ロックレス商会の息子
間違えて投稿をしてしまいました。
もう読んでしまった人は申し訳ございません。
今後、加筆、変更をしていく予定ですので、また読んでいただけると嬉しいです。
今回はすいませんでした。
「ロックレス商会の」
レティスは彼の名には心当たりがあった。
学院の隣接する地でシーランド商会と対をなす商会ロックレス。その後取り息子である彼。
「ロックレス様。まさか。あなたが現れるなんて」
ここで珍しいことにアリシアがトマズにむかって話し掛けた。
しかし。その声には不快感があった。
「これは、アリシア。未来の妻よ。ここで会うなど運命と言ってもいい。そうは思わないか」
空気が凍る。
彼の言葉はここにいる者達に衝撃をもたらしていた。
「私は、あなたの妻になんてなりませんわ。それに婚約は断り続けているはずですわ」
「相変わらずの強気、それはあなたの魅力だな」
彼女の言葉を受け流すロックレス。
「なあ。なんだ?あのナンパ野郎は」
「お前。言葉には気をつけろ。あいつはトマズ・ロックレス。俺達と同学で実力は、ランキングに入っている。人を見下すような奴だが実力は折り紙付きさ」
「ふーん」
面白くなさそうにロックレスをコクトは見る。
「お前。本当に興味ないんだな」
「あなた達の事は置いておくとして、本題に入ってもいいかしら」
「これは、失礼。では、アリシア。後でゆっくりと語り合おう」
そう言ってロックレスは元の位置に戻った。
「話しがずれてしまったわね。じゃあ。ミーティングの続きといきましょう」
レティスの言葉でこの件はここで終了した。
「海賊が出るのは、この辺りらしいわ」
海図を指差して説明していく。
「それで今日から、三十分の交代制で周囲の警戒をするわ。分担はすでに決まっているから発表するわね」
そう言ってレティスは発表していく。
次々と発表されていく分担。
「コクト・カミシロ君」
コクトの番が来た。
視線が痛い。
「えっと。俺も見回りで・・・す・・か」
周囲の視線が集中している。学院の問題生徒も見回りに参加など、実力意識がある者にとっては邪魔者にでしかない。
「周囲を見ていればいいわ。それに、荷物運びだけじゃあ。割りに合わないと思うのよ」
「は、はあ」
「ローネテンス様。俺は反対です」
トマズだった。
「逃げることしか能のない男など不要です。かえって足手まといになるだけかと」
声音からコクトを見下していた。
「皆もそうは思わないか」
周囲に意見を求め始める。
「ロックレスさん。これは生徒会長が決めたことです。あなたが口出しするようなことではありません」
エクラが反論した。声には多少の怒りが滲み出ている。
「ポリデウスさん。あなたがこいつを連れて来たそうですね」
「何が言いたいのでしょうか」
「いえ。あなたの善意は素晴らしいと思ったまでですよ。ただ・・・・」
言葉を切り
「そのような〝使えない〟奴を連れてくるなど、あなた様がこの任務に対する意気込みがかいま見える。と思ったまでですよ」
今度はエクラを見下したように言葉を口にした。
コクトを連れて来たことにエクラの考えはこの任務に対するミスだ、と言っているようなものである。
挑発は上手いな。流石、見下しているだけのことはあるな。
「ロックレスさん。あなたはご自身、何を言っているのか理解しているのですか!」
怒気丸出しに声を上げたのはヘレネだ。
「あなたが、エクラ殿。噂通りの女性だな」
トマズはヘレネに対しても見下す視線を向けた。
「あの〜。よ、よろしいでしょうか」
針積めた空気に響く弱気な声。
コクトだ。
船内の視線がコクトに注がれる。
「お言葉ですが、これ以上のいがみ合いは今後の任務に差し障るものになります。口論はそれくらいにして今後の話し合いを進めていくべきではないでしょうか?」
コクトの言葉に熱が冷めたかのように重い空気が消えていった。
「ほう。逃げることしか能のない者にしては上等な言葉ですね」
「何分。〝逃げる〟のには自信があるのですよ。こういう一触即発状態を〝回避〟することも」
ここで初めて、コクトとトマズの視線が合う。
コクトは彼の目を見る。
見下している。でも、なんだこの雰囲気は。
まるで自分が絶対的な有利だと思っているかのようだ。
パン!パン!
二拍子の拍手が鳴った。
「さ。ここまでよ。本格的に話し合いましょうか」
レティスの言葉を皮切りに改めて話し合いは再開された。
警戒に参加か。何もなければいいが。
コクトはこれからのことに思考を傾けるのだった。
「しかし。すごい奴だったな」
「そうですね」
静かな波の音がコクトとエクラの耳を刺激する。
「お前を真っ向から見下す奴が学校にいたなんてな」
「義兄上。すごいと思ったのそこですか」
「それに、周囲を気にせず婚約宣言。あれは驚いた」
「それに関しては同感です。シーランド嬢は断り続けていると言っておられましたが」
「だけど、あの宣言のせいで彼女があの男の婚約者だ、と印象付けられたのは間違いない。本人が断り続けていてもな」
継承者になる少年少女に身分は関係ない。しかし、貴族から出る者も多いため継承者には、高貴な家柄から出るという風潮があった。
今回の任務にはその貴族出身者が幾人かいた。
「本当に上に立つ者っていうのは、面倒なもんだな」
「一応。私もその一人なんですが・・・」
エクラの言葉にコクトは、そうだったな、と呟くのだった。