない。結局、ここで待つしかないのか……。



 ……そういえば、なんで鷲崎は勇者と冒険することを前提としていたのだろうか。単に、そうしたいという希望なのか。それとも、その予定があるのか。

 ……少し怪しいな。



「お待たせー。いや〜、さっちゃんに勝手に約束するなって怒られちゃった」

「そうか」

「すみません。蓮斗さん、この子ったら誰彼構わずに巻き込んでしまって……」

「いや、いいんだ。気にしないで」



 あまり情報は引き出せなかったか。まあ、次の機会に収集しよう。



「ふむふむ。蓮ちゃんはさっちゃんと相性が良い。っと」

「ちょっと待った! 何をメモってるんだね鷲崎さん!?」

「何って蓮ちゃんとさっちゃんの関係? あと私のことは瑠里香で良いよ」

「ちょっと瑠里香! なに勝手に――」



 というところでルルナが戻ってきたのに気が付いて那月さんは口を噤む。俺達の話しを聴いていたのだろうか、コーヒーを取りに行った時より少し口角をあげて帰ってきた。

 このまま皆仲良くなればいいんだがな。まあ、心配せずともそのうち仲良くなるだろう。女性はすぐに仲良くなるからな。もう明日、明後日頃には親友並みに仲良くなっているだろう。



「皆さん。コーヒーをお持ちしました。それとここの国で作られている果物を持ってきましたのでどうぞ召し上がってください。あとレントさん、ステータスを作りますので横になってください」

「ん? ステータス? 横になる?」



 俺は色々な疑問が浮かぶので取り敢えず声に出す。今思い出したのだが、ステータスといえばRPGゲームに出てくるあの表の事だろうか。元の世界と異世界では呼び方が違うのかもしれないのだが俺のイメージではアレしか出てこない。そして何故俺だけなのだろうか。

 もしかして俺だけが手伝うからなのだろうか。そして今気付いたのだがどうしてルルナさんは顔が真っ赤なのだろうか。



「「なっ!?」」

「ん? どうかしたの2人とも」

「い、いえ! なんでもないですよ……」



 うーん。どうも、怪しい。どうして、2人はそんなにステータス作りに反応したのか。

 やはり、なにかあるな。



「私を手伝うとなるとステータスは必須アイテムです。ですので横になってください」

「いやなんで!?」

「レント様。お嬢様の補足をさせて頂きますと――」



 ルルナさんの説明不足がちなのでメイドさんに補足してもらった。どうやらステータスは簡単には作れないらしい。その方法とはステータスを作りたい人に他の誰かが微弱の魔力を送り続け、染み込ませなくてはいけないらしい。更にちょっと魔力を送るだけではない。長い時間を要する事になるらしく早くても3時間はかかるとの事。

 普通に魔力を送り続けると三十分もしないうちに魔力切れを起こすらしい。だがステータスを作るのに必要な時間は最低でも3時間。圧倒的に魔力が足りない。そこでとある研究者が編み出した理論を利用する事でステータス作成に成功したらしい。だが、ステータス作成も100%成功する訳では無いそうだ。強い力だけではなく精神力も必要だそうだ。



 ステータスってそんなに危険なものなの?

 ちょっとばかしステータスを舐めていた節がある。やはり異世界だな、と心の中で苦笑した。



「……ステータスについては分かったんだが俺が横になるのとどんな関係があるんだ?」

「それは3時間以上レント様に魔力を送るために必要な事なんです!」



 いつも冷静なメイドさんが恐ろしい形相で迫ってくる。

 見に危険を感じて急いでその場から離れようとするのだがいつの間にか俺の腕を掴んでいたメイドさんが強制的に俺をソファーに寝かせる。

 ――ちょっ、メイドさん力強ッ! 抑えられて起き上がれない!?



「ちょっ、離せ!」

「さぁ! お嬢様! そのわがままボディでレント様を魅了するのです!」

「で、でも……!」

「お嬢様! 今逃したら一生独身ですよ!」

「ッ……!」



 『一生独身』その言葉がルルナさんに刺さったらしく、何やら目が虚ろになりブツブツと呟きながらゆらゆら俺の方に向かって歩いてくる。メイドさんに拘束されている今の俺では逃げたくても逃げることが出来ない。さっきまで明るかったルルナさんは今では恐怖を覚えてしまうほど病んでいる女性になってしまった。

 くっ、これが俺を貶める罠だったりしないよな?



