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龍を統べる者  作者: 雪見だいふく
地龍 ハルト
16/23

ドンドンドンドドンドドン…ー




外から地龍の里の、歓迎会及び儀式を行っているのが聞こえてきた。太鼓や笛の()が響き渡り、女性は全身白い服装から、華やかな色とりどりの服装を(まと)っていた。


エリシアも(たび)用に着ていた服を脱ぎ、白の無地に腰や(すそ)(えり)回りに美しい刺繍(ししゅう)が描かれた、地龍の里特有の正装を着ていた。

マントも脱ぎ去り、茶色がかった金髪を()み込みにし、頭上で緩やかにまとめてある。

そんなエリシアの姿に、地龍の里の女性たちはうっとりするようにエリシアを見ていた。


「お綺麗です…」

(まこと)に…天女(てんにょ)様のようです」


口々に()(たた)えられるので、エリシアは頬を染めてありがとうございますと苦笑する。

今、エリシアは与えられた一室の部屋で、女性たちに着替えさせられ、全身を(いじ)られていた。

こんなに人々に、姿をさらしたことはなかったので、エリシアは戸惑いながらも自身の姿を気味悪がらず、受け入れてくれることに感謝をしていた。

一人の女性が用意ができたと、扉の外に言うとキサが入室してきた。


「………きれいだよ、お嬢さん。見違えた」


キサは驚きに目を見開いていたが、すぐに目を細め微笑んだ。

キサも旅用に着ていた服を脱ぎ、黒の無地に腰や裾、襟回りに赤や黄色の刺繍(ししゅう)を描かれた、足首まである服装を(まと)っていた。

黒髪と黒目のキサにとって、全身を黒ずくめにすると、色気が倍増(ばいぞう)されまた印象が変わる。


まるで、悪魔のような……。


キサの魅力はエリシア以外にも感じており、女性たちはキサをチラチラ見つめており、頬を赤く染めてもじもじしていた。

キサが微笑むだけで女性たちは顔を真っ赤にさせ、両手で頬を(おお)っていた。

エリシアは何故か面白くなく急に立ち上がり、キサの横を素通りし、部屋を出る。



エリシアとキサが広場に行くと、地龍の里の全員が集まっており、歌って踊っていた。

シャラが二人に気付くと、皆の注目を向けさせる。


「皆、止めよ。こちらを見てくれ。このお方は先代、リシン様のお嬢様エリシア様である。そして、こちらは雷龍のキサ殿だ。お二人はハルト様を迎えに来て下さり、世界の秩序を守るために尽力を尽くしてくださる。今宵(こよい)(うたげ)で、これからの喜びを共にしようぞ」


