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刻印所持者の魔法  作者: 紅ノ月
1章:三度の喪失
11/26

11話:刻印所持者、今やるべき事は

12月24日修正しました。

- 刻印所持者の魔法 11話 リメイク -

「こんばんは。蓮斗」

「セラ……?」



 昨晩のことは夢ではなかった。

 その事実は俺にとって幸福をもたらしてくれた。もう1度彼女に出会うことができて、また抱きしめたい衝動が湧き上がるが俺はなんとか抑えることに成功してそっと安堵した。だが、同時に冷や汗が溢れる。何故ならば俺が彼女を見る限り昨晩と変化したところがあるからだ。服装などの変化ではない。それによく見ても変化に気づけないほどわかりづらい変化なのだ。いや、本来ならばこんなにも危機感を感じることは無い。『彼女』だからこんなにも危機感を感じているのだ。



「……怒ってるのか?」

「怒っていません。別にこの屋敷の当主やメイドとイチャイチャしてたから怒っている訳ではありません」



 やばい。俺は今までの人生の中で一番の危機を感じた。このままにすれば本当に取り返しのつかないことになると俺は確信した。一刻も早くセラの怒りを鎮めなくてはいけない。



「……セラの言うことを何でも聞く。だから機嫌をなおしてくれない?」

「今何でもって言いましたよね? 約束ですよ?」

「ああ。約束は守る。その代わりちゃんと機嫌をなおしてくれよ?」

「任せてください。……じゃあ早速お願いです。私と添い寝してください」

「え?」



 こいつは、出会ってすぐの相手に添い寝を頼むのか? いや、まあ昨晩にハグしたやつが何言ってんだって話なんだが……。



「嫌でしたか……?」

「はあ……ほらこっちおいでよ」



 駄目だ。セラからは逃げられない……。あんな、悲しい顔されたら男としてやりきるしかない。



 俺は今絶世の美女といえる女性と添い寝をするという男が羨ましがるようなことをしている。とは、いえ無いとは思うがセラがハニートラップを仕掛けている可能性だったゼロではない。



 彼女はすうすうと規則正しく寝息をたてている。本当はセラを背にして寝ようと思ったのだが、それでは添い寝の意味が無いと言われて結局向かい合って寝ることになった。添い寝だけでもドキドキしてままならないのにセラはぴったりと俺に抱き着きながら寝ている。おかげでセラの心臓の鼓動が聞こえそうな距離である。

 おまけに俺の片足は俺が自由に動かせない。その理由はセラが足を絡めているからだ。無理矢理にでも足を引っ張ろうとしたのだが驚くことに俺の足はピクリとも動かない。よって俺は諦めてセラの操り人形となっている訳だ。

 この時点でも十分ドキドキするシチュエーションではあるのだがセラにより、さらに威力のある攻撃が俺には繰り出されることになる。



「んぅ……れんとぉ……」



 時々セラが寝言を言うのだが、その寝言が本当に甘ったるくて思わず顔が熱くなるほどだ。そしてその度に俺の胸元に顔を埋めてくるので余計にドキドキしてしまい、心臓の音がセラに聞こえないか度々心配になる。

 このまま朝までこんなことが続くのかと思ったその時、またセラが寝言を漏らした。いい加減耳を塞いで聞こえないようにしようかと思った。だが、今回の寝言は衝撃的で言葉を失った。



「あぁ……バレン……ワー……行かないで…………もう……ひとりは……」



 その言葉を聞き、俺の体は熱を失い息さえもするのを忘れた。頭に鈍器で殴られたような鈍い衝撃が俺を襲う。彼女はどれだけの長い時間をひとりで過ごしたのだろうか。自分に怒りを覚え、自分自身を殴りたくなる。例え足掻こうがどうしようもないことだったとしても少しでもセラのことを忘れずにここに来れば良かった。

 自分を攻めるのは簡単だ。だが、いまやるべきことはそれではない。少しでも記憶を取り戻し、セラが辛い思いをしなくても済むようにすること。

 今の俺には俺しかこれしかできないが……。

 俺はセラが流した涙を優しく拭き取り、セラのことを思いっきり抱きしめる。



「……ずっといっしょ……」



 セラの抱きしめる力が強くなった気がした。

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