十月桜の咲くころに。4月のⅠ・Ⅱ
4月のⅠ。
私の通っている高校の桜も、ずいぶんと満開になった。
「キレイ・・・。」
あ、私の名前は香月いろは。 高校二年生です!
性格は・・・、天真爛漫、って感じかな?
とりあえず向こう五年間は面白系キャラで通してきました。
「香月ー。」
校門から校舎までの桜並木を歩いていたら、後ろから私の名前を呼ぶ子がいた。
「あ、春音ちゃん。」
後ろを振り向くと、同じ環境プロジェクトで隣のクラスの渋谷春音ちゃんが走ってこちらに向かっていた。
私も歩くのを止めて、春音ちゃんを待つ。
しばらくして彼女と合流できたので、折角だから教室まで一緒に行くことにした。
「あ、ねぇねぇ香月。 聞いた?」
靴箱で靴を履き替えていると、春音ちゃんが思い出したように声をかけてきた。
「何?」
私が聞くと、春音ちゃんは少し、面白そうな顔をして私に言ってきた。
「今日から定時制の子と一緒に、活動をやるんだって。」
春音ちゃんの情報に、私は目を丸くする。
「え、もう?
まだ全日の子が入って一週間も経っていないじゃない。」
「ん~。 でも、風見先輩が言っていたし。」
風見先輩とは、私たち全日制の中で初めて、環境プロジェクトをやり始めた一つ上の先輩。
いわゆる創始者、って人なんだけど全然そんな感じがしない、気さくですごい良い人なんだよ。
噂では、同じプロジェクトで私たちと同い年の定時制の子と付き合っているとかいないとか・・・。
「そっか。 じゃあ先輩が言うんだったらそうだよね。」
「あ、それって私の情報信じてなかったってこと!?」
と、春音ちゃんとそんな会話をしていると、あっという間に教室に着いた。
「あ、じゃあ私ここだから。」
彼女にそう言ってから別れる。
教室に入ると、相変わらずクラスの男の子たちが大騒ぎしていた。
「あ、いろはおはよう。」
そんな男子の様子を苦笑いしながら、机にカバンを置いているとクラスの女の子が挨拶をしてくれた。
私も、その子に挨拶を返す。
「おはよう。
――――ねぇ、クラスの男子は何をやっているの?」
「ん~、何かね、山手線ゲームをやっているんだって。」
「山手線ゲーム!!」
いまどきの男子高校生が山手線ゲーム・・・。
何を考えているのやら。
「あ、ねえそれよりさぁ。」
クラスの子が思い出した様に聞いてきた。
「何?」
「いろはの入っている環境プロジェクトって、定時制の子と一緒にやっているってホント?」
あぁ、その事か。
「うん、本当だよ。」
私が言うとその子の目がキラン、と光った(気がした)。
「じゃさ、定時にいい男の子、いない?
ほら私たちのクラスって、残念な男子しかいないじゃん。」
「・・・・(汗)。」
残念な男子って・・・。
「う~ん、定時もおんなじ様な感じだよ。」
私は慌ててそう言う。
すると女の子は残念そうな顔をして”な~んだ。”とため息をついた。
「残念!
うちのクラスで環境プロジェクトに入っているの、いろはしか居ないからいろは頼みだったのに。」
「あはは、ごめんごめん。」
そんなことを話いるうちに担任の先生がやってきて、朝のホームルームが始まった。
今日の予定はこの後、LHRをやったら解散!
で、私は楽しみにしている環境プロジェクトへ行く。
(あぁ~、早くLHR、終わらないかなぁ。)
そんなことを考えながら私は窓の外の桜の木を見た。
桜は、相変わらず満開でとても綺麗だった。
4月のⅡ。
「――――これで、LHRを終わる。」
先生のその言葉を聞いて、私は誰よりも早く教室から飛び出した。
「あ、コラ香月!?」
「せんせー、さよーなら!!」
驚いている先生を無視して、私はプロジェクトの集合場所(兼、部室的な)部屋へ行く。
(今日からいよいよ、定時の子も来る・・・!)
私は少し、わくわくしていた。
だって、全日の子の後輩ができるってだけで前日、夜も眠れなかった私が、さらに定時にも後輩ができるなんて・・・!
