第3話:ギルドに行こう
――翌日。
ところ変わってここはギルド。
説明を受け、登録も終わって、クエストボードの前で今俺は絡まれていた。
洗礼というやつである。
まずギルドの説明からして洗礼だった。
要約すると――。
・クエストボードでクエスト内容見て受けてね。
・終わったら何か証拠の品を持ち帰ってね。
・難易度の高いのは信用出来るパーティしか受けれないよ。
・失敗したら罰金ね。
・出来る出来ないを見極めて死なないようにね。
こんだけ。
え? こんだけ!?
嘘でしょ???
で、登録したら名簿のようなものにサインして終わり。
身分なんて顔見知りが保証するようなザル世界か。偽名も全然OKっぽい雰囲気。
嘘のような本当に適当な説明に、思わず説明してくれた人と見つめ合ってしまった。
男だった。
「どうした?」
「いえ……なんでもないです」
それで、あんまり説明が簡素だったからちょっとチュートリアルに引率が欲しくてクエストボード見ながら――
「誰か、どっかのパーティに一回限りで入れてくれないかなー? 討伐がいいなー」的な事を言ったらなんかごついのに絡まれた。
「おい、坊主あんましふざけたこと言うなよ。誰がてめえみてえな素人をパーティに入れるんだよ。いいか? パーティってのは――」
クドクド語りだした。
年を取ると語りが長くなるのはどこの世界でも同じようだ。
ようするに素人は素人同士組んでろということか。
けど、慣れた人が引率してくれた方が生存率上がらない?
「大体よぉ、そんな細ぇー身体で冒険者なんて、はえーんだよ」
え? この身体細いの? 地球にいた頃より筋肉ついて内心喜んでたのに。
部活でスポーツやってる奴と同程度にはついてるよ?
そう思って周りを見ると、
――ニカッ。
みんな獣のような筋肉をつけていることに気づいた。スポーツとは格が違った。
ま、まあ俺は魔法使いだし、肉弾戦しないから……。
「はっ。場違いさが分かったら冒険者なんてやめときな、こっちは命懸けなんだ」
「(あー、そっか。はい。命懸けなんですよね)」
自分で危険な仕事をと選んだはずなのに、他人にとっては本当に危険だということがすっぽり抜けていた。
そりゃ怒っても仕方ないわ。こっちが悪い。
例えば、斧とか槍でイノシシを狩る時、部活のスポーツマン程度が混じっていたら危険だろう。
必要なのは、ここのオジサン達のような体格。それと馬鹿げた筋肉。
いや、っていうか、罠でよくない?
なんで、斧とか槍で狩りをする前提になってるんだ。おかしいだろ。
と思って、反論しようと思ったが言葉が出なかった。
多分理由があるんだろうし、なんか注目されてたから。
俺は注目されることに弱いのだ。
別に責めるような視線ではないが、いたたまれなかった。
「まあ、その辺で薬草でも拾うんだな」
「向こうのはずれなら町から出ずに拾えるぜ?」
「売るなら、あそこが良いぜ」
変な激励までされてしまった。
俺は反論する気も質問する気も失せ、とぼとぼとギルドから退散した。
◇
「さて、これからどうしよう」
いきなり、盛大にやらかしてしまった。
かなり気まずいので、別の町に行こうかとも思う。
それで、そこのギルドにするとか。
それかギルドは諦めてどこかで料理屋を開こう。
さっきのお店の事を考えれば、自分で食材を調達して自分で作っても売れるだろう。
問題は食べられる食材と、食べられない食材のことがよくわかっていないということだ。
毒があっても治療魔法で治せたのでそういう所が無頓着になってしまった。じゃあダメじゃん。
はー、どうしよう。
魔導書を諦めたとしても、お金は必要になってくるし……。
なんて事を考えながら歩いていると、後ろから声をかけられた。
「ねえ、あなた。パーティで困っているのなら、私と組まない?」
声からして美人な女性の声が聞こえ――。
振り返ると"身長の割には"大人びた女の子が立っていた。
小さい、すごく。
すごく小さい。
俺のみぞおち位しか身長がない。
このサイズだからきっとこの子もパーティが捕まらなかったんだろうな。俺と同じ理由で。
けど、なんでこんな子まで冒険者なんてやるんだろう。
やっぱりこの世界は世知辛いのかな?
と、勝手に同情しつつ下から上へと見ていると、少し尖った耳が生えていることに気づいた。
妖怪だ!
……いや、異形っぽいのが妖怪で、こういう美人なのは幽霊って分類だったかな?
「エルフよ私は」
心を読まれた?
「そんなに驚いた顔でジロジロと耳を見られていたら、大体何考えているかわかるわ。人の営みの中にいるのが珍しいのも自覚しているわよ」
別に心を読まれたわけじゃなかった。
なるほど、エルフか。ジジイに聞いたことがあるわ。
地球でいう外国人とは別のジャンルで、亜人というのが居ると。
それがこれか。なるほど。
初めて見た。
「えと……何か言ってもらわないと、その……困るわ」
「あ、えと、はい。ごめんなさい。その、なんだ、パーティだっけ?」
「そうよ」
いきなり――しかもくっそ顔の整った女性に誘われて、俺は動揺した。
普通に生きてたら絶対に縁のないような相手だ。
美人局というやつかもしれない。
ジジイによればエルフというのは魔法に長けていて、成長期は別だが、年を重ねてもほとんど外見が変わらない生き物らしい。
つまりこの女性は背は小さいが、大人かもしれないのだ。
背が小さく、薄目で見れば一見ロリに見えるが。
……この人実はロリでしょ? だって俺のみぞおちくらいだよ?
俺の伸長が170cmくらいあるから……120cmくらい?
これで成長しきってるなんて嘘でしょ。
「こちらも事情があって一人になってしまったから、誰かと組みたいと思っていたのよ。ギルドの中では声を掛けずにいてごめんなさい」
あの中にいたのか。
陰に隠れてたのか、ゴリラ共の視線誘導にやられたのかわからんけど、とりあえず居たらしい。
なんだか話ぶりからするに美人局ではなさそうだ。
それに美人局だっていいじゃないか。寂しいよりはマシだ。
「けど俺でいいの?」
「ええ」
「じゃあ、その、……よろしく」
「こちらこそ」
と、いうわけでパーティは無事組めました。






