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刻印所持者の魔法  作者: 紅ノ月
1章:三度の喪失
14/26

14話:刻印所持者、セラとデート2

 路地裏に逃げてまいたりしたが、その後も何度も何度もセラがナンパされてそしてその度に俺が貶されるという自体が起こっていた。毎回セラがキレかかって俺が殴っていた。



「はあ……デートってこんなに疲れるもんだっけ?」

「蓮斗大丈夫ですか? 飲み物を買ってきますか?」

「あ、いや――」

「――おお! なんと美しい女性だ! 我が伴侶に相応しいではないか!」



 そこには薄ら笑みを浮かべ豪華な服を着ている男がいた。無駄に豪華な服なのだが、男が太っているせいで台無しである。

 この男、服を見るかぎり貴族っぽいな……はあ、また面倒な相手に絡まれたな……。



「おいそこの薄汚い男。俺はそこの女性に用があるんださっさと立ち去れ」



 そう。毎回セラがナンパされる度に俺をこんな邪魔者扱いをする。みるみるセラの機嫌が悪くなっていく。だが、男はセラの機嫌が悪くなったことに気がついてすらいない。さっきまでのセラなら確実に殺しにかかっていたのだが、俺が苦労していることに気がついてくれたのか無言でその場を立ち去る。



「おい待て! この俺を差し置いてどこへ行くつもりだ!?」

「彼女がお前を拒絶したということがまだわからないのか? さっさと帰れ」

「貴様に発言を許可していないぞ! 黙ってろ!」



 俺は肩をすくめた後、セラを追いかけた。後ろで何やら叫んでいるが俺には発言権もないのだから黙ってセラとのデートを再開するとしよう。

 俺は走ってセラの横にたどり着く。目的もなく歩いているとセラの手の甲が当たる。そしてチラチラと俺に視線を送るセラに俺はなんとなくだが察しがついた。セラの指の間に俺の手を滑り込ませて握った。俗に言う『恋人繋ぎ』というものである。



「ふふっ」



 セラは口角をあげて微笑む。俺は少し顔が赤くなるのを感じつつ、セラの手を引っ張る。その手は細く、華奢に感じる。

 俺は無意識に優しく、壊れないようにと握る。改めて意識すると恥ずかしくなったのでその恥ずかしさをセラに悟られないように適当に屋台でなにか買おうとする。



「セ、セラ。こ、これを飲まないか?」

「ええ。良いですよ」



 俺が選んだ屋台は飲み物を売っている。喉もかわいていたので丁度いいのではないだろうか。



「すいません。飲み物をください」

「あいよ! 2人分でいいかい?」

「あっ、はい。それでお願いします」

「はい、どうぞ。4ゼファーだ」

「……はい。どうも……」



 なんか思ってたのと違う。出てきたのは大きなジョッキに入っているオレンジ色の飲み物である。そして、ストローが2本刺さっている。……なんで?

 これは完全にセラと一緒に飲まなくてはいけないやつである。



「蓮斗。飲まないの?」



 そして何気にセラが乗り気なのが俺にトドメをさす。そんなこと言われたら飲まないわけないだろ!

 俺はとうとう諦めて片方のストローに口を加える。ひとくち飲んでみると爽やかであっさりとした飲み物で味を例えるならばりんごのような感じだった。言わずとも、この飲み物を飲むにあたって必ずセラと向かい合って飲むことになる。それもかなりの近距離で。故に恥ずかしくて俺の顔が赤くなるのは必然であって、それを隠すことすら出来ない。

 セラはそんな俺を見て嬉しそうに微笑む。俺の赤面のどこに嬉しくなる要素があったのだろうか。その後は一緒に屋台でなにか食べたり、俺に群がる動物達と一緒に遊んだりした。実はセラが動物に触ろうとすると逃げて俺の背後に回り込んだりとしてセラが落ち込んでいたのは内緒だ。ちなみに、セラを慰めるのは滅茶苦茶大変だということを理解した。ただ、言葉をかけるだけでは無意味のようでハグを要求してきたりしてきた。その上、やっと歩き始めるのに30分はかかったのだが……。



 セラとのデートは恐らく、いや絶対に普通のデートよりもハードなものだった。でも、セラと一緒にいて嫌だとは一切感じなかった。むしろ楽しいとさえ感じた。



 ――また、セラとデートできる日が来るだろうか。


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