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歩く賢者の石  作者: 望月二十日
一章
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第4話:エルフのノイエさん

「基本的に私が動くから。あなたは獲物を追い立てたり、荷物を持つのを手伝ってほしいの」


「俺も狩りくらいできますけど?」


 先ほどのギルドでのやり取りが微妙にトラウマになっていた。

 俺だってできるんだ、という気持ちが湧いてくる。


「悪いけどお金が必要なのよ。大体のことは私がするから。その代わり報酬は多めに頂かせてもらうわ」


 こっちは素人だし、教えてもらう側だし別にいいか。

 興味のある魔法はあったけど、別に急を要してる訳じゃないし。


「じゃあそれで」


 話もまとまったし。早速ギルドに戻ってクエスト貰ってくるか。

 まだやっぱり気まずいけど、パーティ組んだからこっちのもんだもんね。

 なんなら全部この人に任せればいい。




「「あ」」


 そういえば世話になるのに軽い口調で話してたけど、敬語か丁寧語で話さなくて平気だったかな?

 と思い、聞こうと思ったら言葉が被った。


「被ったわね」


 少女がはにかんだ。

 俺は眩しさに目が潰れた。


「先に言わせてもらうわね。そういえば、お互いの名前を聞いてなかったなと思って。私はノイエ。あなたの名前も聞いていいかしら?」


 なんだ名前か、確かに聞いてなかった。

 ノイエ。ノイエさん。ノイエさん……。


 ごめん、特に感想の出てこない名前だった。

 日本人っぽくない名前ですね。


「トーヤ、アラキ、アシュクロフトです。自称なので、名前長いのは気にしないで下さい」


「自称なんてなんだかおかしい人ね。それであなたの方はなんだったの?」


 やっぱおかしいかな。

 偉い人以外、苗字無しの名前のみが基本らしいこの世界で、ミドルネーム?まで決めてるんだから。


「ああ、うん。世話になるのに敬語じゃなくてよかったのかな、って思いまして」


「別に気にしなくてもいいわよ。むしろ敬語で喋られると馬鹿にされてる感じがして嫌だわ」


 まあ、言っちゃ悪いけど、そんな見た目だしね。

 超一言で言うとチビ。


「じゃあ、このまま喋らせてもらいます」


「出来てないじゃない」


「このまま喋るわ」


「変な人ね。もしかしてだけど、あなたってお忍びの貴族か何かかしら? 服装は貧相だけど」


「いえ、一般家庭の出ですが?」


 敬語なんて貴族しか使わないのかな。

 名前が長いから間違われたのかな? やっぱトーヤとだけ名乗ろうかな。

 あと服装貧相ゆーな。実家に帰れれば、ちゃんとしたのあるんだよ。スターレイジのパーカーとか。


「じゃあ、ただ変なだけなのね」


「ひどい」





 貴族じゃないと伝えると、わかったと返事をもらい、二人でギルドへ向かった。

 外で待ってようかと思ったけど、一人になる方がなんか嫌なので、後ろについて中に入る。

 そしたらやっぱりさっきのオジサンに声かけられた。


「なんだおい、パーティ見つかったのか。ってエルフ様かよ」


 先ほどのオジサンがそう言うと、ノイエさん……、ノイエは少し嫌そうな顔をした。

 いや、別にほとんど表情は動いていない。

 けどなんかそんな気がした。

 多分さっきそう聞いたからだろう。オジサンの方も悪気はなさそうだし。


「いいか坊主! 足、引っ張っても相方を危険にさらすなよ。死ぬのはオメーだけにしておけよ。魔物相手にする時は簡単に死ぬからな。ふんす!」


 このオジサン、口は悪いけど内容はとにかく命大事になんだな。なんか歴戦って感じだ。

 でも大丈夫。俺を殺せる魔物なんて多分いないから。


「平気よ、危ない時は見捨てるから」


 ノイエもあっさりとそんな事を言う。シビアだ。


「かっかっか。そりゃそうだ、自分の命は大事にしないとな! しかし、その坊主もちゃんと教育しておけよ。死ななきゃいつか使い物になるはずだからな」


「わかったわ」


 知人って感じでもないんだが話し方はフレンドリーだ。

 しかし、オジサンが俺に対して言いたいことを言い切ったみたいなので気まずさはなくなった。ありがたい。


 でも、気まずくなったのもオジサンの所為なんだよね。いや、俺のせいか?

 まあ、原因が誰にあったかなんて、この際ここでは問題ない。


「トーヤ」


「はい?」


 ノイエに呼ばれる。

 見ると既にクエストボードの前に立って、めぼしいクエストを探していた。


「どれがいい?」


「んー?」


 トコトコとノイエの所まで行き、自分もクエストを見るがモンスターの名前もわからないのでどうしようもない。


「どうしましょ?」


「こっちが聞いてるんだけど?」


「わかんない」


 大体ノイエが主に動くらしいので、ノイエが決めればいいんだ。

 これなんかどう? って聞かれてもわからないんですよ。それでいいと思いますよ。





 結局決まったのはシカ位のサイズの魔物を狩ってくる討伐もの。

 成功報酬は銀1枚の銅5枚。

 魔物の肉も売れるものらしいので、もろもろ合わせて銀1枚の銅にはなるそうだ。


 どういう計算なんだろうと聞いてみると、魔物の肉は大体1kgで鉄貨4枚で売れるらしい。

 はっきり言ってクソ安い。



 この魔物は90kg位で内臓を捨てるので、体重が半分になり45kg。

 つまり鉄180だから、銅18の成功報酬の銀1の銅5を足して銀2+銅3枚の計算のようだ。


 なんだこれ、計算がクソ面倒くせえ。

 大体、鉄から銅に繰り上がるのが10枚で、銅から銀に繰り上がるのが20枚ってのがやべえ。

 こんなのぼったくり放題じゃねえか。電卓くれよ。


 あと内臓捨てるのか、勿体無い。まあ内臓は腐るのも早そうだししょうがないか。

 というかノイエのお嬢さんに45kgの肉を持って帰ることってできるんかいな。あ、そのための俺か。


「クエストも決まったことだし早く行きましょうか。野宿することになるだろうから、準備を忘れないようにね」


「……あい」


「なんか嫌そうね」


「別にそんな事はないスよ」


 本当にそんな事はない。こんな美人な女性と二人きりだし。


 ただ、野宿に準備なんていらないよー。

 魔法で小屋立てて、その中で寝ればいいじゃん。


 でも、そういうわけにもいかないんだろうな。面倒くさ。

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