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龍を統べる者  作者: 雪見だいふく
地龍 ハルト
18/23

龍の証

「ん…」


エリシアは、窓から()れる朝日に目覚めた。

まだ寝ぼけ(まなこ)を手で擦り、ゆっくりと上体を起き上がらせる。

その反動で布団がめくれ上がり、お腹に乗っていたリンがわっと声をあげる。


「あ、ごめん」

【もう起きるの~?まだ眠いよ~】


リンは、枕元にいたシンにすり寄って、再び丸くなる。シンはうっとおしそうに身じろぎをするが、リンを押し退()けたりはしなかった。

何だかんだいって、リスザルの双子は仲が良いのだ。


エリシアの足元で寝ていたリンも、まだ眠そうに唸っている。

エリシアは仕方なく一人で里を探検しようと思い、仕度もせずに髪や瞳をさらけ出して、朝日を浴びようと廊下に出た。








◇◇◇








まだ朝明けで、地龍の里は静寂に()ちていた。

アストランティアとは違い、清々(すがすが)しい朝で空気がとても()んでいた。

ふと、水の流れる音が聞こえ、森の中を進むと、奥に小さな滝が流れており、周辺は木で囲まれた小さな川があった。

朝日にキラキラと輝く川はとても綺麗で、エリシアは顔を洗おうと、川の側まで行った。



チャポン…ー


すると、滝の側で水が跳ね上がる音が響き、そちらに目をやると、こちらに背を向けた裸の男性が水を浴びていた。

エリシアはその透き通るような白い肌に、ドキッとし慌てて木の影に隠れるが、彼はまだエリシアに気づいていないようだ。

エリシアは再びそうっと、彼の背中を見るが、白い肌よりもさらに興味深いものを見つける。


彼の右肩には、緑色の(うろこ)が浮かびあがっていた。

否、肩自信が鱗だった。


エリシアは驚きを隠せず、その右肩に釘付けになる。

すると、ふいに彼が水を(したた)らせながら、くるりと身体を反転させた。

エリシアは慌てて木の影に隠れるが、ジャボジャボと水の中を歩いてくる音が聞こえる。


(こっちに来る)


ドキンドキンと、心臓が暴れていくのを感じながら、エリシアはぎゅっと目を(つむ)る。



「シア様?」


側から聞こえたのは、チャポという水音と男性の少し高い声。

エリシアがおずおずとそちらに目をやると、ハルトが不思議そうに覗き込んでいた。


「は、ハル」

「はい」


エリシアがハルトの名を呼ぶと、ハルトは嬉しそうに微笑んだ。


「な、なんで」

「え?ああ、シア様の香りがしたので。龍は鼻がよく()くのです」

「そ、そうだったね」

「ところで、こんな朝早くにどうしましたか?」

「えっと…と、とりあえず、服を着てからにしようか」


目の前に程よく締まっている男性の裸体で、エリシアは混乱していた。

何せ、初めて男性の裸体を見たものだから、ハルトを直視できないのだ。

エリシアが目のやり場に困っていると、ハルトも察したのか慌てて遠ざかっていった。



(うう…。男性に面識がなさすぎるから、どうすればいいのか分からない……)


エリシアはますます、顔を赤くしていった。












◇◇◇










「先程は申し訳ございません、シア様。お見苦しいものをお見せしてしまって…」

「え!ぜ、全然!」


ハルトは急いで服を着たのか、胸元のボタンをかけ違えていた。髪はポタポタと(しずく)が流れ落ちていき、喉を伝って服の中へと入り色気が半端ない。

エリシアは再びハルトを直視できず、俯き加減でハルトと並んで座っていた。


「あの…風邪ひくよ?」

「あ、私は体調を崩したことはありません。身体が丈夫なものですから」


ハルトはさらさらな前髪をかき上げながら、にこりと微笑んでいる。

エリシアは益々頬が赤くなるのを感じながら、ハルトと目を合わせずに下を向いていた。



「ハルト様!」


すると、遠くからシャラの声がハルトを呼ぶ。


「ハルト様!何ですかその格好は!はしたない」

「はしたないとは何だ。水を浴びていたのだから、仕方ないだろう」

「では、さっさとお戻りください。いつまでもそんな格好でうろついていたら、女子(おなご)たちが豹変しますぞ」

「う…そ、そうだな…で、では戻ろう…」


ハルトは途端に青ざめ、すくっと立ち上がりエリシアにも手を貸す。


(何かあったのかな)


ハルトは先程までにこにこと話していたのに、今は堅い表情を浮かべていた。


「あ、エリシア様。キサ殿がまだお目覚めにならないのです。申し訳ないのですが、起こしに行っていただいてもいいですか?」

「え」

「なに?シア様のお手を煩わせるわけにはいかん。私が行く」

「ハルト様は、湯を浴びるのが先です。お身体も冷えてらっしゃいます」


シャラは強引にハルトを連れていき、エリシアはポツンと一人になる。

もう朝日は完全に昇り、チラホラと里の人々も支度をし始めていた。

エリシアはふうっとため息を吐くと、キサの部屋に向かう。


昨夜のキサの様子がおかしかったので、エリシアの気分は重かった。







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