「ル、ルルナさん! 貴女は一体何をしようとしているんだ!?」

「ふふふふふ。レントさん、私はこの機会を逃すと一生独身かもしれないんですよ……? あなたにこの気持ちがわかりますか……!? 皆から毎日毎日『早く結婚しろ』とはやし立てられるこの気持ちが……!? 」

「いや、あの。ステータスは……?」

「安心してください。ついでに作りますから」



 ついでなのか!? 俺てっきりステータス作るのが本来の目的だと思ってたよ!

 このままだと何をされるか分からないので助けを求めるべく視線を那月さんと鷲崎さん、もとい瑠里香に向ける。視線に気付いた2人だが、那月さんは申し訳なさそうに目を逸らしてしまった。瑠里香に関してはニヤニヤしながらメモの準備をしている。

 そんな事をしているうちにルルナさんはもう俺のすぐ隣にまで来てしまった。にやりと艶めかしく笑みを浮かべる。



「それにしてもレントさんは美しい顔立ちをしていますね。それに偶然にも私の好みなんですよ。」

「は、はぁ……ありがとうございます……?」



 俺の顔をすりすりと撫でていく。撫でるたびに、俺の背中に悪寒が走る。ルルナさんは1度深呼吸をすると覚悟を決めた様な顔をしてうつ伏せになっている俺の上に馬乗りになった。



「ス、ステータスを作るためには密着していなくてはいけないんです……」

「そ、そうなんですか……」



 ステータスを作るにはこの美女と3時間は密着していなくてはいけないらしい。まさに天国のような時間……。

 頼むから持ってくれよ俺の理性……!

 何より一番の問題点が俺の目の前で揺れる大きな果実の事だ。ルルナさんは非常に大きい果実をお持ちだ。故に物凄く揺れるのだ。そして惨めな事にソレが揺れる度にどうしても視線が移動してしまう。これは俺にはどうしようもない事なのだ。






 ――と、普通はなってしまうだろう。だが、何故か不思議と俺は女性にそういう意識をしたことがない。

 実際、ルルナは魅力のある女性だと思う。

 だが、絶対に1位ではないのだ。1位との差が大きすぎて、ほかの女性では意識すらしない。



 それに気がついたのは高校生当たりだったか。

 中学生、高校生。思春期と呼ばれるその時期は異性に興味を持ち始めるのが普通だ。だが、その時の俺にはそのことには一切の興味を持つことは無かった。

 そういう話をしている同級生たちにも、なんでそんな話で盛り上がるのかも理解できなかった。うまく表現することができなかったが何かが違うと言ったことがある。

 するとどうだろう。理想高すぎる。と笑われてしまったのだ。それで、俺は理解した。



 ああ、そうか。ただ俺の理想の人じゃないだけなのか。と。

 それから、俺は理想の相手を探すようになった。だが、それが該当する女性はゼロだった。

 だから、もしかしたら異世界にだったら……いるのかもな。



「レントさん? その……そんなに、胸を見つめられると恥ずかしい、です」

「え? ああ、すまない。考え事をしていた」



 おっと、思わずが素で話してしまった。油断しすぎたな。

 それよりも那月さん、俺を睨まないでくれ。そして瑠里香は笑ってないで那月さんを止めてくれ。メイドさん、俺とルルナさんを見てニヤニヤしないでくれ。

 少し時間が経った後に、行動を起こしたのはメイドさんだった。ルルナさんの後ろに回り、ルルナさんに問いかける。



「お嬢様。そろそろその体制もお疲れのようですしそのままうつ伏せにになってはいかがですか? 密着面が増えてもっと効率も上がることでしょう」

「おい? そのままうつ伏せになったら俺が――ぶっ!」



 メイドさんがルルナさんの体をゆっくり俺の方へと倒す。俺はその時のメイドさんの顔を忘れることはないだろう。あの、口元を三日月の形にして笑っていたあのメイドを……。

 次第に近づいてくる果実。最高に感触が良かった。等と言っていられるのならその方が良かったのだが、そうも言ってられなかった。



「むーっ!んーっ!」



 い、息が……!

 必死にもがくがルルナさんが退いてくれる様子は全くない。

 次第に、俺の意識は遠のいて行く――

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