表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
龍を統べる者  作者: 雪見だいふく
雷龍 キサ
4/23

城下町

エリシアの小屋から、城下町まではライの脚で一刻である。その間は道中(どうちゅう)、皆の下らない話や笑い話などをしていた。


【眠い…】

シンがライの(たてがみ)の上で、ゴロンと横になり呟く。


【何言っているの!シン。そんなことで、シアは守れないよ!】

【心配するな。お前と違って、俺は俊敏力(しゅんびんりょく)には自信があるから】

【何よ!私にだって、あるよ!】


ライのたてがみの上で、双子のリスザルがぎゃあぎゃあと喧嘩(けんか)を始める。


【あんたたち、少しは黙りなさい。そんなんじゃあ、町についた途端、脱力するわよ】


この中で一番最年長の、リンが静かに(さと)す。


【大丈夫よ。体力には自信あるもん】

【へえ。この前、俺とドングリ取りに行く時に、先にバテていたのは誰だっけなー】

【な…!い、今更蒸し返さないでよ!あれは、休憩していたの!休憩…あ!】

【くく…だから、バテていたんだろ】

【…うー】


シンがサンをからかうものだから、サンは涙目になっている。エリシアは可愛そうになり、手助けをした。


「シン。あんまりサンをいじめるものじゃない。サンも口では勝てないのだから、喧嘩腰(けんかごし)にならない」


二匹は、エリシアに怒られシュンと耳を()れさせた。そんな反省している姿に、エリシアの胸がキュンとなりデレっとなる。


(可愛いなー)


【シア。顔が崩れているわよ。シンはおそらく、確信犯だから騙されないで】


「え?」


【おい、リン。余計なこと言うなよ】

【シンは、シアのデレっとした顔が見たいだけだから】


リンが暴露(ばくろ)すると、シンは照れたのかふてくされたように、エリシアの腰にある袋の中に入った。


【ほら。図星でしょう?坊やの考えていることなんて、お見通しよ】

ほほほと、高笑いするリンをサンは尊敬の眼差しで見る。


【さすが、リン!シンを口で負かすなんて、すごい!】

【もっと言って】


また、ほほほと、笑うリンにライは呆れた眼差しで見ていた。



道中で話しながら進んで行くと、眼前に城下町が見えてきた。まだ先だが、最奥に白で統一された立派な王城があり、手前にはたくさんの建物と人々で密集している。

太陽も昇り、町に朝市が開かれ、新鮮な魚や野菜が店に並べられているのだ。

エリシアは、町に降りるためマントを深く被り、ライから降りて山を下っていく。



町中の至る所に人々で溢れ、エリシアはぶつかり謝ることもできない程、(にぎ)やかで活気(かっき)があった。

ライを連れているので、人々が避けてくれ、何とか前には進めているが、それでも目的地までは遠い。


【もうー、何なの?今日。人、多すぎ】

ライが文句を言う。


「確かに、多いね。(もよお)しでもあるのかな」


今日は確かに、今まで町に来た時よりも、人々で(あふ)れていた。人々だけではなく、エリシアのように馬を連れて歩く人もいたり、荷馬車を持って店を回っている人もいる。


それに、人々の格好が普段よりも華やかだ。女性は、頭に花冠を着け、ふわりとした絹のドレスを着ていた。男性は、胸元に色とりどりの一輪の花を着けており、服装もこの国の伝統であるチャッカを着こなしていた。

いずれも、年若い男女だった。

エリシア一行は、浮かれた町中に疑問を覚えるも、目的地まで歩いて行く。



表通りを外れた裏通りに行くと、一気にガランとし、人々はいなくなった。どうやら、裏通りに住んでいる人々も表通りに行ったのだろう。人、一人、いやしない。


【わあ、なんか不気味だね。誰もいないなんて。やっぱり、今日何かあるんだよ】

【そうね。とりあえず、行きましょ】


ライが顔をしかめ足を止めると、リンは表情を変えることなく鋭い瞳で前を向く。


進んでいくと裏通りの奥にある、小じんまりとしたレンガで造られた一軒の建物が見えた。

エリシアがその建物に入ると、中から低く(つや)っぽい男性の声が聞こえた。


「はい。いらっしゃい」


声の主は、腰まである長い黒髪を後ろに一つで束ね、口にはキセルをくわえていた。目元は垂れており、黒目だが力強い瞳でエリシアを見ている。エリシアよりは5つ年上のはずだが、柔らかい物腰からもっと年上に見える。すらりとした体躯で、見た目は美形に入ると思う。性格は(なん)ありだが。