おおーっと男性陣は叫び、女性たちは躍りを再開させる。エリシアとキサは、中央にシャラやハルトがいる場所へ誘導された。



「今宵はまた一段とお綺麗ですね。エリシア様」

シャラが微笑みながら、エリシアに言う。


「あ、ありがとうございます」

「ええ、ハルト様も思いますでしょう?」

「………ぁぁ」

「え?何ですかな?聞こえませんでした。もう一度」

「……綺麗だ!」


シャラに(うなが)され、広場中に聞こえるほど大きい声でハルトは叫んだ。

途端、広場中が笑いに包まれ、ハルトは顔を真っ赤にさせお酒の入った(うつわ)をぐいっと(あお)る。









◇◇◇









踊りの終わった女性たちが、わらわらと中央に集まり、話し掛けてくる。


「先程のハルト様の声、聞こえてましたわ。女性を()める時は、しっかりと目を見て言うものですわ」

「そうですわ。でも、ハルト様はまだ純粋でいらっしゃるから、そういったことにはまだ教えることがたくさんですわね」

「あら。じゃあ、ハルト様。踊りましょうよ」

「あ、おい」


二人の女性に連れていかれ、ハルトはお酒が入った状態のまま、無理矢理女性たちの相手をさせられていた。

エリシアは地龍だからといって、気兼(きが)ねしない里に微笑ましい気分になる。

そして、ハルトがいなくなると今度はキサに女性たちが数人集まる。


「ねえ。お名前はなんて言うのですか?」

「キサ」

「キサ様は、お年はおいくつなのですか?」

「22」

「あら。じゃあ、私たちよりも年下なのですね。見えないですわ」

「君たちの方がきれいだから、見えないよ」

「あら、まあ。女性に見えないといった発言は嫌ですわ。でも、男らしいから許してあげますわ」

「ねえ、キサ様は…」


女性たちはキサを質問攻めにし、お酒の(しゃく)をどんどん追加していく。キサも満更(まんざら)でもない様子に、エリシアは面白くなさそうに横目で見る。

そんなエリシアの様子に、シャラは苦笑した。


「エリシア様、私の酌でよろしければいかがですか?」

「あ、ありがとうございます」


ぶすっとした顔を見られたのが恥ずかしく、エリシアはちょびちょびとお酒を飲む。


「彼女たちも久し振りの宴ですからね。嬉しいのです。今宵ぐらいは許してやってください」

「許すもなにも…私は何とも思っていません」


強気なエリシアに、シャラは分かっているとでもいうように微笑みながら頷いた。

エリシアとシャラが、他愛(たあい)もない話をしていると…ー


「長老…いいですか」


一人の男性が、シャラの斜め後ろから話し掛けてきた。シャラの耳元で何かを言うと、シャラは(まこと)か?と呟き、エリシアに断りをいれてから、男性と共に遠くへ行った。

エリシアはどうしたのだろうかと思いながらも、ふいに話し相手がいなくなってしまい、キサをチラッと見るが、相変わらず女性たちと談笑していた。

エリシアはその光景に、眉を潜めるがあまり見ないようにした。

すると、一人の青年がエリシアの元にやって来る。


「エリシア様、よければ私と踊ってくれませんか?」

「え?」

「簡単な踊りです。大丈夫です、私がしっかりと誘導しますから」


青年はエリシアの両手を取り、立ち上がるよう促す。その力強い腕に、エリシアはふわっと身体が浮かび、青年に手を引っ張られながら中央から離れた。


「あ、あの…」

「大丈夫です。こう見えて私は、踊りが得意なんですよ。それに、あなたと話してみたかったのです」

「え?」


青年は真面目に言っているのだろう。深い青の瞳は、真摯(しんし)にエリシアを見詰めている。


「手を私の肩に…そうです、安心して任せてください」


青年はエリシアの片手と腰を掴み、足を緩やかに動かし始める。とても、ゆっくりでエリシアも難なくついていくことができた。

次第に、青年との踊りが楽しくなり、エリシアは笑顔になり、くるくると踊り続けた。青年も楽しそうに踊っていた。








◇◇◇










青年と踊り終えると、次々と男性陣がエリシアの周りを囲んだ。


「エリシア様!今度は、私と踊ってください」

「いや、私と!」

「おい、(ぬし)ら止めろ。むさ苦しいだろ。エリシア様、私はいかがですか?」


男たちが矢継(やつ)(ばや)に、エリシアに踊りの相手を求め、エリシアはおろおろとする。

困っていたところをキサが現れ、男たちを牽制(けんせい)した。



「はいはい、この子はもう終わり。君たちじゃ恐れ多いからね。別の子を誘いな」


口調が刺々しいキサに手を取られ背中に隠された。

男性陣は反論していたが、やがて諦めたようにすごすごと別の場所に行った。


「お嬢さん。勝手にふらふら行かないで。心配するだろ」

「別にふらふら行っていない。誘われたから行っただけです」

「簡単に男についていっちゃダメ。何か下心があるかもしれない」

「そ、そんなのない!キサだけだよ」

「分かっていないね、お嬢さん。男は皆、狼なんだよ」


キサにしては、随分突っ掛かってくる。いつものニヤニヤした顔じゃないし、(いら)ついているようだった。

エリシアは少し怖いと思い、キサに掴まれている手を振りほどくが、ぎゅっと強い力で握られる。


「っ…そんなに言うなら、キサが私と踊ってよ」

「え?」


あっと思った時は、もう遅かった。キサは驚きに目を見開いて、エリシアを見下ろしていた。

エリシアは、かあっと顔を赤くし、何でもないと言いもう一度手を振りほどこうとするが…ー


キサはぐいっとエリシアを引っ張り、腰に手を添え、片手をぎゅっと握る。

そして、そのまま足を動かし始め、エリシアを誘導した。


「キサ?」

「…なに」

「あ、あの…」

「もう黙って」


キサは有無を言わせずに、エリシアの身体を支え、踊りに集中させる。エリシアは先程踊った青年よりも踊りに集中できず、キサの襟回りの刺繍を見つめながら踊り続けた。

キサが支えている腰と片手が、異様に熱いのは気のせいなのかもしれない…。








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