最強の剣士
最近のアニメを見て、勢いで書いてみました。
これから先、修正を加えていこうと思っています。
楽しんでいただけたら嬉しいです。
快晴の下。
今日も日のもとで照らされている闘技場にてそれは行われている。
闘技場の中心で二人の少年が剣を交える。
刃と刃がぶつかり合う音は闘技場で奏でられる演奏の様。
闘技場の観戦席からは多くの少年少女達が応援の掛け声を両者に送っていく。
「はぁ!」
闘技場に気合いのある声が響く。そして叫びとともに剣は降り下ろされた。
しかし、相手の少年はそれに動揺することなく回避する。
相手の少年が降り下ろした時には少年は相手の背後に回り込み。
素早く左肩に一撃を叩き込んでいた。
鈍い音が鳴る。
「ぐ・・う・ぁ・」
少年はうめき声を口から漏らし崩れ落ちた。
そこで勝敗は決した。
「それまで!勝者。エクラ・ポリデウス」
審判者の男性が勝者の名を叫び勝敗が決した。
試合を見ていた観客席の生徒達からは割れんばかりの歓声と拍手が鳴り続ける。
闘技場の中心では、
「いい試合でした」
「強いですね。流石です」
エクラは自分の一撃で崩れている相手に手を差し伸べた。
相手はエクラの手を取り、立ちあがる。その表情は敗北したとは思えないほどすがすがしいものだった。
互いに固い握手を交わす。
これで今日の模擬戦は終了した。
「流石だね」
控室へと続く道中を歩くエクラは壁に寄りかかる人物に声を掛けられた。
「ありがとうございます」
エクラは貴族らしい振る舞いをもって一礼する。
「堅苦しい礼はいいわ。流石というのは本心からだから」
その人物、いや、彼女はこのきりっと締まったプロポーションを持ち、今着ている学院の制服はそのスタイルを惜しみなく強調している。
きりっとした目は快晴の空の色をそのまま塗ったような青い瞳とスカイブルーの長髪。その顔はきりっとした目裏腹にその表情は明るい。それは彼女の美しさと凛々しさをより引き立てている。
レティス・ローネテンス。
この学院の生徒会長にして学院最強の少女だ。
「あなたに称賛されるのは光栄ですよ」
「ふっ、その堅っ苦しい物言いはなんとかならないのかしら」
「すいません。"礼と敬意は言葉で表せ"と言われてきたもので」
「あの最強の剣士からのお言葉かしら」
「はい」
「流石は、最強の剣士の意志と剣術を継いだだけのことはあるわね」
最強の剣士。
その言葉に確答するのは人物は二人。
一人はここにはいない人物。そしてもう一人は彼女の目の前にいる金髪の少年エクラ・ポリデウスだ。
この事実は世間では有名であり、大陸中でその名は知れ渡っていた。
しかし彼女の言葉にエクラは初めて表情を曇らせた。
その表情は納得がいかない、といった感じだ。
「どうしたのかしら?」
「い、いえ。何でもありません」
慌てて取り繕うエクラ。
「そう。じゃあ、放課後に来てほしいわ。生徒会議が開かれるらしいから。遅くならないようにね」
「はい。わかりました」
そう言うと彼女は優雅と表現できる足取りでエクラとは別の道へと歩いていった。
その後ろ姿を眺めていたエクラはその後ろ姿を見て溜息を吐いた。
それは彼女の後ろ姿に見惚れたために吐かれたため息ではなかった。
「生徒会長も皆もわかっていない・・・」
苦笑が交じった声でエクラは呟く。
「本当に"継ぐべき人"が誰であるのかを、そして・・・」
自分の知る真実が口から零れる。
「本当の最強の剣士が誰なのかを」
一人だけになった道で彼のそんな言葉がむなしく消えてゆくのだった。
闘技場観客席。
「おい!起きろ!コクト」
「後、五分・・」
「皆退場し始めてるんだぞ!起きろ!」
コクトは目を擦って辺りを見ると生徒達が列を成して闘技場から出て行こうとしていた。
「そっか。終わったんだ」
眼鏡をつりあげて呟くだけ。
「終わったんだって、お前よく寝ていられるな」
友人のヒノ・カグチの呆れた表情を見てコクトは頬をかく。
「いや。昨日の夜眠れなくて」
