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歩く賢者の石  作者: 望月二十日
一章
3/56

第2話:お金を稼ぐ方法を考えよう

 宿を出た俺はフラフラと町を歩く。

 ふと見上げると日もすでに傾き始めていて、お昼時も昔の話。


 早く飯屋に入りたいが、どこだろう。

 日本に居た頃は店の外観とかで何となくわかるようになっていたが、この町はほとんどが土造りで、建物に違いがない。

 しかたがないので、看板を頼りにうろうろ探す。



 はたして飯屋は本当にすぐ近くにあった。

 というか宿屋の斜め向かいにあった。なぜ気がつかなかった俺。


 入口をくぐるといくつかのテーブルがいくつかあり、人が飯を食べている。当然だ飯屋だ。


「いらっしゃいませー、こちらへどうぞー」


 店内をキョロキョロしていると店員らしき美少女が、愛想よく俺の腕を引く。

 偶然にも長袖を着ていなかった俺と店員の肌が触れ合う。


「お客さん、この店初めてですよね? 嬉しいな。うふふ」


 心なしか幻聴まで聞こえてきた。

 マジか。ドキドキしてきた。これが恋か。


 だって宿屋のお姉さんよりも若く15、6歳位の美少女がニコニコと俺の腕を引いてるんですよ。

 この人、もしかしたら俺のこれからを左右するかもしれない。ヒロイン的な。

 スキンシップがあった分、宿屋のお姉さんよりも強く確信する。


 誰に向かっての言い訳でもないが、勘違いしないで欲しいのは俺は別にちょろくないってことだ。

 ただ、ちょっと……。そう、10年以上の日照りが俺のハードルを下げたのだ。


「じゃあ、今持ってきますね」


「あ……えっと……」


 幻聴は幻聴だったようだ。

 注文も聞かずに、美少女はさっさか奥へ引っ込んでしまった。


 それにしても今日は気分がいいな。

 宿屋の娘さんといい、飯屋の娘さんといい、特にすさんでもいない心が晴れ渡るようだ。


 それに期待も膨らむ。

 ジジイと食べていた飯は、もう食えればなんでも良いと言った男の料理で、肉や野菜を焼く! 煮る! 以上! といった感じだったから。


「はいどうぞー」


 まるでレンジでチンしたかのような早さで料理が出てきた。

 あまりの早さにレンジでチンしたのかと思った。


 嫌な予感がする。実は注文も聞かれなかった所から嫌な予感はしていた。それなのに期待していた。

 可能性に賭けていた。


「では、ごゆっくりー」


 届いた料理は豆と芋と肉の塊がとろけたスープだった。

 ザ・盛っただけ。

 なんていうか哀愁漂う昼食、って感じだ。

 まずくはない。まずくはないよ? けどさぁ。


 食べると地球を思い出す。ああ、ピザが食べたい。


 この世界はあまり、というか目を覆うほど料理が発達してないようだ。

 森の中でも調味料はほぼ塩だけだったし、いつかどうにかしたい。







 腹を満たすだけのような食事を終えた後、俺は町をうろついた。

 やっぱり知らない場所を歩くのは楽しい。人がいる。いっぱい。


 お店を何件か見て回ると魔法道具店というお店を見つけた。

 興味深かったので入ってみると、中は魔法補助の杖やポーション、丸薬を作る為の道具や魔導書が並べられていた。


「魔導書かー、なんか良いのあるかなー?」


 魔導書自体はジジイがたまに買ってきてくれたので知っている。


 魔導書には魔法陣が描いてあって、魔力を込めるとその魔法陣の魔法が使えるって仕組みだ。

 そうやって何度も使っていると、体で覚えていつの間にかその魔法を覚える事が出来る便利なもの。

 ただし、何度も使うとインクが薄くなっていって、最後には使えなくなる。



 それに魔導書と言っても、折りたたんだ木の皮だ。

 見開き2ページなのに書とは。

 ん? 別にいいのか? 本って言ってるわけじゃないし。


「初めて見るお客さんだね。魔導書に興味があるのかい?」


 独り言をつぶやいていると、いつの間にか居た婆さんが話しかけて来た。びっくりした。

 皺だらけでいかにも魔法使いって感じの婆さんだ。

 ジジイと大差ない年齢だろう。髪も真っ白。


 こいつは俺のヒロインじゃないな。目を見ればわかる。



「別に、なんかあるかなって」


 不思議とジジイを相手をする時のように雑な対応になってしまう。

 俺は割と年上には敬意を払う人なのに不思議だ。


「そこにあるのは大体銀貨4枚から8枚の品だよ」


「高けーな」


「そういうもんさ」


 宿一泊が銅貨2枚で、食事一回が鉄貨7枚だったからどうにも高く感じる。


 それにジジイの金を生活費以外に使うのもなんか嫌だな。

 稼ぐ手段を見つけてから出直すか。


「ん?」


 最後にもう一度魔導書を見ると「身体強化」の文字が綴られた魔導書を見つけた。

 欲しい。俄然やる気が出てきた。


「なんか良いのがあったかい?」


「ない」


 嘘をついた。

 ここで足元を見られると鬼の売り込みが始まるから。


「それは身体強化の魔法だね」


 バレてたか。目ざといババアだ。


 聞くと十と数年程前に出来た比較的新しい魔法らしい。

 ジジイが知らないのも無理はない。引きこもりだったから。


「どうする? 安くするよ? ひっひっひ」


「なんでそこで笑うんだよ。おかしいだろ」


 今は買える程余裕がないので、金を稼いできますと店を後にした。





 急いで宿に戻り、金稼ぎの手段を考える。

 あの魔導書、欲しい。

 俺の魔力があればスーパーマンにだって慣れるはずだ。

 そう考えると夢が膨らむ。


 うんうんと頭をひねること数十分。とりあえず思いついたのはこれだけ。



①転売:安く買って別のところで高く売る。

②もの作り:何かを作って売る。

③盗賊:金なんぞあるところから盗めばいい。

④お医者さんごっこ:俺レベルの回復魔法を使えば金なんていくらでも舞い込んでくる。

⑤就職:どこかで雇ってもらい働く。



 ③と④は論外だな。犯罪に走るのも嫌だし、お役所やお偉いさんに目を付けられても困る。

 まだ何もわからない世界、そういうのに巻き込まれるのは嫌だ。


 ①と②は今はまだものの価値がわからないので、コレもこの世界にもっと慣れてからで。


 じゃあ⑤か? というとそれもちょっと怪しい。

 仮に就職できてもお金がパーっと稼げるとは思えない。

 地道に働いた場合、生活出来るだけのお金が入ってきても魔導書のお値段だとすぐには買えない。



 これは困った。

 俺(15+11歳)の頭でもこれが限界なのか。と思った瞬間名案が閃いた。


 命に関わる危険な仕事なら、お金もいっぱい稼げるはず。

 そう、魔物の討伐だ。


 そういえばジジイが言っていた。

 そういうのもあるって。


 俺なら一人で、しかもかなり慣れてるので人の倍、いや数倍は稼げるかもしれない。完璧だ。


 そうと決まればと早速、俺は危険な仕事を出来る場所、冒険者だかなんだかのギルド――は明日にして宿へと足を運ぶのだった。今日はもう寝る。暗くなってきたし。

とりあえず貨幣の価値

金貨1枚=銀貨20枚

銀貨1枚=銅貨20枚

銅貨1枚=鉄貨10枚

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