アジト潜入(せんにゅう)
橘 翔 は"表"では普通の高校生である。
しかし"裏"では裏社会の人間を叩き潰す殺し屋している。
普通であって普通でない 橘 はとあるビルに来ていた。
「ビンゴ。左肩に刺青がある。」
どうやらエセギャング集団『ハイエナ』のアジトに着いたようだ。
「にしても広いなこのビル。階段登るのも一苦労だ。」
30階建てのビル。エレベーターを使うわけにもいかず、静かに階段を登って12階の会議室の前で様子を伺っていた。
会議室の中には男が10人。
「ったくボスも人使い荒いよなぁ。こんな時間に物を運べだなんて。どうかしてるぜ。」
1人の男が呟くとそれにつられて回りの男達も愚痴をこぼしはじめた。
どうやら仕事中のようだ。
すると奥の部屋からまた1人男がやってきた。
「口動かす暇があったら手ェ動かせクソ野郎共が。それともその舌引き抜いて喋れなくしてやろうか?」
やってきた男は吐き捨てるように話す。
城崎 賢。
金髪に黒のタンクトップ。身体中には刺青がびっしり掘ってある人相の悪い男だった。
「すいません!城崎さん!すぐ運ぶんで勘弁してください!」
愚痴をこぼしていた男たちはそそくさと荷物を下へ運びはじめた。
「あのクソ野郎共が。さすがに寄せ集めじゃまともに機能しねェか。」
舌打ち交じりに吐き捨てる城崎。
エセギャング集団『ハイエナ』は、やはり統率の取れた集団ではないらしい。
(いけるか…?奴は丸腰に見えるが…。)
橘 は機会を伺う。
片手には拳銃。
『ベレッタ Px4 ストーム』
9mm口径。
マガジン20発。
ショートリコイル、ローティングバレルの自動拳銃。
橘 の愛機である。
(たのむぜベレッタ。さぁ行くか。
橘 は息を呑み、会議室へ押し入る。
「動くんじゃない!手を頭の上に置いて跪け!」
叫ぶ 橘 。
「おやおやァ。お前さんは"あの"橘 翔じゃねェか。こんな所までご苦労なこって。」
城崎は両手を頭の上に置いて話す。
追い詰められている城崎だが、顔に焦りはなく不気味なほどほくそ笑んでいた。
(なんなんだこいつ。銃を向けられて顔色一つ変えないとは。何か隠してやがるのか?)
橘 は銃を向けつつ疑いを隠せなかった。
2人の距離は10メートル弱。
銃を持ってる 橘 の方が優位に立っているのは明白なはずだった。
「んで、何の用だァ?こんな錆びれた街外れのビルにまで。」
城崎は余裕そうに問う。
「最近お前たち『ハイエナ』が暴れ回ってるって聞いてね。潰してこいって頼まれちゃってさ。」
橘 は負けじと答える。
「へェ…。潰しに…ねェ…。」
城崎が呟いた瞬間、城崎のシルエットがぐらっと揺らいだ。
ダッ!と城崎は距離を詰め始めた。
「っく!動くなよ!」
橘 は引き金を引く。
ズドン!とベレッタから弾が放たれる。
しかし城崎は舐めるようにかわし、ぐっと距離を詰めてくる。
2人の距離はおよそ7メートル。
「"血の双弾"もその程度かァ?遅ェなァ!」
不適に笑う城崎。
(こいつはバケモンか!この距離でかわすだど!?)
橘 は焦りつつも、もう一度引き金を引く。
城崎はすぐさま会議室の机を蹴り上げ盾にし弾を防ぐ。
2人の距離はおよそ5メートル。
「まだまだァ!!」
城崎は椅子を投げつけてきた。
橘 はとっさに右にかわすが隙が出来てしまった。
(しまった!?)
城崎はさらに距離を詰めてきている。
ベレッタは右手。
間に合わない。
「終わりだァ!橘ァ!」
城崎はナイフを取り出し突っ込んでくる。
瞬間。
鈍い音が響きわたる。
「がぁっ!?」
しかし倒れこんでいるのは城崎だった。
「ただ突っ込んでくるだけか。まぁ少し驚いたが…たいしたことないな。」
橘 がため息交じりに話す。
「てめェ…何を!?」
城崎が初めて焦りを見せた。
「何って…これだよ。」
橘 の"左手"には拳銃。
しかしそれはベレッタ Px4ではなかった。
『H&K P7M13』
9mm口径。
マガジン13発。
ダブルアクション、ガスディレードブローバックの自動拳銃。
これも 橘 の愛機である。
「だいたいはベレッタだけなんだけどね。慌ててH&Kも抜いちゃったよ。」
橘 は続ける。
「でも君強いね。俺にもう片方使わせるなんて。」
2丁拳銃の殺し屋。
橘 が"血の双弾"と呼ばれてる理由である。
「な、なめやがって!」
城崎が立ち上がり走り出そうとした瞬間。
ズパァン!
銃声とともに城崎の心臓をベレッタの弾が撃ち抜いた。
「だから動くなって言ったのに。」
橘 は気だるそうにため息をついた。
初バトルシーンです。
戦闘描写は難しいですね…。
城崎を殺した橘 、そんな彼を待ち受けているのは…!?