嬉しくて爆発しそう。(おいυ)
「おはよう!」
部室のドアを勢いよく開けると、誰も居なくて少し、恥ずかしかった。
「何だ、誰も居ないじゃん。」
私のバカ、って思いながら部室のテーブルにカバンを置く。
「あ、桜。」
部室の窓から見える桜は、教室から見た桜と違いなんか不思議な桜だった。
「そう言えば去年も、この桜を見たっけー・・・。」
この桜はいつも見ている桜と違い、白いようなピンクっぽいな、凄い艶やかなのにどこか儚さを感じる不思議な桜だった。
「この桜、なんて言うんだろう?」
ふっと私は、そんなことを思った。
確か去年もこの桜の名前を知りたくて調べたんだけど、分かんなかったんだよなぁ・・・。
「それ、十月桜って言うんですよ。」
すると急に、後ろでそんなことを言われた。
「え?」
振り向くと私より少し身長が高い、優しそうな男の子が居た。
私服を着ているってことは、定時制の子かな?(私の学校の定時制には制服が無い。)
「十月桜?」
私が聞き返すとその子は頷き、
「はい、去年の秋ごろから少しずつ花を咲かせて、春になったら満開になる不思議な桜なんですよ。」
そんなことを言いながら、男の子がテーブルの上にカバンを置いた。
あ、この子が環境プロジェクトの定時制の新入生なのかな?
(ってそれより。)
話を戻そう。
「へぇ、十月桜って言うんだ。」
私はもう一度その桜を見た。
秋からずっと咲き続ける桜って言うのがいいよね。
「いいよね。 私桜が大好きだから長い間楽しめるって嬉しい。」
確かに去年の秋ごろ、この木に花が咲いていて、不思議に思ったっけ。
「あ、先輩も桜好きなんですか?」
「うん!」
だって桜って、短い間だけだけど、一生懸命咲き誇って凄いじゃない。
と、そんなことを話してみたら彼は嬉しそうな顔になって、
「先輩もそう思うんですか?」
と聞かれた。
「うん。」
「実は僕もなんです。 僕も桜、そんな理由で好きなんです。」
そういって笑った男の子の顔は、少しかわいくてドキッとした。
(って名に私、ドキドキしてんの・・・。)
とその時、扉の向こうから”ミキー?”と呼ぶ声がして勢いよくドアを開けてくる子が居た。
扉の先には、凄いかわいい女の子が。
もしかして、この子も環境プロジェクトの子?
「あ、ミキいたいた。 先行っちゃうからびっくりしたよ。」
私は二人には何も言えず、ぼけっと見ているだけだった。
すると女のこの方が私の視線に気づき、笑顔で挨拶をしてきた。
「あ、先輩こんにちは! そして今日からよろしくお願いします!!
私の名前は広瀬明菜です!!!」
あ、なんかこの子、いい子かも。
「あ、私の名前は香月いろはといいます。」
私も慌てて自己紹介。
「ほら、ミキも挨拶しなきゃ。」
広瀬さんにそう言われてさっきまで話していた男の子が思い出したように挨拶をしてきた。
「挨拶が遅れてしまい、済みませんでした。
僕の名前は生島未樹と申します。」
え・・・?
「生島、くん?」
私が思わず聞き返すと生島くんはコクン、と頷いて、
「はい。 僕の名前は未樹って言うんです。」
えーーーーーー!? うそでしょ!?
てっきりミキって言うのは苗字だと思ってた!!
「よく言われます。」
私が思わず尋ねると、その子は苦笑いしながら教えてくれた。
「だからよく、可愛い名前ってバカにされるんですよね・・・。」
可愛い名前?
「・・・そっかなぁ。」
生島くんの言葉に私は不思議な気持ちになった。
生島くんも、私にそんなことを言われるとは思っても見なかったらしく、きょとんとしている。
「私は、綺麗な名前だと思うよ。」
だって、ミキって発音も綺麗だし、いろはよりは憧れる。
「あ、ありがとうございます・・・。」
生島くんが、恥ずかしそうに顔を赤くしながらうつむいた。
あ、なんだかちょっと可愛いかも。
「いえいえ。 じゃあ私、隣の部屋でお弁当食べてるね。」
急に広瀬さんの目つきが険しくなった気がして、私は慌てて部屋を飛び出した。
危ない危ない。 女の子の嫉妬ほど怖いものは無いからね。
「――――それにしても。」
生島くん、かぁ。
なーんか気になる。 なんでだろう。
「美味しい。」
私はお昼ご飯を食べながら、ずっと彼のことばかりを考えていた。
今回は少し長めです。 なので読み辛いし分かり辛い思いますが、読んだ感想お待ちしています!!