「やあ。お嬢さん。今日はどういった用件で?」

「いつもの薬を買いに来ました。今日はこれとこれ。あと、これも追加で」

「はいはい」


エリシアは、店の中にある棚からいくつか、小瓶を手に取り男の元へ持っていく。男はてきぱきと、小瓶の中から薬草を取りだし、袋に詰め込んでいく。


「はい。お待ちどうさん。まいどあり」

「ありがとうございます」


エリシアが金貨を机上に置き、袋を受け取ると、ふと気付いたように男に問う。


「あの、今日は何かあるのですか?いつもより、町が賑やかだったので」

「ああ。今日は、王女の誕生祭(たんじょうさい)だよ。未婚の若い男女は、浮かれて踊ったりするのさ」

「どうしてですか?」

「……」


単純に疑問を尋ねると、男はにやっとして机から回り、エリシアの目の前まで来ると、やんわりとエリシアの(あご)を掴み、上向かせた。エリシアは驚くが、されるがままになる。


「聞きたい?」


やけに色っぽい低音と、艶っぽい視線を向けてきてエリシアの背がぶるっと震える。


「き、聞きたくない」


エリシアは首を振り、男から離れる。男は、キセルを吸って吐き再びくわえる。


「そんなに警戒しなくても。僕たちの仲じゃないか。幸い、僕たちも未婚だから一緒に踊らない?」

「踊りません」

「つれないねー。お嬢さんは。君と同年代の女の子たちはもっと健気(けなげ)だよ?」

「……そうですか」


男の呆れた言い分に、エリシアは眉を潜める。


「あ、今バカと思っただろ?」


男は、楽しそうに笑う。エリシアには、何が面白いのか理解できなかった。


「もう帰ります。おじゃましました」

「あ、待って。お嬢さん。途中まで送るよ」

「え?結構です」

「まあまあ、そう言わずに。送らせてよ。いやらしい意味なんてないからさ」

「…!」


エリシアは、男の発言にかあっと赤面した。それを見た男はにやりと笑い、顔を近付けてくる。


「何?顔が赤いよ?どこに反応した?」

「っ……」


男は距離を縮めてきてエリシアは後ずさるが、背中に扉がトンと当たる。

追い詰めた男は、エリシアの顔の横に腕を置き、もう片手で流れるようにエリシアのフードを取る。茶色がかった金髪が男の眼前にさらされ、窓から太陽の光が漏れ、エリシアの金髪をキラキラと輝かせた。

男はしばらく無表情で、エリシアを見下ろしていた。いつものような飄々とした雰囲気はなく、何を考えているのか分からない。


エリシアは男の表情を注意深く見ており、微動(びどう)だにしなかったが、やがて男は体を離す。


「…やっぱり一人で帰れる?ごめんね、意見を変えて」

「……いいえ」


男は再びキセルを吸い吐くと、室内に煙が充満する。エリシアは帰ろうと、男に背を向け扉に手を掛けるが、男に言い残したことを言うために、首だけ男の方へ向ける。


「…あと、あまり、それは体に良くありません。自分にも他人にも害になりますから、なるべく止めてください」


エリシアがそう言った時、男は驚いたようにこちらを見る。


(何か変なこと言ったかな…)


エリシアは固まった男の状態に、首を傾げる。すると、男ははっとしたようにエリシアから顔をそらした。


「これは……そうだね。なるべくしないようにするよ。忠告ありがとう」


男はエリシアに微笑む。エリシアは男の言い掛けた言葉の続きが気になったが、追及はしなかった。


「じゃあ…帰ります。ありがとうございました」

「うん、気を付けてね」


男は微笑んで手を振った。エリシアはペコッと頭を下げ、扉を閉めた。








評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