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龍を統べる者  作者: 雪見だいふく
雷龍 キサ
6/23

知り合い?

ライに揺られながら、王城についた瞬間、エリシアは帰りたいと思った。十メートル以上はあるかと思われる門の前で、待機していると、ゴゴっと門が開き、中に入るように促される。

いつの間にか騎士たちが先頭に立ち、エリシアたちとキサは、後列にいた。

騎士たちが王城の中に入る時、キサがエリシアの側に来て、両手を伸ばしてくる。


「?…何ですか?」

「何って…降りるための手伝い」

「いえ…自分で降りられます」


エリシアがライから降りようとすると、すかさずキサが正面からエリシアの腰をふわっと持ち上げ、地面に降ろす。

持ち上げられた時、エリシアの胸がキサの眼前にあり、エリシアは顔をカアッと赤面させる。しかし、キサは気にしていないようだった。


「……」

「何?嫌だった?」


キサがエリシアの顔を覗き込むと、エリシアはふるふると首を横に振った。


「そう?良かった」


キサが黒目を細め、優しく微笑む。エリシアにとって、何故ここまで面倒を見てくれるのか理解できなかった。

そのまま、キサは先に王城の中へと入っていった。


ライは嫌がったが、王城にいる馬番に預けると、リンが呟く。


【シア。やっぱり、あの男おかしいわ。シアにあんなに過保護にするなんて…まさか…】

【なになに?】

【シアのこと気になっているんじゃ…!】


「……」

【……】

【えええ!】


リンは衝撃を受けたような表情を浮かべるが、エリシアとシンはそれはないだろうと思いながらも、黙っている。エリシアの左肩に乗っている、サンは真に受けているが…。


【ああ!きっとそうよ!もうあの男に関わっちゃダメよ!シア!あ、ちょっと待って!】


リンが一匹で暴走している時に、エリシアはもう王城の中へと進んで行った。

実は、リンは冷静沈着(れいせいちんちゃく)に見えて、結構思い込みが激しいところがある。








◇◇◇







騎士たちが向かっていた方向は、王城の最上階にある広い客間だった。

そこでしばらく待てと命令され、エリシアたちとキサ以外は全員退出する。エリシアは何をすることもなく、部屋の真ん中にある五人掛けのソファの隅っこに、ちょこんと座った。


当然のようにキサもエリシアの後をついてきて、エリシアの真横を陣取(じんど)ろうとするが、リンがガウっと吠え威嚇(いかく)をし、体を割り込ませた。

そのため、エリシアとキサの間に人一人が座れる空間ができた。


「君の(おおかみ)、僕に威嚇しているんだけど。警戒心強いね」

キサは、気にする風もなくリンを見て笑っている。


「すみません」


エリシアはリンの頭を、ポンっと叩くがリンは相変わらず、キサに向かって威嚇している。


「リン!」

【嫌よ!私はどかない!シアのことは私が守るの!】

【おいおい…。ここは王城だ。いくらなんでも、非常識なことはしないだろ】


リンが興奮している反面、エリシアの右肩に乗っているシンは至って冷静だ。

そのまま、リンの興奮は収まらないまま、いくらか時が過ぎた時…ー


「やあ。ご苦労様。ここまで大変だったろう」


男の低くハスキーな声が、扉から聞こえてきた。

エリシアたちが扉の方へ振り向くと、柔らかそうな黒髪に、穏やかな黒い瞳の長身の男が、柔らかく微笑みながら、騎士を三人背後に従えて入室してきた。おそらく、20後半だろう。

エリシアはその眩しく神々しい容姿に、思わずガタっと立ち上がる。それを見た男は、くすくす笑い座ってと言った。

男の背後にいる騎士たちは、隊長と副隊長と…確か、キサに突っかかっていた人だ。



「それにしても随分久し振りだ、キサ。元気そうだね」

「ああ。君もね」

「おい!貴様!陛下に敬語を使えといつも言っているだろう!」


(陛下!?この方が?)


陛下がエリシアたちの向かい側のソファに座り、キサに話しかけると、陛下の背後に控えていた一人の騎士が怒鳴る。

エリシアが目の前にいる男が陛下だと認識することもできずに、キサは口を開ける。


「僕はかたぐるしいのは苦手なんです。それは、以前にも言いましたがねえ」

キサは、悪びれもせずに長い足を組む。


「くっ…!」

騎士は、悔しそうに眉を潜めた。


「まあまあ、君たちは相変わらず仲が良いね」

「どこがです!?」


陛下が柔らかく笑いながら言うが、騎士は嫌そうに顔をしかめており、キサも同様にしていた。



「ところで、自己紹介がまだだったね。私は、アストランティアの国王レオン・リテールだ。可愛らしいお嬢さん、フードを取ってくれないか?」


陛下がエリシアをじいっと見つめるが、エリシアはぶんぶんと首を振る。


「おい!女…」

再び騎士が、声を荒げるが陛下が片手を上げ黙らせた。


「大丈夫。私たちはあなたを見て、侮辱しない。迫害もしない。どうか、私たちを信じて顔を見せてくれないだろうか?」


陛下の真剣な声音に、エリシアはちらっと陛下を見る。すると、穏やかな瞳が優しく細められているのが分かった。

エリシアは何故か、この男に悪を感じなかった。まさに、善の塊のような人だと思った。

エリシアは決心してフードに手を掛け、パサッと脱ぐと男たちの息を飲む音が聞こえた。



「きれいだ…」


今まで、ぎゃあぎゃあと声を荒げていた騎士が、ぽつりと呟く。それを聞いた副隊長と陛下が大笑いをする。


「あはははは!ゼノが女の子を見て、呆けているの初めて見た。あ、あははは…!」

「ぶふふ…っ…ふふ…っ」

「ちょ!何笑っているのですか!」


ゼノと呼ばれた騎士が、顔を真っ赤にさせる。


「くく…ふっ……はあ…あー笑った笑った。あー、はは…はあ。お腹痛い」

「知りませんよ!」


陛下の笑いは止まらず、ゼノは涙目になり、恥ずかしそうに片手で顔を覆う。


「ごめん、ごめん。新鮮だったからさ。……でも、本当にきれいだよ。あなたのお名前は?」


陛下はようやく笑いを収め、エリシアと顔を合わせる。


「あ…エリシアと申します」

「エリシア…可愛らしい名前だ。あなたにぴったりだね」


陛下がにこにこ笑いながら、さらっと赤面することを言うものだから、エリシアはたじたじになる。


「反応も初々しい。…このまま、私の側にいることも…」


「ダメだ」


陛下の言葉を遮り、キサが横から口を挟んだ。


「…おや。キサが余裕なさそうにするなんて…今日はいい日だな。あなたのおかげで、二人の珍しい一面を見れた」


陛下がにこにこ笑いながら言うが、エリシアはどう返事を返したら良いか分からなかった。








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