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trip! -the special collaborations-  作者: 霧原菜穂、ジョン・ドウ、水成豊
7/18

【霧】 doubt ~fact、の、続き~ ※

この作品は、前回のジョン・ドウさんによる「fact」を受けて、霧原菜穂さんが書いてくださった続きです。

霧原さん、ありがとうございます!


(ちなみにこのお話、ボイスドラマもあるのですが、後程改めてアップしますのでお楽しみに……みらくるまじかるぱわー炸裂ッ!)

 雛菊ひなぎくから衝撃の……でもどことなーく果てしなーく曖昧な事柄を告げられた統治は、1人、仙台支局に戻り……自分の席で、Yah◯oのトップ画面を見つめていた。


「厳密に言うと繋がりともちょっと違うんですよね…何といいましょうか…その人を形作る要素の一つ…因子みたいなもの、それが同じなんです」


「はい。さっきも言いましたが、同じ因子を持つ人が出会うこと自体が珍しくて、興味深いことなんですから。あ、あの日はお疲れになりませんでした?」


「そのあたりのことは私もあんまり知らされてないんですよね…。とりあえず平たく言うと、おもしろいからやっちゃえーみたいなノリなんだそうですけど」


 彼女は最後まで笑顔で「深刻になる必要はない」と言っていたが、やはり、気になってしまう。

 自分と同じ声を持つ他人との出会い、因子、高次元の存在……自分の身の回りでは、一体何が起こっているのだろうか。

 雛菊が解説役を担っている時点で、既に自力ではどうしようもないような、至極面倒な事態だということは嫌でも分かる。名杙なくいとしても、彼女と関わるのは最低限にしておきたいのだ。雛菊によってもたらされる利益は確かに大きいが、その分のリスクも計り知れない。それは、秋に起こった一件(※)で、統治自身も身にしみていることだった。


================

※ボイスドラマ「エンコサイヨウ四重奏」のことですね。いろんなキャラが入り乱れて仙台を駆けまわっておりました。再アップ待ってますよ霧原さん(笑

================


 とはいえ、統治がリスク覚悟で雛菊と接触した理由、それは……。


「やはり……同じだった」


 一度目はまさかと思った。でも、二度目には確信に変わる。


 雛菊と分町ぶんちょうママ――この『東日本良縁協会仙台支局』を見守る『親痕しんこん』――も、声が同じなのだ。

 トーンや喋り方の特徴は違えど、根本的に同じだということが分かる。確信に至る根拠は全くないが、直感でそう感じたのだ。

 政宗やユカが気付いているかどうかは分からないが、そんな話になったことがない。

 統治1人だけが確信を得ている理由、それは……恐らく自分が、彼女たちと同じ因子を持った存在だから。


「――あら、お困りかしら、統治君?」


 刹那、天井付近から声が聞こえる。見上げると、ワイングラスを手に持った分町ママが、ゆったりと統治を見下ろしていた。

「分町ママ……」

「そろそろ私に聞きたいことがあるんじゃないかと思ってね。雛ちゃんと会ってたでしょう?」

「雛ちゃん……やはり、知り合いだったんですね」

「まぁね。知り合いというか、飲み友達というか、ソウルメイト的なサムシングというか……一言では言い表せない関係なのよ」

「はぁ……」

 頬を紅潮させて饒舌に語る分町ママ。コレは、ひょっとしなくても、もしかして……。

「分町ママ……大分酔ってますよね?」

「出会いから話すと長くなるけど、聞きたいー? 聞きたいわよねー☆」

 聞きたい気持ちはあるし、そのほうが強い。ただ……統治は知っていた。ここから語りだす分町ママは果てしなく自分語りが長くなると。

 コレはいずれ、ママの飲み相手となる政宗と、年齢がセーフティーネットとなって冷静に話を聞いてくれそうなユカがいる時に、改めて問いただすほうがよさそうだ。

 そう判断した統治は、分町ママから視線をそらし、再びパソコン画面を見つめる。

「今日は……遠慮しておきます。まだ、自分の中できちんと整理出来ていないので」

「えぇ~? そーんな堅苦しいこと言わないで~ママの話を聞いて頂戴よ。そうなの、あれはまだ、私が死んだ直後のことなんだけどねー」

「聞いてないのに勝手に話し出す……!!」

 統治が顔をしかめ、イヤホンをしようかと本気で検討に入った次の瞬間――


「――あら、楽しそうな会合ですね。是非、私も混ぜてもらえませんか?」


 閉ざされている扉を背にして、コチラへ笑顔を向けるのは……分町ママと同じ声帯を持つ、例の彼女だった。

 彼女――雛菊は硬直する統治へ笑顔で近づき、「ハロー」と手を振る分町ママに「ごきげんよう」と笑顔を向ける。

「というか、先ほど別れたばかりなんですけどね、私たち」

 雛菊の姿に気がついた分町ママは、好機とばかりに目を輝かせる。

「雛ちゃん雛ちゃん、統治くんが私たちの出会いについて聞きたいって言っているから、2人して話をしてあげましょうよ」

「あら、そうなんですか統治さん。しょうがないですねぇ……分かりました、ただし、女性の話が長くなるのはご愛嬌ですよ」

「いや、俺は、その……」

 狼狽する統治を無視して、2人は着々とどこからともなく取り出したアルコールをセッティングしていき……そして……。


「さぁ、二次会の始まりですよ」


 雛菊の声が宴会の開幕を告げた瞬間、統治は自分がこの場から逃げられないことを……諦めるしかなくなった。




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