とある滅びゆく国の小学生
(注)この小説は、大半が日記形式で書かれています。
わたしは今日、朝九時ごろにおきました。かんぜんにねぼうしてしまいました。いっしょのへやのあきちゃんは、わたしをおこしてくれませんでした。
「えー、わたし、何回もおこしたよ?」
あきちゃんはこう言いますが、わたしはおきられませんでした。
「わるいのは、あきちゃんです」
わたしはきょうかんにこう言いましたが、あいてにしてくれませんでした。おかげでわたしは、きちのまわりを五しゅうも走らされることになりました。とてもつかれました。
そのあと、わたしはみんなより少しおそく朝ごはんを食べはじめました。わたしの大すきな、たまごかけごはんでしたが、おそかったせいで、おかわりできませんでした。
朝ごはんがおわると、すぐにきちをしゅっぱつになりました。わたしたちのてきを、たおしに行くためです。
たくさん歩いてたどりついたまちは、きのうより、たいへんなことになっていました。いろんなビルがくずれて、はい色の山になっていました。くずれてないビルも、黒っぽくよごれていたり、うえのところだけなくなってたりしていました。
わたしたちのはんは、そんなビルのひとつを、今日のきょてんにすることにしました。というよりよくよくしらべてみたら、おとといわたしたちがとっさににげこんだビルと同じでした。おとといにわたしたちが食べた、ひじょうしょくのゴミがおちていたからです。けど、そのときは、まだ三かいから上もあったので、まったく分かりませんでした。今日のせんとうは、たいへんそうだなと思いました。
わたしたちは前の日にねぶくろを広げたところに、今日もってきたぶきを広げました。わたしが手にとったのは、少し小さなじゅうでした。グロック19だと、きょうかんがあとで教えてくれました。にぎったときに、いままでつかったことのあるほかのじゅうより、つかいやすそうだと思いました。「今日は何人ころせるんだろう」と、とてもわくわくしました。
すぐに、今日のこうどうがはじまりました。なぜなら、すこしはなれたとことから、バーンとかドーンとか、そういう音が聞こえたからです。
「よし、いくぞ!」
きょうかんがいいました。
「「おー!!」」
わたしたちはみんなで、こぶしをあげました。
まずきょうかんが先にうごき、そのあとからあきちゃん、まいちゃん、あきとくん、ゆうとくん、そしてわたしとつづきます。
しばらくいくと、こうさてんでせんとうが、もうはじまっていました。わたしたちとはべつのチームが、じゅんびにはいる前にこうげきされてしまったようでした。まだみんな、いどう用のカバンをせおっていたのです。しかし、そのチームのどこを見ても、きょうかんらしきひとのすがたは見えませんでした。
きょうかんががうしろをふり向きました。
「えんごするぞ」
きょうかんが手で合図しました。てきに見つかってはやばいので、わたしたちは声を出さず、コクリとうなづきました。
ここからわたしは、あきちゃんとペアを組んで、すぐそこのがれきのかげにかくれました。すぐそこでは、てきがマシンガンをれんしゃしていました。わたしはそのうしろにそっと近づき、後ろからそいつの頭をうちぬいてやりました。ちをふんすいのようにふきだしながら、てきはくずれおちました。ちがわたしの顔に、すこしかかりました。さいわい、目には入りませんでした。
「きさま~!!」
すぐとなりでうっていたなかまが気づいて、わたしにショットガンを向けました。しかし、それをかくれていたあきちゃんが思いっきりジャンプしてハンドナイフで首元を切ってくれました。ちがはげしくふき出しながら、そいつはたおれていきました。
「ありがとう、あきちゃん」
「どういたしまして」
すこしちをあびたあきちゃんは、えがおでそう言いました。
まわりを見回すと、ほかのチームメイトも、てきをうまくころせたみたいでした。きょうかんが、もう一つのチームのメンバーと話していました。わたしも走って、きょうかんののもとにかけつけました。
「そうか、分かった……」
きょうかんはうつむきながらそう言いました。とてもかなしそうでした。
「なあ、おまえたち」
きょうかんがふり向きながら、わたしに言いました。さっきまでのかなしそうな顔は、もうしていませんでした。きょうかんはきりかえが早い人なのです。
「このチームのキャプテンがやられちまったらしいんだ。これから一緒に行動するが、いいよな?」
「うん」
