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龍を統べる者  作者: 雪見だいふく
地龍 ハルト
15/23

新たな力

「あなたは…」


ハルトは美しい瞳のエリシアから、目が離せなかった。赤みがかった紫の瞳が、ハルトを真っ直ぐに見詰めており、硬直したように身体が動かなかった。

しかし、無理矢理足を一歩…二歩と進めると、エリシアが近くなる。

もっと近付いてみたいと思い、歩を進めるとエリシアが目の前におり、宝石のような瞳がハルトを見上げていた。

その時、今までずくずくと疼いていた右肩よりも、心臓が狂ったようにどくどくと高鳴った。



(なんだこれは…)


ハルトは自信の胸を、片手で抑えた。今まで経験したことがない痛みに、ハルトは混乱する。


「あの…あなたが地龍なのですね?私はエリシアと申します。どうか、私たちと共に旅に行きませんか?」


可憐(かれん)な唇から、心を浮き立たせるような低くも高くもない心地よい声が、ハルトに話し掛けている。

ハルトは口を開けるも、声が喉につっかえたように出なかった。








***








エリシアはハルトの様子に、戸惑っていた。ハルトは一度もエリシアから、目を離さず見つめているのだ。

それに何も話さないので、変わりにシャラが話した。


「ハルト様は恥ずかしがっておられるのです。こんなに可愛らしいお嬢様は、見たことがないものですから」

「おい、シャラ。余計なことは言うな」


シャラが笑うと、ハルトはすかさず反応し(たしな)める。

だが、視線はエリシアに注がれたままだった。エリシアはその強すぎる視線に、どうしようと思った時だった…ー


「ねえ、あまりお嬢さんを熱心に見つめないでくれる?(おび)えてるだろ」


キサがエリシアを背後に隠し、ハルトの視線から(さえぎ)った。


「…なんだ貴様は」

「僕はキサ。君と同じ龍だよ」


ハルトはエリシアを見つめていた時よりも、さらに目力を鋭くしキサを睨む。せっかくの美形が恐しくなったが、キサは何でもないように澄ましている。


「龍………光が強い…雷龍か」

「今気付いたの?鈍いなー」

「…なに?」

「お嬢さんに、意識を持っていきすぎ。もう少し周りを見た方がいいよ」

「貴様に言われる筋合(すじあ)いはない」

「そう?言わなければ誰も言わないんじゃないの?」


キサはやけにハルトに突っ掛かり、エリシアはさらに戸惑う。シャラはそんな二人をまあまあと(なだ)めようとしているが、二人の勢いは止まらなかった。


「貴様には関係ない」

「そう?これから、旅をしていくんだから、せいぜい足を引っ張らないでね」

「私より、貴様の方が役に立たなそうだがな」


エリシアは、口の止まらない二人に叫んだ。


「いい加減にしなさい!」


ハルトとキサは、エリシアの叫びにビクッと身体を揺らし、動かなかった。エリシアはキサの背中から出て、二人の顔を交互に見る。


「もう!これから一緒に旅をしていくんだから、今仲を悪くしてどうするの?喧喧(けんけん)していないで、握手する!」


エリシアがまくしたてるように言うが、二人は固まったように動かない。エリシアは()ねているのかと思ったが、二人の顔は驚きに染まっていた。


「キサ?」

「……」

「……」


エリシアはキサを呼ぶが、返事は返ってこない。ハルトも無言だ。エリシアが(いぶか)しげな眼差(まなざ)しを送ると…ー


「これは…呪縛(じゅばく)ですね」

「え?」


シャラが二人の様子を見て、答えを(とな)えた。エリシアは呪縛?と尋ねる。


「はい。エリシア様、あなたは今お二人に言葉で、呪縛を唱えたのです」

「え?」

「五龍は"龍を統べる者"に、従えるために生まれてきた存在ですから、あなたが言葉で龍の身体を呪縛できることは、当たり前のことなのです。…いやあ。しかし、この状態を見たのも久し振りですね」

「え?」

「あなたの母上様も父上様を、こうして呪縛によって怒鳴(どな)り付けられていましたよ」

「ええ!」

「まあ、痴話喧嘩(ちわげんか)ってやつですけれどね。ルスラ様がリシン様に、そこに座りなさいって言うだけで、リシン様は従っていましたからねえ」


シャラは懐かしそうに、くすっと笑う。


「あの…それで解ける方法はあるのですか?」

「どうでしたかね…呪縛されても話すことはできたかと思いますが…」


エリシアとシャラが振り向くと、キサは何故か恍惚(こうこつ)そうに顔をにやけさせ、ハルトは顔を真っ赤にさせていた。


「キサ?」

「これが呪縛…すごくいい…」

「え!?」

「なんかいい…この支配されている感じ…」


エリシアはキサの変態発言に、ぎょっとする。シャラは苦笑いだ。


「……」


ハルトも俯いて顔を真っ赤にしプルプル震えているので、具合が悪いのかと思えば、キサは快感なんだろと意味不明なことを言う。

エリシアは新たな力を知ることができて嬉しく思うが、同時にキサの変態的な部分と、ハルトの性格を一部知ることができて良かったと思う。

……良かったのだろうか…?









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