「お前な。学院、最強の一角である。エクラ・ポリデウスの試合を見ないで寝るなんて異常だぞ」
「でも、眠いものは眠いし」
眠気には勝てない。自然の摂理さ。
「まったく。俺なんか固唾を飲んで見ていたぜ」
興奮気味に言うヒノ。その様子からどれほどすごかったのかが伺える。
「良かったじゃないか」
「お前な。本当に興味がないんだな」
「興味がないんじゃない。眠いんだ」
「たくっ」
ヒノは友人の言葉に呆れしかでない。
「お兄様の試合を見ていなかったですってぇ!?」
そこに少女の叫びが響き渡った。
金色に輝く美しい髪をツインテールに束ね、愛くるしさがある黄色の瞳、コクト達より身長は低いがそれでも少女は美しさがあった。
「ヘレネ様」
コクトは眠たいまぶたをこすりながら彼女の名を呟いていた。
ヘレネ・ポリデウス。
ポリデシス帝国の王女であり、エクラ・ポリデシスの妹だ。
「あなた。私達に対する挨拶をする態度ですか」
眉を釣り上げ、コクトを見てくる。
隣でヒノがあちゃーと手を顔に当てた。
(またやっちゃったよ。こいつ)
コクトとヘレネのやりとりはこの学院では有名になりつつあった。
エクラを慕っているヘレネが兄の事をどうでもいいといった感じに見ていたコクトに食って掛かったことが発端になったのだ。
「ヘレネ様すいません!こいつ、眠い時は常識ってものが欠落しているんですよ」
「まったく。なっていないわ。継承者としての自覚が足りな過ぎるわ」
「本当にそうですよね」
彼女の言葉に同意するヒノ。
「ヒノ。友人をかばってくれないのか」
「さすがにこれはお前が悪い」
「世界は残酷だ」
その言葉にがっくりと肩を落とす。
「とにかく!そのぐうたらなところはさっさと直して下さい!」
そう突きつけるように言うと颯爽と出口へと歩いていった。
(元気だなあ。本当に)
彼女の後ろ姿を見てコクトはそう思った。
「〝あいつ〟も大変だろうな」
「なんか言ったか?」
「いいや。何にも」
闘技場での観戦を終えてコクト達は講義を受けていた。
「いいですか。最終戦争ラグナロクが起こったのは約三千年前となります。そして、その戦争の当時から我々、継承者は参戦していました・・・」
教壇の教師が教科書を出して説明していく。
「今日も眠いな」
「お前は毎日眠いだろ」
「しかし。この歴史の授業はよくやるよな」
「当たり前だろ。今の世界の基盤なんだからな」
ここで、この世界について説明しておこう。
この世界の名はラグナロク。そして、この星の名は地球。
神、魔族、エルフ、そして人類と様々な種族が暮らしている。
この世界は天界、地界の二つに分けられている。
天界は、神、神の使いというべき天使達が暮らしている。
そして、地界。
今、現在学院があり、今全種族が暮らしている世界がそうだ。
この世界には人間おろか多くの種族が暮らしている。
「そして、最終戦争ラグナロク。これがなぜ、そう呼ばれているのかは・・。シーランドさん。答えて下さい」
「はい。最終戦争ラグナロクと呼ばれる所以は、この世界、ラグナロク全体を巻き込んだことによります」
シーランドと呼ばれた少女は「これくらい当然よ」と言って席についた。
最終戦争ラグナロク。
かつてこの世界には神々が住んでいた。おとぎ話のようだが事実だ。神々は住んでいた。この地界で。
この世界を創ったと同時に生命を生み出し、共に共存していた。
しかし神々は自分達でこの世界で戦いを起こした。それが最終戦争ラグナロクだ。何故神々が戦争を起こすことになったのか。それは今の人類にはわからない。それは人類の歴史の大きな謎とされている。
そして最終戦争の終わりと同時に神々は天界へと姿を消えていった。
しかし、間接的ではあるが現在は交流はしている。
だが滅多なことでは姿を現す事はなくなった。
「神々は最終戦争の反省により我々、地界で創造した種族に権利を渡し、見守る姿勢へと移行しました。そして、我々に力を与えました。それでは。カグチさんその力が何なのか答えて下さい」
