13話:刻印所持者、セラとデート1
日にちを開けてしまいすみません!
「私と蓮斗の家を作ります」
どうしてこうなったかというと遡ること30分――
「ぜ、絶対神様ともなると私の屋敷では満足に生活もできないと思われます! もっといい部屋を用意いたします!」
「別に気にしなくても良いです」
「いや、ですが」
「いい加減にしなさい! ルルナさんが困ってるでしょう!?」
うわお。神様にも怯まない那月さんマジリスペクトっす。
とまあ、ふざけるのもここまでにしないと本当に世界が滅びそう。
「まあまあ、那月さん。別にルルナも困ってる訳では無いと思うんだが?」
「え、ええ! そうです! むしろ絶対神様が私の屋敷に……屋敷に……絶対神様が私の屋敷で生活するぅ!? どうしようルビア!」
「おお、お、落ち着いてください! こういう時は10秒息を止めるのがいいらしいですよ!」
それしゃっくり止めたい時な。それにその方法ってあんまり効かないんだよなぁ。
そんなような騒ぎが少し続いて、ついに痺れを切らしたのかセラが口を開く。
「私と蓮斗の家を作ります」
ふむ。流石セラといったところか騒いでいる真っ最中であちらこちらでもセラの声が響く。
……ん? 今なんて言った? 俺 と セ ラ の 家 ?
一瞬俺の頭は真っ白になる。だが、幸いなことにすぐに脳は機能し始める。よくよく考えてみればセラが言ったことなのでそんなに驚きもない。むしろ「ふーん、そうなんだ」くらいのものである。
「ですから土地を私にください。もちろんお金は払います。必要とあらば何倍の値段でもいいです」
「あ、え?」
「大きさは 一軒家くらいの大きさで構いません。私はこれから蓮斗とデートに行くので」
「え? あ、はい?」
「それでは頼みましたよ」
風を切る音と共に景色が変わった。
屋敷の中で座っていたのに一つ瞬きをして目を開けるとそこは屋敷ではない。外でセラに腕を抱きつかれながら立っていた。
そこは絶え間なくガヤガヤと賑やかで静かさを知らないような街である。
「さあ。デートしましょうか」
「でもルルナは?」
「デートしましょう」
「え?、いや」
「デート」
「あ、はい」
これはデートから逃げられないやつだ。こういうのは大人しくセラとデートした方が身のためだな……。
俺は目が虚ろになりかけたセラの要求を受け入れた。まあ、別に断る理由もないんだがな。それに、セラが喜ぶのであれば俺としても本望である。
……ルルナにストレスがたまらないように話を聞いてあげよう。
俺は固く決意した。
だがまあ、今はセラとのデートを楽しむことにしよう。言わずもがな俺は初デートとなる。セラが満足できるデートになるかどうかわからないが出来るだけ努力しようと思う。
僅か3分後。早速壁にぶち当たってしまった。よくよく考えても見れば絶世の美女とも言えるセラと一緒に歩いたらこうなる訳であって別に不思議な話ではない。だが、俺はセラのことを舐めていた……。
「あの女性可愛くないか?」
「ちょっと、誘ってこようかな」
「隣にいる男は誰なんだ?」
「なんか普通の男だな。まさか付き合ってるのか?」
俺らの周りには人混みが大変なことになっている。ちょくちょく、俺の悪口が聞こえるがそんなことはどうでもいい。今はセラのことで手一杯なのだ。
「少し、黙らせてきますね」
「セラの黙らせるだと大変なことになるから! 俺は気にしないから! 今を楽しもうぜ!」
「ああ。なんて寛大なのでしょうか。流石蓮斗ですね」
セラがキレる前に俺がなんとか宥めて事なきを得ている。まだ始まって10分も経っていないのにこんなにも大変だとは思わなかった。初デートがこんなことになるとは……。まあ、相手を考えれば当然なのかもしれないが……。
そこからさらに追い打ちをかける輩が現れた。
「なあ。そんなやつなんか放っておいて俺と遊びに行かないか? 絶対、そんな男より俺の方が楽しいって!」
ねえなんなの? どうしてそんなに俺をいじめたがるの?
まあ、セラの美しさが招いた事実だ。なんて言われたらなんにも反論できないんだがな。
こいつに対する対処は2つある。
まず1つ目は
「悪いが今は俺とデート中だから諦めてくれ」
と言う。これはかなり恥ずかしいし、相手が逆上して来ないか心配だ。だが、このままでは大変なことになるのでやるしかない。そして2つ目は殴る、これは最終手段としてとっておこう。まあ、2つ目はないと思うが。
「……殺す」
はい作戦変更! 殴ります!
やばいよ! まさか感情に起伏のないセラがここまでキレるとは思わなかった……!
俺は迅速にセラをナンパした男の目の前に移動し、出来るだけ手加減してアッパーを打つ。男は少し上に飛んで背中から地面に倒れた。このままだと大騒ぎになってデートどころではないのでセラの手を握って路地裏に逃げる。殴ったことは悪いと思うが命を助けてやったのだから感謝してほしいものだ。




