前哨戦
第一章・始まり
『パンドラの箱』
それはゼウスからパンドラへ送られた箱。
その中には全ての災いが詰まっていた。
パンドラはその箱をあけ、世界中に災いをまき散らした。
これこそが人類の苦しみの原因であった。
だが、箱に入っていたのは災いだけではなかったのだ。
では、何が入っていたのか?
…それは希望だ。
だが、パンドラはそれが漏れる前に蓋を閉めてしまった。
結果、希望は外にでることは遂になかった。
◆◇◆◇◆◇
高い城壁にまわりを囲まれた城壁都市。
東西南北にそれぞれ大きな門があり、またそれぞれに検問がしっかりとしかれていた。検問を終え、門を抜けると即、視界に入るのはとても大きな城である。
名はヴォルテール城。
かつてこの城を作った王の名から取られた名だ。
一直線であるが、門と城との距離はかなりある。だが、そんな距離などあって無いようなものだと人々を嘲笑うかのように城はそびえ立っていた。
城壁外の世界の話しをしよう。
この都市の周りには様々なそして、かなりの草木が生い茂っている。
だが、少し北へ行くと少しずつ草木がなくなり、遂には消え、砂漠地帯へと姿を変える。
それこそが今の国境。
いや、世界の果てだ。
それ以上、普通の人間が進もうものならば生きて帰ることは出来ないだろう
…色々な意味で。
だが、これは『普通』の人間ならばの話である。
◆◇◆◇◆
この世にパンドラの災いが降りかかった時、様々な災いが起こった。
地震、竜巻、暗雲が立ち込み太陽の光が遮られ、暗雲からは激しく雨と雷が降り注いだ。
それに伴い多くの人が死に、村が燃え、都市が壊滅し、国が滅んだ。
だが、更に問題だったのが魔獣の出現である。
日々、修練を行っていた兵士五人がかりですら太刀打ち出来ない。
七、八人でやっと倒せる。
だが、無傷では絶対に倒すことなど出来はしない。
段々と兵士の数が減って行く。結局、次は我が身と逃げ出す始末。
悲しく虚しく、そして、夢のような現実を突きつけられ人々は絶望していた。
◆◇◆◇◆
パンドラの箱は災いを引き起こした箱。
人間ではなく人間の住む世界へ。
当の人間自体に災いは降りかからなかったのか?
その疑問に対する答え…
それは、否だ。
実際に起きたのだ。
変身という呪いが。
人が魔獣になり人々を襲う…
身内。友。恋人。
だが、全ての人間に起きた訳ではない。
魔獣になること。
それ即ち破壊への欲求。何も考え無くても良いという思い。
しかし…例え人が皆、そんなことを思い考えていたとしても、皆が皆それを実行に移そうとする訳でもない。
要は個人の抑制力。そして、精神力である。
それに加え、赤子という無垢な存在は破壊したいという欲求自体がわからない。
何も考え無くても良いという前にまず考えるということを知らない。
そんな者の中に人間の姿カタチを保ちつつ、自我で魔獣の力を使いこなす人々が現れ始めた。
炎を起こし、雷を撒き散らし、風を巻き起こす。雨を凍り付かせ氷柱に変え串刺しにする。
大地を割りその穴へ閉じ込め生き埋めにする。
人は元来『慣れる』生き物。
最初は恐れ足がすくんでいたとしても自分達に与えられた力を使い、武器を手に取り魔獣を倒していった。
魔獣など恐るるにたりず…と。
まだまだ修行中の身なもので至らないとこもあるかと思います。
読んでくれてありがとうございました。