「はい。神器です」
ヒノは立ち上がり答える。
「正解です。そしてその神器に選ばれ、それを使う者を。コクトさん」
教師の指名に。
「コクトさん」
返事はない。
それは当然だからだ。
なぜなら。
「おい!コクト!起きろ!」
本人が寝ているからだ。
「ふぁ。すいません。寝てました」
コクトの言葉に
「まあ。期待はしていませんでしたが、もう一度言います。神器を扱う者をなんと呼びますか」
「継承者です」
答えた。
継承者ー。通称サクセッサー。
神々が戦争で使用していた武器、道具を使うことを許された者達の総称である。
各国は継承者が国の武力、要になるために育成に尽力している。
サクセッサーの数だけ国力がある。
そう考えられているのだ。
「その通りです。次回からはもっと早く答えて下さい」
「はい。すいませんでした」
教師に謝罪の言葉を述べてからコクトは席についた。
「お前な~」
「悪い。だけど滅茶苦茶眠くて」
「お前何時に寝てるんだよ」
「夜の十三時」
「九時に寝ろ」
コクトの返答をバッサリとヒノは切った。
「酷い」
「酷いのはお前の生活リズムだ」
そんなやり取りがなされていく中、講義は進んでいくのだった。
コクト達が授業を受けてリる頃。
こちらも授業が行われていた。
中は言葉で表現するなら日本の道場と同じ造りをしている。
ここは「訓練所」継承者の基礎的な身体能力と武術を鍛えるためにある場所である。
訓練所の中からは生徒達が己の技術を研鑽しようとする気合いの入った掛け声と木剣の打ち合う音が鳴っている。
その中でも一際注目されている場所があった。
そこには多くの生徒が固唾を飲んで見守る。それがこの場の空気を緊張させる原因になっていた。
両者は互いに距離をとり、相手の動きを伺う。
一人は木刀を下段に
もう一人は上段に構える。
空気は張りつめていく。
「は!」
「やぁ!」
両者が動いたのは同時。
振り下ろされる木刀。右切り上げに振られた木刀。
両者の中心で木刀がぶつかる。
数秒間の鍔迫り合い。
そして、ほぼ同時に後方へと跳躍。
「さすがだな」
「そちらもです」
地を蹴り、再び衝突する両者。
しかし最初の仕掛けたのは彼女の方だった。
流れるような動きで木剣を振るっていく。
その動きは例えるならくるくると回転する一凛の花だ。
そんな美しい動きには隙は全くない。だが、相手の彼はその攻撃を見事に受け流していた。
しかし、ここで事態は変化した。
彼が一気に彼女の間合いへと飛び込んだのだ。
そこに彼女の隙が生まれる。
彼の木剣が右切り上げに振るわれ、彼女の木剣が手から離され、空中へと舞い、円を描きながらクルクルと周り、最後に床へと落ちた。
「参った。私の負けです」
彼女は降参の意を表し手を上げた。
「ありがとうございました」
エクラは彼女と握手を交わした。
それから後に道場内を割れんばかりの歓声が沸き上がった。
「しかし。お前はすげえよな。エクラ」
「そんなことはないよ。今回は彼女の隙をつけれたから勝てたもんだよ」
「それでも俺達にとっちゃあ彼女の隙をつくなんて難しいもんだ」
友人の称賛に照れ臭くなるエクラ。
「それで今日の放課後は」
「ああ。今日は会議の日だよ」
そう。今日は月に週に行われる大切な会議だ。
「大変だな。まあ当然だよな」
友人はそう言って考えに耽り始めた。
そう。今日は大切な会議だ。
これからのことを考えてエクラは道場に備え付けられている脱衣所へと歩いていった。
放課後。会議室のような場所にエクラはいた。
大理石の床に机が置かれ、椅子が横に一席、縦に左右二つずつ合計五つの椅子が置かれている。
エクラは椅子の一つに腰かけ左右を見ると自分を入れた男女五人が既に座っていた。
「お疲れ様。エクラ」
「いえ。間に合ってよかったです」
レティスの言葉に丁寧に答える。
彼女は一回、コホンッ!と間の空気をただしてから
「それでは、これより生徒会議を始めようと思う」
室内に彼女の厳格で凛々しい声が響いた。