澪標
釣り場に、友人とともに遊びに来ていた。
「ここわさ、小型ボートも貸してくれるんだ」
俺が友人たちにあらかじめ貸してもらっていた手漕ぎボードを指差す。
「さっすがだな」
友人のひとりが俺をほめる。
「早速釣ろうぜ、ここは川魚が取れるって聞いてるからな」
「おう、昔は瀬ばかり釣り上げていたが、最近はうまくなってるんだろうな」
笑いながら、荷物を積んでいる俺に友人が話しかけてくる。
「おいおい、あの時の俺とは、一味違うぜ。最近は空き缶とか長靴とかを釣れるようになったからな」
「アホか、漁果はどうなってるんだ」
俺はあえてその質問には答えずに、全員をボートに乗せて、木的のところまでこいだ。
友人はその様子を見ていて、ため息一つついた。
「このあたりだな」
澪標のすぐそばまでボートを動かして、動かないように、澪標にロープをかけさせてもらう。
「じゃあ、始めよう」
一投目から順調に釣り上げている友人たちと対照的に、何も釣り上げられない俺。
「まあ、今日はこんなものだろうな」
鮎が1匹ほどしか釣れなかったが、俺はこれで満足だった。
「じゃあ、澪標の内側を通るようにして、ボート動かしていくからな」
「了解、了解」
友人が竿やルアーの整理をしながら、ゆっくりと俺はこぎだした。
帰り道、電車の中で今日について話し合い、それぞれの家の最寄駅で降りて行った。