第六章 目覚め
「ちょっと…どうなってんのよ…。頭が割れそうっ…!!」
アリスは頭を抱えていました。
「ここはどこなのよ、なんで誰もいないのよ、私が何したっていうのよ。」
その問いに答える人はどこにもいません。
「…誰か…助け…。」
アリスが目を覚ましたのはふかふかのベッドの上…。
「ここは…?」
アリスは辺りを見回しました。
どうやら城の中ではない様子。
「…私は一体…。」
「あ、アリス様!お目覚めになられたのですね!良かった。」
「…目覚め…た?私、寝てたってこと?」
「そうです、アリス様。貴女がつまずいた時、大変でした…。
闇に飲み込まれては生きて帰れませんからね。」
「飲み込まれ…?」
「大丈夫ですよ、体は。」
「……。」
「貴女は意識を闇に飲み込まれてしまったのです。」
アリスには白兎の言葉がわかるような、わからないような…
「あれは夢だってこと?」
「あれとは何があったかわかりませんが、
今貴女が目覚める前に起こっていたことは夢と思った方がよいでしょう。」
夢…それにしては現実感のある夢だ。
腕をつかまれた時の恐怖、白兎が助けに来てくれた時の体温、
そしてナイフを刺した時の…
アリスは、はっとして足を見ました。
「…傷が…ある。」
アリスは声にならないような驚きでした。
夢じゃない…そう思ったのです。
ではあれはなんだったのか?
現実か?夢なのか?さては今起こっていることもまた夢なのか?
様々な考えが浮かび上がる。
「闇」とは?
そうだ、自分の意識を飲み込んだというあれは何なのか。
大体意識を飲み込む闇とは…
飲み込まれたら生きて帰ることはできないということはどういうことなのか。
アリスの疑問はどんどん膨れ上がっていく…
そして第一に先程腕をつかんで一緒に走っていたこの男は?
あの時一緒にいたということは白兎も飲み込まれていたということか?
では何故自分だけが助かっているのだろうか。
「アリス様、紅茶はいかがです?」
「もらうわ。」
白兎と私は以前に会ったような気がする…。
そう、以前にも…。
このようなことが?
いや、そんなはずはない。
私が城から出たことがあるのはほんの数回だ。
その中で城以外の人間と話したりするなど…ありえない。
では一体この男は?
そしてこの揺れ動く耳は?
…この際それはもういい、後回しにしよう。
本人に直接聞くべきだろうか。
それよりも…
「ここはどこなの。」
「ここですか?私の家ですよ。」
「…ふぅん。」
アリスは窓から外の景色を見ました。
「どうにも変な所ね。子供の落書きみたいだわ。」
「落書きですよ、それ。」
「は?」
アリスはよくよく見た。
すると窓から見えるのは外ではなく、
落書きの書いてある紙が窓に貼られていました。
「アリス様が目覚めた時、気を悪くしないようにと思って急いで書いて貼ったんですよ。」
白兎はニコニコと笑う。
何だ、普通の笑顔ができるではないか。とアリスは思った。
いや、思うのはそこではない。
「この外にどんな世界が広がっているというの。」
「それはそれはとても凄い世界ですよ。」
「凄い、とは?」
「見ればわかります。」
白兎の笑顔は止まらない。
「あぁ、時間になってしまいます。行きましょう。アリス様。」
「どこへ?」
「女王様の所ですよ。」
さてはて「闇」とは何でしょう。
その答えはたぶん次章か次々章にでも…
それにしても白兎君の落書きとはどんなものなのでしょう。
読む方々がいろんな想像はしてくれると思いますが…
どんなのなんでしょう。
私にはわかりません。たぶんこんな…(わかんないから
では次章もよろしくお願いします。