12話:刻印所持者、セラの正体を知る
第7月4日
俺は今までで最高に質のいい睡眠をとることができた。理由は言わずもがなセラのおかげである。今、その彼女は絶賛爆睡中である。本当ならば、彼女を寝かせたままにして朝食でも取ってこようかと思ったのだがセラは俺のことを逃がさないと言わんばかりにぴったりと抱きついている。すこし強引でもセラの手を外そうとしたのだが、セラの手は一寸たりとも動かない。一生懸命セラから逃れる方法を模索しているとガチャ、と音を立ててドアが開いた。
「レント様。そろそろ朝食のじゅん――失礼いたしました」
「まてルビア!」
声をかけたが無慈悲にそのドアは閉められた。
俺は今絶賛正座中である。何故そんなことになったかというと当然セラのことに関してである。俺と見知らぬ美女が同じベッドで一夜を過ごした。という情報はルビアにより瞬く間に広がった。
今、俺の前には明らかに怒っている那月さん、ニヤニヤと楽しそうにしている瑠里香とルビア。そして落ち込んでいるルルナがいた。なんでも理由を聞いてみるとこんなにも圧倒的な美を見せつけられて女として負けた気分だと言っていた。
「それはそうとどうしてその女性が神田さんの部屋にいたのかしら?」
「え? いや、えと……どうやって侵入したんだ? セラ……」
「……転移魔法ですがなにか?」
ヤッバイ! セラまた怒ってる! くそっ! また俺が宥めなくては……!
次にどうやってセラの機嫌をなおそうか悩んでいるところまた恐ろしい爆弾を1つ投下した。
「「転移魔法!?」」
いきなり大声で叫ぶのでセラを除く俺達はびっくりして体を跳ね上げてしまった。その時、俺の腕にだきついていたセラが俺の腕の衝撃で舌を噛んでしまったようで涙目になっていた。セラの涙目+上目遣いが可愛すぎて危なかった。
「て、転移魔法は人間はおろか魔法に長けたエルフですら使えない伝説の魔法ですよ!? そ、それが使えるのはぜ、ぜぜぜぜ」
「お、お嬢様! 呂律が回っていませんよ! ゆっくり……落ち着いてください」
「そ、そうね……転移魔法を使えるのは『絶対神:セラフィロア』様だけなんですよ! まあ、でも絶対神様はそうやすやすと姿を見せませんからそこの女性は嘘を――」
「あ、セラの本名は『セラフィロア』だから」
「あばばばばばば」
「お嬢様ぁぁ!」
ルルナが泡を吹いて気絶してしまったので今、ルルナが復活するまでセラを撫でて待っている。皆の視線が痛いがこれはセラの機嫌を損なわないようにするためのもので、決してセラの撫で心地がいいからとかそんな理由では断じてない。
にしてもセラの髪の毛は本当にさらさらしていて撫でる方も気持ちがいい。それに時々セラに手櫛をするがセラの髪の毛が一切引っかからないという全ての女性が羨ましがりそうな髪の毛をしている。実際、那月さんと瑠里香がずっとこっちを見ている。瑠里香に関してはニヤニヤと観察しているようだ。本当に今思ったんだが瑠里香がニヤニヤしなかったのってこの世界に来た最初とうざい勇者が来た時だけだろ? なんか……寝てる時もニヤニヤしてそうだ。
なんて失礼なことを考えながら俺はセラを撫でる。
「セラって女神だったのか?」
「ええ。まあ確かにそう呼ばれていましたね。興味ありませんけど」
「はは、セラらしいと言えばセラらしいな」
俺は軽く笑ってまたセラを撫でる。うん。なんど撫でても飽きないなこの髪の毛。
「うぅん……」
「お嬢様! 気が付かれましたか!?」
「ルビア、私は変な夢を見ていました……絶対神様が私の目の前に現れたんですよ……レントさんが連れてきたんですよ……? ふふ、変な夢ですよね」
「残念ながらお嬢様それは全て現実です」
「え?」
「現実です」
「…………」
また、気を失いかけたが今回はなんとか大丈夫だったようだ。早速、セラについて話し合うようだ。那月さんと瑠里香はともかくルルナとルビアが心配だな。あまりの緊張でまた気絶しないか心配だ。今だってルルナはガチガチに緊張しているのだから。