わたしはうなづきました。なかまがこまっていたら、おたがいにたすけ合う。これは、きょうかんが教えてくれた、大切なことですから。
「みんなもいいよな?」
「「うん」」
すこし下がって見ていたみんなも、うなづきました。
「よし、じゃあ人数もふえたし、いったんきょてんに帰ろうか」
そう言ってきょうかんは走りだしました。大きななしゅうげきにあったときは、いったんきょてんに帰って、たいせいをととのえる。これも、きょうかんが教えてくれたことです。わたしたちは走ってきょうかんについていきました。
きょてんに帰ると、わたしたちがのこしてきたものはそのままありました。まだこっちまで、てきはきていないようでした。
「じゃあ、じょうきょうをせいりしよう」
そういってきょうかんは地図を広げました。わたしたちがいまいるまちの地図です。
「まほ、どういうことがあったのか、もういちどくわしく話してくれるかな」
新しくくわわったなかまの一人のまほちゃんに、きょうかんがいいました。こくりとうなづいたまほちゃんは、地図をゆびさしながらせつめいを始めました。
「てきはわたしたちがきょてんにするよていだったこのビルに、すでにいました。わたしたちが今日、このまちにきょてんをおくことは知られていたみたいで、やつらはすぐにわたしたちをおそってきました」
まほちゃんはそこでのばした手をだらんとさせました。
「とちゅうで、きょうかんがおとりになってくれて、どうにかあそこまでこれたのですが、さっきのせんとうで二人やられてしまいました。そこを、あなたがたにたすけてもらったのです」
「じゃあ、ないぶにスパイがいるかのうせいがあるな。よし、あとでほうこくしておく」
そしてきょうかんが顔をあげてつづけます。
「それより今は、このまちからでることを、考えたほうがいい。もうここが見るかるのも、時間のもんだいだろう」
きょうかんはそう言って、立ちあがりました。
「これよりわれわれは、このまちからのだっしゅつをこころみる。おまえら、おれについてこい。そして、ぜんいん生きて帰るぞ!」
「「はい!!」」
わたしたちは強くうなづきました。
わたしたちはビルを出て、くるときに通った道を、ひきかえしはじめました。でも、そのとちゅうで待ちかまえていたてきに、出くわしてしまいました。
「走れ!」
きょうかんは私たちに向かってさけびました。わたしたちはひっしに走りました。
何人かのてきが、目の前からつっこんできました。きょうかんとあきちゃんが、そいつらにこうげきをします。すると、てきもこちらをこうげきしてきました。わたしはがれきのかげにとびこみました。ほかの人たちも同じことをしました。いえ、したはずでした。
かげからてきのほうを見ると、てきがじめんに向かって何発もたまをうってうました。そして、その下にはあきちゃんがたおれていました。
「あきちゃん!」
わたしは思わず声を出してしまいました。かくれているときは、絶対に声を出さないようにしなさいと、きょうかんに言われているのもわすれてしまっていました。
こちらに気づいたてきがこちらにじゅうこうを向けました。しかし、その後ろからかくれていたきょうかんが、てきの頭をうちぬいてくれたので、わたしはたすかりました。
てきがぜんいんいなくなりましたが、遠くからたくさんの足音が聞こえてきました。
「いまのうちにいくぞ!」
「でもあきちゃんが!」
わたしはせんじょうのまんなかに、あきちゃんをおいて帰りたくありませんでした。
「いいから行くぞ!」
きょうかんは先に走りだしてしまいました。ほかのの子もそれにつづいてついていきます。わたしもいくしかありませんでした。
ずっとずっとはしって、とうとうてきもおってこなくなりました。ずっと走っていたわたしたちは歩きはじめました。
帰り道、私たちは何も話しませんでした。
またいっぱい歩いて、わたしたちはきちに帰りました。
「あの、きょうかん」
わたしはきょうかんに話しかけました。
「あきちゃんを、どうしておいていったのですか」
わたしはそうきょうかんにききました。べつに答えが知りたかったわけではありません。たぶん、わたしはきょうかんにたいしておこっていたんだと思います。
するときょうかんはしゃがんで、わたしををだきしめました。
「本当に、本当にもうしわけない」
きょうかんは、強くわたしをだきしめながら、泣きはじめました。
「あきちゃんは、もう、もどってこないんだ。それにあそこで止まったら、おまえたちまで、しんでしまうかもしれなかったんだ……」
きょうかんは泣きながらわたしに言いました。わたしも、きょうかんといっしょにたくさん泣きました。
