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廃墟の死闘

「おのれぇ!!出てこい!!」

ラックスが怒りにまかせて叫んだ。

すると廃墟の周囲から幾人かが現れた。


「なるほど。どうりで気配が多いと思った」

「もとから私達を始末するつもりでしたのですね」

「そうだ。このことを知られたからには生きて帰すわけがないだろう!」


「アリシア嬢。お身体は」

「見くびらないでほしいですわ」

そう言って三又の矛を出した。


「海現せよ。母たる恵みの泉の海神。ポセイドン」


詠唱を呟き、手には金色で装飾のされた矛が握られた。


神矛 ポセイドン。

それがアリシアの神器だ。


海を統べる海の神。その偉大なる海神が振るう金の矛。


「さあ。今まで私達にして下さったことを利子もつけて倍返しにさせていただきますわ」

さっきまで縛られ、痛めつけられた後とは思えないほど優雅に構える。


「随分とやってくれましたな。エクラ・ポリデウス」

ここでダイルが口を開いた。

「これ以上の失態は、私の命が危ういのでね」

ここに来てダイルからこれまでに見せたことのなるほど邪悪な神威を放出したのだ。


「本性を現したか」

エクラがエクスカリバーを構える。


「エクラ・ポリデウス」

そこで今まで口を開かなかったフードの男が口を開いた。

「お前は、お前のけじめをつけろ」

その言葉に一瞬エクラは男を見た。

「はい」

頷いた。そしてその刃をラックスに向けた。


「ヘレネ・ポリデウス。俺の後ろから出るな」

ヘレネは男に名を呼ばれ驚いた。

「た、助けていただいたことには感謝します。しかし。私もお兄様の御前。守られているつもりはありません!」

プライドのあるヘレネはそう叫ぶ。

しかし。背後から迫ってきたカオスに反応できなかった。

「!」

それをいつ背後に回ったのかさだかでない早さで男がカオスを倒した。

(斬ったの・・・)

その動きを目で捉えることはヘレネにはできなかった。


「勇ましく叫ぶのはいいが、自分の身すら守れないようじゃ〝大好き〟なお兄様の足手まといだ」

「・・・・・・」

ヘレネは言い返すことができない。

それを今実証してしまった。自分で。


「お姫さま相手にあなたは随分な言い方ですね」

様子を見物していたダイルが口を開く。


「戦場で姫という肩書きは、自分を狙えというキャッチコピーでしかないからな」

「随分なお言葉。あなた。〝こちら〟の人間ですか」

「さあ。どうだろうな」

淡々と答えていく。

「で、あなたは何者でしょう?」

「知る必要のないことだ」

「そうですか。では、あなたを始末した後にでもじっくりと調べさせてもらいますよ」

ダイルから邪悪な神威が放たれる。


「ほんと。邪悪だな。それに禍々しい」

フードの男は涼しげにそれを見る。

「随分と余裕ですね」

「狼狽える材料がないな」

「心外ですよ。ここまでしていながらその反応は」

「残念そうには見えないが」

「そうですか。しかし。その余裕はいつまで続きますか、な!」

先手必勝。ダイルが仕掛けた。

神威を纏った右拳が迫った。

しかし。標的は違っていた。

拳が向かった先にいたのは

「え」

ヘレネだった。

吸い込まれるようにくる拳。

ヘレネは反応することもできず、ただ、ただ見ているだけ。

ヘレネは怖くなり、目を瞑った。

数秒後には自分に拳が突き刺さる。

終わった。と思った。


だが、ヘレネは不思議に思った。あれほど近く迫っていた拳が自分に突き刺さらないことに。

目を開いて彼女は見た。

「随分な攻撃だな。本命を先に仕留めようなんて」

どうってことのないようにダイルの右手首を掴む男の姿を。


「何!?」

これにはダイルも驚愕していた。

それは成功すると確信していたためだ。こうも容易く防がれるとは思っていなかった。


「まあ。普通はそうするな」

当然という感じにフードの男は呟く。

握る手に力がこもる。

「う、く」

ダイルは振りほどき距離をとる。


「この実力、そしてその風貌。思い出しましたよ。あなたが噂に聞く〝共和国王子の懐刀〟か」

ヘレネもその名前は聞いたことがある。

自分の兄、エクラ・ポリデウスには、彼を守護する存在がいると。本人に直接聞いたことがあるが、そんなものは存在しないよ。と言われてしまった。

しかし。目の前に現れた。


「懐刀、か。いいネーミングだな」

男はフードの下で笑う。


「そうとわかればこちらも本気でいかせていただこうか」

ダイルの口調が変化する。そして神威が高まる。


「現れろ。力をもって、純潔を汚せ。オーク!!」

ダイルの手に禍々しい緑色の刃を持つ両手斧が姿を現した。


「神器というよりは、魔器(まき)か」

魔器。

それは神器と対を為す武器だ。神器と違って相手を選ばないのが特徴。使い手に強大な力を与える。


「オーク。随分と気持ち悪い魔器だな」

「この力を見て。余裕がこけるかな」

斧を大地に叩きつけた。

爆音とともに地面が抉れ、衝撃が大地に走り、ヘレネ達に迫る。


フードの男は慌てることなく神威を右手に集める。右手が輝き始める。

右手を地面に叩きつけた。

ダイルと同じく、地面を抉って地面を衝撃が走る。

中心で衝撃が衝突した。


爆風が周囲に吹き荒れる。


「やるな」

「口調が変わっているが」

「これを手にすると好戦的になってしまうのさ。それより、いつまで出し惜しみをしているつもりだ」

「どういう意味だ」

「開放したらどうなんだ。神器を」

ダイルが男を見据える。

「今の神威。これまでの動きでわかる。お前は、神器を持っている。そして何より強い」

両手斧 オークを男に向ける。

「開放しろ。さもないと後悔することになるぞ」


男は一つため息を吐く。


「いいだろう。見せてやる。だが、後悔するのはお前だ」


神威が一気に高まった。それは、活火山の噴火の如く。


「抜刀せよ。次代を呪い。権力を断ち斬る刃よ。ムラマサ」


男の右手に一振りの日本刀がその手にあった。


「いくぞ。ここからは全力だ」


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