その後、きょうかんはほんぶにほうこくしてくるといって、歩いて行きました。わたしたちは、歩いて自分たちのへやに帰りました。
いまこの日記は、だれもいない、一人のへやで書いています。きのうまでは、日記はあきちゃんと一緒に書いていたので、とてもさびしいです。
これで、わたしたちのきちにいる同い年の子は、いなくなってしまいました。わたしは、いなくなっちゃったそんなひとたちの分までがんばって、てきをぶっころしてやろうと思っています。あしたからも、がんばりたいと思います。
◇ ◇ ◇
「森田、入ります」
「おう、入れ」
鉄でできた重い扉を俺は開けた。やすい作りの机とイス、そして二組の棚があるだけだ。電気が通っていないので、窓から入ってくるのは沈みかけの太陽だけだ。
「今日、第一部隊の田端指令がなくなり、我々の部隊をふくめ三名の子どもが亡くなりました」
「……そうか」
「あと、もしかしたらスパイがいる可能性があります。田端指令は待ち受けを受けていたのかもしれません」
山中総司令は窓の外を向いたまま静かに答える。その背中は、どこか寂しげにも見える。
「あの、総司令……、ひとつ、聞いてもよろしいでしょうか」
「……ああ、なんだ」
「もはや我々の国は……その……大変言いづらいのですが、……もはや、我々に勝ち目はないのではないでしょうか」
「……」
総司令は窓の外を見続けている。
「昨年から、我が街はほとんど機能を失ったままです。人口も二桁まで落ちており、さらにそのほとんどが子ども。戦闘ができる大人は、もはや我々だけです。もはや戦闘さえも子どもに頼らざるを得ない状況に陥っています。それでも、この戦闘を続ける意味はあるのでしょうか」
「……それは、あいつらが言ったのか」
総司令が口を開いた。
「あいつらとは」
「部隊の子どもたちのことだ」
「いえ、私個人の考えです。やはり忘れてください」
たぶんこれはふれてはいけない話だ。あまりこのことを考えすぎると、俺もおそらく死んでしまうだろう。
「失礼します」
俺は一礼して、その場をあとにすることにした。
「森田、この国にはスパイがいると思っているか?」
ずっと黙っていた総司令が口を開いた。
「……いえ、正直いないと思います」
人口が少ないこの国にスパイを潜り込ませても、すぐにばれてしまうだろう。
「私もそう思う。こんな国、スパイなんていなくても簡単につぶせるだろう」
「総司令、私はそこまでは……」
「たしかに、もはやこんな戦闘、続けても仕方ないんだと思う。わたしも、正直終わりにしたいさ」
総司令の言葉がが俺に飛んでくる。俺は足を止めた。
「だが、我々はあの子たちを戦争の道具にするために育ててしまった」
総司令は淡々と話し続ける。
「たぶん、この国は全員が死なないと戦争を終われないんだと思う」
全員が死ぬまで戦争を続ける。いままでの状態からそんな感じの状態なんだろうと思ってはいたが、まさか、本当だったとは。
「なあ、森田。私はこの国を滅ぼす方向に進め続けなければならない。それでも、私についてきてくれるか?」
総司令が私の背中に問いかける。
「当たり前です」
そういって俺は振り返る。
「私はあなたの国の住人です。最後まであなたについていきます」
そう言って俺は、扉を開けて部屋の外に踏み出す。
「すまない……」
閉じる扉の向こうから、総司令の静かな声が聞こえてきた。
こんにちは。チョビさんです。
この作品は、僕の趣味が高じて生み出された小説です。きっかけは、大学での講義でした。ですます調の文章で過去形を使うと幼稚な文章になると言われたので、だったらあえてそんな文章を書いてみようと思った訳なのです。
今回、この作品を書くに当たって、小学生の文が必要になったんで、ネットで必死に探しました。また、より幼稚な文章にするために、漢字を少なくしました。使用した漢字は、Wikipediaを参照にして、小学二年生までにならう物だけにしてあります。また、ひらがなばっかりになって読みにくくなっているので、読点をすこし多めにしてあります。そこがさらに幼稚な感じをさせていると思っています。まあ、ぞれでもかなり読みにくくなっているので、ごめんなさい。
今回のタイプの作品は、シリーズにする予定はありません。単発の予定です。もっと読みたいという方はTwitterや感想欄にお願いします。もしかしたら書くかもしれません。
短いですが、これで後書きを終わらせていただきます。ありがとうございました。